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2016
09.13

彼女に言って(愛のフィーリング)Dis-lui (Feelings)

Mike Brant Dis-lui


マイク・ブラントMike Brantは1947年にキプロス島で生まれ、イスラエルで育ちました。両親はポーランド系のユダヤ人。彼は5歳までしゃべれなかったそうです。11歳ごろから学校のコーラスで歌い始めました。17歳の時にロック・バンドのリード・ボーカリストとなってホテル等で歌い始めたのを皮切りに、世界中を巡業する一座に入るなどして、ライブハウスやナイトクラブなどさまざまなステージで歌うようになりました。トム・ジョーンズTom Jonesやエルヴィス・プレスリーElvis Presley、フランク・シナトラFrank Sinatraなどが好きで、そうしたアメリカのヒット曲を歌っていたそうです。

68年、テヘランの高級ナイト・クラブの専属歌手として歌っていた時、特別ゲストとして訪れたシルヴィー・ヴァルタンSylvie Vartanとそのマネージャーが彼を大変気に入り、パリに来るようにと誘いました。翌年マイクは、フランス語はまったく話せないままパリにやってきました。フランス語の猛特訓の末に70年に出した初シングルLaisse moi t'aimerが大ヒットしたのち、次々とヒットを出し、71年にはオランピアに初出演。72年に大ヒットしたQui saura ? はホセ・フェリシアーノJosé Felicianoの「ケ・サラChe Sara」のカバー曲ですが、同年のC'est ma prièreは自らの作曲によるもの。73年には日本を含めたワールド・ツアーを行ない、74年にはポリドールと契約を交わしました。

圧倒的な歌唱力と並外れたルックスの良さで人気が不動のものとなっていくさなか、さまざまな葛藤に苛まれ、幼年期から持ち越したと推測される精神面の不安定が次第にあらわれて、いろんな問題行動を起こし、鬱の兆候も示し始めます。その後、周囲の勧めでジュネーヴで休暇をとっている間に、宿泊したホテルの窓から飛び降りてしまいます。幸いに軽い怪我で済みましたが、自殺未遂だといわれますが、人とのトラブルで、「飛び降りてみろ」「飛び降りてやる」といった状況だったとも説明されています。パリに戻った後、極端な躁鬱状態を繰り返しながらも新曲をレコーディングしていましたが、翌年1975年、7階の友人宅のバルコニーから飛び降り、今度は本当に帰らぬ人となってしまいました。精神面の問題のみならず、人とのトラブルやLSDの使用なども取り沙汰されています。若くして人気の絶頂期での急死は、フランスや母国イスラエルの人々に大きな衝撃を与えました。
また、それは自身の最高傑作と自負していたこの曲「彼女に言ってDis-lui」が発売された直後のことでした。遺作となったこのシングルは100万枚を売り上げる大ヒットとなりました。

この曲の原曲は、ブラジルのシンガー・ソングライター:モーリス・アルバートMorris Albertが歌ったFeelingsで、モーリス・アルバートが作曲したものとされていましたが、フランスの作曲家ルールー・ガステLoulou Gastéが、自分が1956年に作った曲「あなたのためにPour toi」に酷似しているとニューヨーク連邦裁判所に提訴しました。この曲はダリオ・モレーノDario Morenoが1957年のアンリ・ドコワンHenri Decoinの映画:Le feu aux poudresのなかで最初に歌い、続いてガステの妻リーヌ・ルノーLine Reoaudも歌っていました。結果は、ガステ側が勝訴し、モーリス・アルバート側に50万ドルの賠償命令が下されたそうです。

まずモーリス・アルバートのFeelingsを聴いていただきましょう。



ジャズ・シンガーのニーナ・シモンNina SimoneのFeelings



リーヌ・ルノーのPour toi



ダリオ・モレーノDario MorenoのPour toi



マイク・ブラントのDis-lui



Dis-lui (Feelings)  彼女に言って(愛のフィーリング)
Mike Brant     マイク・ブラント


Dis-lui,
Fais-ça pour moi, dis-lui,
Que le jour sans elle,
Me semble moins long,
Dis-lui,
Quitte à mentir, dis-lui,
Que je réalise,
Qu’elle avait raison,

  彼女に言って、
  僕の代わりに、彼女に言って、
  彼女のいない一日が
  僕にはそんなに長くは感じられないと、
  彼女に言って、
  ウソをつくのはやめて、彼女に言って、
  ぼくは気づいたと、
  彼女は正しかったと、

Mike Brant2


Dis-lui,
Qu’à nouveau j’aime vivre,
Que je ne suis plus seul, déjà,
Qu’elle n’est plus rien pour moi,
Dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
N’importe quoi.

  彼女に言って、
  僕はあらたに生きたいんだと、
  僕はもう、一人じゃないって、
  彼女は僕にとってはもうなんでもないんだと、
  彼女に言って、
  オー、オー、オー、彼女に言って、
  オー、オー、オー、彼女に言って、
  何でもいいから。

Dis-lui,
Fais-ça pour moi, dis-lui,
Que j’ai bien fini, oui,
D’être malheureux,
Dis-lui,
Que j’aime une autre fille,
Dis-lui tout ce que tu voudras,
Mais il faut qu’elle te croit,

  彼女に言って
  僕の代わりに、彼女に言って
  そう、僕はもう
  不幸じゃないって、
  彼女に言って、
  僕は別の女性を愛しているって、
  君が言いたいことを全部彼女に言って、
  だけど彼女は君を信じなければならない

Mike Brant1


Dis-lui,
Que plus jamais, dis-lui,
Je ne pense à elle,
Quand tu la verras,
Dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
N’importe quoi.

  彼女に言って、
  彼女に言って、もう決して、
  僕は彼女のことを思わないって、
  君が彼女に会ったときに、
  彼女に言って
  オー、オー、オー、彼女に言って、
  オー、オー、オー、彼女に言って。
  何でもいいから。

N’oublie pas, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Qu’elle n’est plus rien pour moi,
Dis- lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui...

  忘れないで、彼女に言って、
  オー、オー、オー、彼女に言って、
  オー、オー、オー、彼女に言って、
  彼女は僕にとってはもうなんでもないんだと、
  彼女に言って
  オー、オー、オー、彼女に言って、
  オー、オー、オー、彼女に言って…

Mike Brant3


※彼女に伝えてくれと、友達に頼む内容。語句的には易しい歌詞なので注は省き、代わりに、女性が歌う場合の歌詞を。
彼女elle→彼il:間接目的語lui→lui(変化なし) / 直接目的語la→le / 前置詞の後の代名詞強勢形elle→lui
私je(♂→♀):形容詞男性形→女性形 / 愛す対象: une autre fille→un autre homme


Dis-lui,
Fais-ça pour moi, dis-lui,
Que le jour sans lui
Me semble moins long,
Dis-lui,
Quitte à mentir, dis-lui,
Que je réalise,
Qu’il avait raison,

Dis-lui,
Qu’à nouveau j’aime vivre,
Que je ne suis plus seule, déjà,
Qu’il n’ est plus rien pour moi,
Dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
N’importe quoi.

Dis-lui,
Fais-ça pour moi, dis-lui,
Que j’ai bien fini, oui,
D’être malheureuse,
Dis-lui,
Que j’aime un autre homme,
Dis-lui tout ce que tu voudras,
Mais il faut qu’il te croit,

Dis-lui,
Que plus jamais, dis-lui,
Je ne pense à lui,
Quand tu le verras,
Dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
N’importe quoi.

N’oublie pas, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Qu’il n’est plus rien pour moi,
Dis- lui,
Oh, oh, oh, dis-lui,
Oh, oh, oh, dis-lui...




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