2016
09.06

谷間に眠る人Le dormeur du val

Yves Montand Le dormeur du val


アルチュール・ランボーArthur Rimbaudの「谷間に眠る人Le dormeur du val」は、アレクサンドランalexandrins形式の詩で、初期詩編に収められています。1870年、ランボーが16歳の時にプロシャとの国境に近いシャルルヴィルCharlevilleに住んでいて、普仏戦争のセダン(スダン)の戦いbataille de Sedanで戦死した若者の姿を目撃した体験をもとに書かれたといわれます。

これを歌詞にしてルイ・ベシエールLouis Bessièresが作曲し、イヴ・モンタンYves Montandが歌っています。



セルジュ・レジアーニSerge Reggianiはこの詩を朗読したのち、ボリス・ヴィアンBoris Vianの「脱走兵Le déserteur」を歌っています。



この詩は、日本で多くの詩人たちが訳しています。高村光太郎、蒲原有明、三好達治、小林秀雄、堀口大学、中原中也、金子光晴など。堀口大学の訳を記事の最後に掲載しました。

Le dormeur du val  谷間に眠る人
Yves Montand     イヴ・モンタン


C’est un trou de verdure où chante une rivière,
Accrochant follement aux herbes des haillons
D’argent; où le soleil de la montagne fière,
Luit; C’est un petit val qui mousse de rayons.

  それは緑の窪みで、そこでは川が歌っている、
  狂ったように銀色のぼろ着を草に掛けながら
  そこでは、堂々と聳える山から太陽が輝く、
  それは光が泡立つ小さな谷間だ。

Un soldat jeune, bouche ouverte, tête nue,
Et la nuque baignant dans le frais cresson bleu,
Dort; il est étendu dans l’herbe, sous la nue,
Pâle dans son lit vert où la lumière pleut.

  うら若い兵士ひとり、口を開き、頭には何もかぶらず、
  青くみずみずしいクレソンの中に首すじを浸して、
  眠る。彼は草の中に横たわる、雲の下で、
  青ざめて、光降りそそぐ緑のベッドのなかに。

Les pieds dans les glaïeuls, il dort. Souriant comme
Sourirait un enfant malade, il fait un somme:
Nature, berce-le chaudement: il a froid.

  両足をグラジオラスの叢に入れて、彼は眠る。
  病気の子供が微笑むように微笑みながら、ひと眠りしている。
  自然よ、暖かく揺すってやれ、彼は寒いのだ。

Les parfums ne font plus frissonner sa narine;
Il dort dans le soleil, la main sur sa poitrine,
Tranquille. Il a deux trous rouges au côté droit.

  花の香りも彼の鼻を震わせることはない。
  陽の光の中で彼は眠る、片手を胸に乗せて、
  静かに。右のわき腹にはふたつの赤い穴。

Le dormeur du val1


谷間に眠る者  堀口大学訳

ここぞこれ、青葉の空洞(ほら)よ、白銀(はくぎん)の襤褸(らんる)の草に
激しては、小川歌ふよ、
高澄(たかすみ)の山の常とて、陽(ひ)の耀(かがよ)ふよ、
ここぞこれ、光みなぎる小谷間よ。

うら若き兵(つはもの)ひとり、口はあんぐり、髪乱れ
わか水菜しげるが中に頸漬け、眠りつるよな、
白雲(はくうん)の空すぐる下(もと)、草の上、
ひかり降るさみどりの褥(しとね)に倒れ、蒼ざめて。

眠りつるよな、両足は水仙菖(すゐせんあやめ)かほる中。
病める児がほほゑみて、うたたねせるよ。
天地(あめつち)よ、温くこそは揺れ、彼凍ゆるに!

花の香(か)に鼻うごめかね、陽(ひ)を浴びて熟睡(まどろ)みあるよ、
片腕は静かなる胸の上。
右脇腹に、紅ゐの傷あと一つ、また一つ。



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