
ジルベール・ベコーGilbert Bécaudの「詩人が死んだ時Quand il est mort le poète」(1965年。作詞:ルイ・アマードLouis Amade、作曲:ジルベール・ベコー)は、1963年に亡くなった詩人ジャン・コクトーJean Cocteauに捧げられた曲です。コクトーは詩のみならず、小説、戯曲、絵画、映画、評論等、さまざまな芸術分野で活動し、その時代の多くの芸術家と交流を持ち、彼らに大きな影響を及ぼしました。
「ミロールMilord」のページに書きましたが、彼は、エディット・ピアフÉdith Piafの訃報を知って、後を追うようにして亡くなりました。このベコーの曲が作られたのはその2年後のこと。

このように、観客も参加していっしょに歌います。
歌詞に「矢車菊bleuet」が出てきますが、なぜなのか気になったので、この花についてちょっと調べてみました。
日本では、矢車草とも呼ばれましたが、現在では矢車菊に統一されています。その名は、この植物が端午の節句が近づくと花を開き、その形がこいのぼりの先端の矢車に似ていることに由来します。
花の色が青いということでフランス語ではbleuetと呼ばれますが、英名はCornflowerで、ヨーロッパの麦畑の中に咲いていたことに因みます。そして最高級のサファイアの色味をCornflower blueといいます。
初代ドイツ皇帝ヴィルヘルム1世がこの花を皇帝の紋章に決め、ドイツでは現在も「皇帝の花」と呼ばれ国花とされています。
ノヴァーリスNovalisの小説「青い花Heinrich von Ofterdingen」は、詩人ハインリヒが夢の中で見た青い花に恋い焦がれ、その面影を求めて各地を遍歴し成長して行く物語。ロマン主義の象徴とされるその青い花は、ヤグルマギクだといわれます。
麦畑に咲く青い花は、人々の憧れを象徴するものなのでしょう。
ヤグルマギクの学術名はCentaurea cyanusで、属名のCentaureaは、ギリシア神話の半人半馬の種族ケンタウロスの賢者ケイローンがこの植物を薬草として用いたことに由来するそうです。
コクトーがケンタウロスの絵をよく描いているということも、ルイ・アマードは念頭に入れていたのでしょうか。
Quand il est mort le poète 詩人が死んだ時
Gilbert Bécaud ジルベール・ベコー
Quand il est mort, le poète,
Quand il est mort, le poète,
Tous ses amis,
Tous ses amis,
Tous ses amis pleuraient.
その人が、詩人が、死んだとき、
その人が、詩人が、死んだとき、
友だちみんなが、
友だちみんなが、
友だちみんなが泣いたんだ。

Quand il est mort le poète,
Quand il est mort le poète,
Le monde entier,
Le monde entier,
Le monde entier pleurait.
その人が、詩人が、死んだとき、
その人が、詩人が、死んだとき、
世界中のひとが、
世界中のひとが、
世界中のひとが泣いたんだ。

On enterra son étoile,
On enterra son étoile,
Dans un grand champ,
Dans un grand champ,
Dans un grand champ de blé.
僕たちは憧れの人を埋めるんだ、
僕たちは憧れの人を埋めるんだ、
広い畑のなかに、
広い畑のなかに、
広い小麦畑のなかに。

Et c’est pour ça que l’on trouve,
Et c’est pour ça que l’on trouve,
Dans ce grand champ,
Dans ce grand champ,
Dans ce grand champ, des bleuets.
だからね僕たちは見つけるのさ、
だからね僕たちは見つけるのさ、
この広い畑のなかに
この広い畑のなかに
この広い畑のなかに、矢車草の花を。

La la la la la la la la
La la la la la la la la
La la la la
La la la la
La la la, des bleuets.
ラー ラ ラ ラー ラ ラ ラーラー
ラー ラ ラ ラー ラ ラ ラーラー
ラー ラ ラ ラー
ラー ラ ラ ラー
ラー ラ ラ、矢車草の花を。
Comment:1
コメント
Gilbert Bécaudを検索して、このblogにたどり着いて、昔を思い出しました。他人には意味がないことですが、お礼の意味でくだらない昔話を語りたくなりました。大学に入ったころは、chansonの花盛りの時代のため、理系の学生にも関わらず、歌詞を理解するとの名目で、仏語を第三外国語として選択しました。Quand il est mort le poète.が英語と違って、The poet diedではなくHe died,the poet.の語順になっていることで、仏語選択が役立ったことを喜んだ次第です。さはさりながら、これとは異なりメケメケなどはなかなか歌詞が解からなくて、大変苦戦しました。今回、このblogで解説までつけて歌詞が書かれているのを拝見して、長生きしてよかったと思っています。 駄文陳謝 Merci beaucoup
80歳のじじい
2018.01.30 11:27 | 編集
