fc2ブログ
2016
11.16

哀れなリュトブーフPauvre Rutebeuf

Pauvre Rutebeuf


「哀れなリュトブーフPauvre Rutebeuf 」は、13世紀の詩人リュトブーフRutebeuf にインスピレーションを受けて、1955年にレオ・フェレLéo Ferréが作り歌った曲です。リュトブーフは生活の困難と苦しみを歌った詩人で、このフェレの歌詞の冒頭の数行(どこまでなのか不明ですが)は、リュトブーフの詩からの引用です。



後年、カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvage、ジェルメーヌ・モンテロGermaine Montero、ユーグ・オーフレイHugues Aufray 、ジョーン・バエズJoan Baez、コラ・ヴォケールCora Vaucaire、ナナ・ムスクーリNana Mouskouri、ディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivien、アラン・バリエールAlain Barrièreなど、多くの歌手がこの曲を歌っています。

そのうち、カトリーヌ・ソヴァージュを選びました。



Pauvre Rutebeuf  哀れなリュトブーフRutebeuf.jpg
Léo Ferré      レオ・フェレ


Que sont mes amis devenus
Que j'avais de si près tenus
Et tant aimés
Ils ont été trop clairsemés
Je crois le vent les a ôtés
L'amour est morte.
Ce sont amis que vent emporte 注1
Et il ventait devant ma porte 注2
Les emporta.

  あんなに近しく接し
  あんなに愛していた
  俺の友だちはどうなったんだ
  彼らはてんで散らばってしまった
  風が彼らを奪ったに違いない
  愛は死んだんだ。
  風が連れ去るのは友だちだ
  俺んちの戸口で風が吹き
  彼らを連れ去った。

Avec le temps qu'arbre défeuille 注3
Quand il ne reste en branche feuille
Qui n'aille à terre
Avec pauvreté qui m'atterre 注4
Qui de partout me fait la guerre
Au temps d'hiver.
Ne convient pas que vous raconte
Comment je me suis mis à honte 注5
En quelle manière.

  時とともに木は落葉し
  もう枝には
  地に落ちない葉は残っていないし
  俺を打ちのめし
  やたらと俺に戦いを挑む貧困しか残っていない
  冬の季節には。
  俺がどんな風にして
  恥ずかしい状態に身を置いたかを
  あんたがたに言うべきじゃない。

Pauvre Rutebeuf1


Que sont mes amis devenus
Que j'avais de si près tenus
Et tant aimés
Ils ont été trop clairsemés
Je crois le vent les a ôtés
L'amour est morte.
Le mal ne sait pas seul venir
Tout ce qui m'était à venir
M'est avenu. 注6

  あんなに近しく接し
  あんなに愛していた
  俺の友だちはどうなった
  彼らはてんで散らばってしまった
  風が彼らを奪ったに違いない
  愛は死んだんだ。
  悪は単独じゃやって来ない
  俺のところに来るはずだったものはすべて
  俺に起こった。

Pauvre sens et pauvre mémoire
M'a Dieu donné le roi de gloire 注7
Et pauvre rente
Et droit au cul quand bise vente 注8
Le vent me vient le vent m'évente
L'amour est morte
Ce sont amis que vent emporte
Et il ventait devant ma porte
Les emporta.

  哀れな感覚と哀れな記憶を
  神、栄光の王は俺にくれた
  そして僅かな年金を
  北風が吹くときボロをまとう権利をくれた
  風は俺のところにやって来て俺に吹き付ける
  愛は死んだんだ
  風が連れ去るのは友だちだ
  俺んちの戸口で風が吹いて
  彼らを連れ去った。

Pauvre Rutebeuf2


L'espérance de lendemain
Ce sont mes fêtes. 注9

  明日の望み
  それは俺のお祭りさ。

[注]
1 amisと ventに冠詞がないのは、既に現動化された名詞で既出の内容を言い換えているため。
2 il ventait のilは非人称だが、次行の主語としてはventの代名詞でもある。
3 défeuillerは他動詞で「落葉させる」だが、ここでは木が「落葉する」。否定文で、pasあるいはplusが省略されている。次行は接続法で、ここもpasが省略され、前行の否定内容が二重否定となる。「地に落ちないだろう葉は残っていない」つまり、今、残っている葉もいずれ地に落ちることになる。
4 il ne resteの続きで、木の様子を示した後に自分の状況を示している。
5 se mettre à…「(ある状態に)なる、身を置く」
6 avenu「起こった」古い用法の形容詞。
7 Dieuがdonnerの主語。le roi de gloireはDieuの言い換え。
8 cul「尻」「間抜け」読みは「キュ」。aller au cul au vent「ぼろぼろの服を着ている」から類推して、droit au culは「ぼろぼろの服を着る権利」だと解釈した。
9 mes fêtes「お祭り」が複数形になっている。繰り返しおこなうお祭りとは、去った友や、みじめな現状を想いながら、ひとり酒を呑むということか。



コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top