2016
10.16

ロンドンの娘La fille de Londres

Germaine Montéro La fille de Londres


古き女優のジェルメーヌ・モンテロGermaine Montéroが歌った「ロンドンの娘La fille de Londres」(1952年)という曲をご紹介しましょう。作詞:ピエール・マッコルランPierre Mac Orlan、作曲:ヴェー・マルソーV. Marceau。
作詞したピエール・マッコルランは、澁澤龍彦や生田耕作らが愛した文学者で、詩、ルポ、イラスト、評論、作詞、写真など、活動は多岐にわたります。若くして両親を失い、1900年パリに出て画家を志しましたが挫折し、ユーモア・コントの作家としてデヴュー。1910年代にはギョーム・アポリネールGuillaume Apollinaireらモンマルトルの前衛芸術家たちと親交。ヨーロッパや北アフリカを放浪。第1次大戦後は、幻想小説・冒険小説に転向し、晩年はシャンソンの作詩に専念しました。1950年アカデミー・ゴンクール会員。自伝的な作風は、アンドレ・マルローAndré Malraux、ボリス・ヴィアンBoris Vian、レイモン・クノー Raymond Queneauらに影響を及ぼしたとされます。著書は、「船員の歌(恋する潜水艦)Le Chant de l'équipage」「女騎士エルザLa Cavalière Elsa」「霧の波止場Le Quai des brumes」「深夜の伝統La Tradition de minuit」「夜明けの記録Le Mémorial du petit jour」「写真幻想 Écrits sur la photographie」(写真に関するエッセイを後年集成したもの)など。
この歌詞も彼の文学作品同様、非常に幻想的で、ちょっと訳が分かりません…。



カトリーヌ・ソヴァージュCatherine Sauvageも歌っています。



La fille de Londres  ロンドンの娘
Germaine Montéro   ジェルメーヌ・モンテロ


Un rat est venu dans ma chambre
Il a rongé la souricière
Il a arrêté la pendule
Et renversé le pot à bière
Je l'ai pris entre mes bras blancs
Il était chaud comme un enfant
Je l'ai bercé bien tendrement
Et je lui chantais doucement :

  一匹のネズミが私の寝室にやってきた
  彼はネズミ捕りをかじった
  彼は振り子時計を止めた
  そしてビールのジョッキをひっくり返した
  私は白い両腕で彼を捕らえた
  彼は子どもみたいに温かかった
  私は彼を優しく揺すった
  そして私は彼に優しく歌った:

La fille de Londres2


Dors mon rat, mon flic, dors mon vieux bobby 注1
Ne siffle pas sur les quais endormis
Quand je tiendrai la main de mon chéri

  お眠り私のネズミ、私のお巡りさん、お眠り私の愛しいデカさん
  寝静まった河岸で呼子を吹かないでね
  私が愛しい人の手を取るときに

Un Chinois est sorti de l'ombre
Un Chinois a regardé Londres
Sa casquette était de marine
Ornée d'une ancre coraline
Devant la porte de Charly
A Penny Fields, j'lui ai souri,
Dans le silence de la nuit
En chuchotant je lui ai dit :

  ひとりの中国人が陰から出てきた
  ひとりの中国人がロンドンの街を眺めた
  彼の帽子は水兵帽で
  赤い錨の飾りが付いていた
  ペニー・フィールドのチャーリーの店の戸口の前で
  私は彼に微笑みかけた、
  夜の静けさのなかで
  ささやくようにして私は彼に言った:

Je voudrais je voudrais je n'sais trop quoi
Je voudrais ne plus entendre ma voix
J'ai peur j'ai peur de toi j'ai peur de moi

  私はね私はねよく分からないけど
  私はね自分の声をもう聞きたくないの
  怖いの怖いのよあなたが、怖いのよ私が

Sur son maillot de laine bleue
On pouvait lire en lettres rondes
Le nom d'une vieille "Compagnie"
Qui, paraît-il, fait l'tour du monde
Nous sommes entrés chez Charly
A Penny Fields, loin des soucis,
Et j'ai dansé toute la nuit
Avec mon Chin'toc ébloui

  彼の青いウールのシャツの上に
  丸い文字で書かれているのが読み取れた
  昔からある「会社」の名前が
  その会社は、世界を回っているようだ
  私たちはペニー・フィールドのチャーリーの店に入った
  心配事などよそに、
  そして私は一晩中踊った
  目の眩んだ私の中国人野郎と

La fille de Londres3


Et chez Charly, il faisait jour et chaud 注2
Tess jouait "Daisy Bell" sur son vieux piano
Un piano avec des dents de chameau 注3

  そしてチャーリーの店のなかは、昼間のようで暑かった
  テスは「デイジー・ベル」を古いピアノで弾いた
  ラクダの歯みたいな鍵盤のピアノで

J'ai conduit l'Chinois dans ma chambre
Il a mis le rat à la porte
Il a arrêté la pendule
Et renversé le pot à bière
Je l'ai pris dans mes bras tremblants
Pour le bercer comme un enfant
ll s'est endormi sur le dos...
Alors j'lui ai pris son couteau... 注4

  私は中国人を私の部屋に導いた
  彼はネズミを戸口に置いた
  彼は振り子時計を止めた
  そしてビールのジョッキをひっくり返した
  私は震える両腕で彼を捕らえた
  彼を子どものようにあやすために
  彼は仰向けに横たわった…
  そして私は彼のナイフを取った…

C'était un couteau perfide et glacé
Un sale couteau rouge de vérité 注5
Un sale couteau sans spécialité.

  それは危険な冷たいナイフだった
  ほんとうに汚い赤いナイフだった
  なんら特性のないナイフだった

[注]
1 flicドイツ語の隠語Flick「若者」から「警官、お巡り、(権力などの)手先」。vieuxは実際に歳を取っているというのではなく、親しみを込めた表現。3 bobby英語で、ロンドン警視庁を再編成した内務大臣の愛称Bobbyから、「警官」。
2 il fait jourは本来「夜が明ける」ことをいうが、ここでは煌々と照明がつき客で賑わって昼のようだということを表している。il fait chaudは文字通り「暑い」。
3 dents de chameau「ラクダの歯」。加工して数珠やネックレスなどにされることはあるが、ここでは、ガタついた古いピアノの鍵盤を形容しているのだと思われる。
4 luiはàを伴う除去・奪取の動詞とともに「彼(彼女)から」
5 de vérité「実のところ、確かに」




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