
今回は、ナナ・ムスクーリNana Mouskouriの「ソナタSonata」です。1961年。作詞:エディ・マルネイEddy Marnay、作曲:エミール・ステルンEmil Stern。ソナタは日本語では奏鳴曲とも呼ばれますが、複数楽章から成る器楽曲で、器楽伴奏付の声楽曲「カンタータcantata」と対照されます。
愛し合う二人のまわりで秋がソナタを演奏している、という美しい世界を描いた美しい曲です。歌詞のなかで、擬人化されている名詞がいくつかあります。街ville、秋automne、ソナタsonate、恋歌(ロマンス)romance、パリParis。そして汽笛(サイレン)sirèneも、枯葉たちles feuilles mortesも。これらは二人の恋を見守り祝福してくれているのです。
Sonata ソナタ
Nana Mouskouri ナナ・ムスクーリ
La ville
Tranquille
Entend nos cœurs qui battent
L'automne
Fredonne
Pour nous cette sonate
街は
静かで
私たちの胸の鼓動を聞いている
秋は
口ずさむ
私たちのためにこのソナタを

Elle entre 注1
Tremblante
Quand je t'ouvre ma porte
Romance 注2
Qui danse
Avec les feuilles mortes
彼女は入ってくる
震えながら
僕がドアを開けると
甘い調べが
枯葉たちとともに
踊る
On a les yeux tout ruisselants
De pluie
Et les sirènes des chalands
Hurlent au vent
僕たちはとても濡れた目をしている
雨のせいで
そしてはしけの汽笛が
風に唸る
Je t'aime
Je t'aime
Et dans nos cœurs qui battent
L'automne
Fredonne
Pour nous cette sonate
君を愛している
君を愛している
そして僕たちの鼓動する胸のなかで
秋は
口ずさむ
僕たちのためにこのソナタを

Dans le brouillard et dans le vent
Paris
Sait reconnaître ses amants
Depuis longtemps
霧のなかでも風のなかでも
パリは
自分んちの恋人たちを見分けられる
ずっと昔から
Je t'aime
Je t'aime
Entends nos cœurs qui battent
Qui battent
Qui battent
Au cœur d'une sonate 注3
Sonate
君を愛している
君を愛している
僕たちの胸が鼓動するのが聞こえる
鼓動する
鼓動する
ソナタのただなかで
ソナタの

[注]
1 elle「彼女」は前の節のcette sonateで、3行あとのromance(注2参照)はそれを言い換えているのであろう。
2 romance「ロマンス」甘美な旋律の短くて素朴な声楽または器楽曲。「甘い調べ」と訳した。
3 cœurここでは「心」「心臓」の意味に、「中心」という意味合いが加わるようだ。
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