
今回は、ご存じ、「夢見るシャンソン人形Poupée de cire,poupée de son」です。セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgが作詞・作曲し、1965年にフランス・ギャルFrance Gallが創唱。同年、ルクセンブルクにて第10回ユーロビジョン・ソング・コンテストでグランプリを獲得。日本語でも、多くの歌手にカヴァーされています。 ウィキペディアに詳しく解説されていますので参照ください。
その記事に書かれているとおり、原題のPoupée de cire,poupée de sonは、直訳すると「蝋人形、詰め物をした人形」ということですが、「夢見るシャンソン人形」という、よく知られた邦題を用いることにしましょう。
この曲のメロディーはベートーヴェンLudwig van Beethovenのピアノソナタ第1番Sonate pour piano nº 1 の第4楽章を元にしているそうです。
Poupée de cire,poupée de son 夢見るシャンソン人形
France Gall フランス・ギャル
Je suis une poupée de cire
Une poupée de son 注1
Mon cœur est gravé dans mes chansons
Poupée de cire poupée de son
私はロウ人形
音を出すおがくず人形
わたしの歌に 私の心が刻まれている
ロウ人形 音を出すおがくず人形
Suis-je meilleure suis-je pire
Qu'une poupée de salon 注2
Je vois la vie en rose bonbon
Poupée de cire poupée de son
サロンの高級人形よりも
私はいいのかしら 悪いのかしら
人生はバラ色のボンボンに思えるわ
ロウ人形 音を出すおがくず人形
Mes disques sont un miroir 注3
Dans lequel chacun peut me voir
Je suis partout à la fois
Brisée en mille éclats de voix 注4
私のレコードは鏡
みんなはそこに私の姿を見ることができる
声がたくさんのかけらに分かれて
一度にいろいろなところに行けるわ

Autour de moi j'entends rire
Les poupées de chiffon 注5
Celles qui dansent sur mes chansons
Poupée de cire poupée de son
私の周りで笑い声がする
ぬいぐるみ人形たちの声
私の歌で踊っているのね
ロウ人形 音を出すおがくず人形
Elles se laissent séduire
Pour un oui pour un nom 注6
L'amour n'est pas que dans les chansons
Poupée de cire poupée de son
あの娘たちは誘惑に身を任せてしまう
ホイホイと乗ってうわべだけのために
恋は歌の中にだけあるわけじゃないのに
ロウ人形 音を出すおがくず人形
Mes disques sont un miroir
Dans lequel chacun peut me voir
Je suis partout à la fois
Brisée en mille éclats de voix
私のレコードは鏡
みんな私の姿を見ることができる
声がたくさんのかけらに分かれて
一度にいろんなところに行けるわ

Seule parfois je soupire
Je me dis à quoi bon
Chanter ainsi l'amour sans raison
Sans rien connaître des garçons
ときにはひとり ため息ついて
男の子を知りもしないくせに
こんな風にわけもなく恋の歌を歌って
なんになるの と思ってしまう
Je n'suis qu'une poupée de cire
Qu'une poupée de son
Sous le soleil de mes cheveux blonds
Poupée de cire poupée de son
私はロウ人形にすぎず
音を出すおがくず人形にすぎない
私のブロンドの髪のような色の太陽のもとで
ロウ人形 音を出すおがくず人形
Mais un jour je vivrai mes chansons
Poupée de cire poupée de son
Sans craindre la chaleur des garçons
Poupée de cire poupée de son.
でもいつか 私の歌みたいに生きるわ
私はロウ人形 音を出すおがくず人形
男のコの情熱を怖がらずに
ロウ人形 音を出すおがくず人形

[注]
1 poupée de cire「蝋人形」は、アイドル歌手がただの飾り物で命を持っていないというニュアンスを表現。poupée de sonは「おがくずを詰めた人形」。sonは「(詰め物用の)おがくず」と「音」との二つの意味を重ねている。ここでは「音」のほうがより重要。
2 salonは「客間」「美術展」そして、「個人の邸宅で貴族や芸術家などが集まる場」といった意味で、高級なイメージをもつ語。日本語でも「サロン」で通用する。
3 今の人間としてはCDを思い浮かべてしまうが、LPの時代であり、盤面が鏡のようだというわけではなく、歌手の姿をそのなかに映し出しているという意味。
4 多量のディスクが作られて、あちこちに声が届く。
5 chiffonは「ぼろ切れ」の意味。「薄くて柔らかい生地」を意味する日本語の「シフォン」とは異なる。したがって、les poupées de chiffonは「ぼろきれで作られた人形」だが、「ぬいぐるみ人形」のほうが分かりやすいだろう。ミーハー的なファンの女の子たちのこと。
6 恋を歌う歌詞の内容に引きずられて誘惑に乗る。un oui「いいわ」と軽はずみに受け入れることと、(un non「いいえ」と拒否することではなく)un nom「名目、うわべ」のためにそうしてしまう。
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