
今回は、ジャック・ブレルJacques BrelのLitanies pour un retourです。フランソワ・ローベFrançois Rauberとともに作った曲で、1958年のアルバム:Au printempsに収録されています。litanieとは、もともと、「連祷」すなわち、司祭が先唱し、信者が答える祈りの言葉を意味しますが、不平や要求などをくどくどと述べ立てるという意味でも用いられます。ですから、このタイトルは、「(恋人の)帰還を求める繰り言」といった意味です。既存の邦題が無いようなので、「君の帰りをねがう祈り」としました。
動詞を74個も連ねた曲として、シルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanの「愛するAimer」がありましたが、今回の曲では、48個もの名詞にmon、maを付け、「わが…、わが…」と恋人を呼びます。歌詞の内容はそれだけ。でも、ちょっと不思議なメロディーで、歌ってみたくなります。男の立場でも女の立場でも同様に歌える歌です。歌詞を覚えるのはきっとたいへんでしょうけど。
ブレル
バルバラBarbaraが歌うとこんな風です。1961年のアルバム:Barbara chante Jacques Brelに収録されています。
Litanies pour un retour 君の帰りをねがう祈り
Jacques Brel ジャック・ブレル
Mon cœur ma mie mon âme 注1
Mon ciel mon feu ma flamme
Mon puits ma source mon val
Mon miel mon baume mon Graal 注2
わが心 わが恋人 わが魂
わが空 わが火 わが炎
わが井戸 わが泉 わが谷
わが蜜 わが芳香 わが聖杯

Mon blé mon or ma terre
Mon soc mon roc ma pierre
Ma nuit ma soif ma faim
Mon jour mon aube mon pain
わが麦 わが黄金 わが大地
わが犂 わが岩 わが石
わが夜 わが渇き わが飢え
わが昼 わが夜明け わが糧
Ma voile ma vague mon guide ma voix
Mon sang ma force ma fièvre mon moi
Mon chant mon rire mon vin ma joie
Mon aube mon cri ma vie ma foi 注3
わが帆 わが波 わが案内人 わが声
わが血 わが力 わが熱 わが意
わが歌 わが笑い わが酒 わが喜び
わが暁の歌 わが叫び わが命 わが信

Mon cœur ma mie mon âme
Mon ciel mon feu ma flamme
Mon corps ma chair mon bien
Voilà que tu reviens 注4
わが心 わが恋人 わが魂
わが空 わが火 わが炎
わが身体 わが肉 わが幸
ああ あなたが帰ってきた
[注]
1 mon cœur, ma mie, mon âmeはすべて、「愛しい人」という意味合いで恋人への呼びかけに用いられる言葉だが、後続の言葉同様にもとの意味で訳した。
2 baume「芳香性樹脂、バルサム」。カトリックでは「(オリーブ油に混ぜて聖油にする)香料」
3 aubeは2度出てくるので、意味を変えて訳した。
4 この1行は、恋人が帰ってきたことを示している。litanieが祈り願うことを示す語であれば、この歌による願いの結果だと考えられる。タイトルを無視すれば、歌詞全体を、帰って来た恋人に対しての言葉がけととらえることもできよう。
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