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2016
08.17

マリエンバードMarienbad

Barbara La Louve


今回はバルバラBarbaraの「マリエンバードMarienbad」です。 1973年のアルバム:La Louveに収録されています。このアルバムの曲はすべて、作詞:フランソワ・ウェルテメール( ドイツ語読みはウェルトハイマー)François Wertheimer、作曲:バルバラBarbara。

Marienbadはドイツ語の地名(ドイツ語ではマリエンバート、フランス語ではマリエンバードと読む)で、チェコ語でマリアーンスケー・ラーズニェMarianske Lazneといい、プラハの西方、ドイツ寄りにある温泉療養地。
マリーエンバードというと、アラン・レネAlain Resnais監督の映画「去年、マリエンバートでL'Année dernière à Marienbad」がまず思い出されます。この映画は、1961年公開のフランス・イタリア合作映画で、脚本はアラン・ロブ=グリエAlain Robbe-Grillet。その題名は、ゲーテJohann Wolfgang von Goetheの恋愛詩「マリエンバート悲歌Marienbader Elegie」に由来するといわれます。また、この詩は、80歳のゲーテがある女性に恋をして失恋したことから生まれたそうです。

バルバラのこの曲はとても不思議な言葉が連なった歌詞ですが、レネの映画やゲーテの詩を意識して作ったような気もします。




Marienbad  マリエンバード
Barbara    バルバラ


Sur le grand bassin du château de l´idole,
Un grand cygne noir portant rubis au col,
Dessinait sur l´eau de folles arabesques,
Les gargouilles pleuraient de leurs rires grotesques, 注1
Un Apollon solaire de porphyre et d´ébène,
Attendait Pygmalion, assis au pied d´un chêne,

  偶像の城の大きな池で、
  首にルビーを付けた大きな黒鳥が、
  水の上に途方もないアラベスクを描いていた
  ガーゴイルたちは自分たちのグロテスクな笑いを嘆いていた、
  斑岩と黒檀の太陽神アポロンは、
  ピュグマリオンを待っていた、楢の木の根元に座って、

Marienbad1.jpg


Je me souviens de vous,
Et de vos yeux de jade,
Là-bas, à Marienbad,
Là-bas, à Marienbad,
Mais où donc êtes-vous?
Où sont vos yeux de jade,
Si loin de Marienbad,
Si loin de Marienbad,

  あなたを想い出すわ、
  あなたの翡翠の眼を、
  かの地で、マリエンバードで、
  かの地で、マリエンバードで、
  けれどあなたはいったいどこにいるの?
  翡翠の眼はどこに、
  マリエンバードからとても遠く離れて、
  マリエンバードからとても遠く離れて

Je portais, en ces temps, l´étole d´engoulevent,
Qui chantait au soleil et dansaient dans les temps, 注2
Vous aviez les allures d´un dieu de lune inca,
En ces fièvres, en ces lieux, en ces époques-là,
Et moi, pauvre vestale, au vent de vos envies, 注3
Au cœur de vos dédales, je n´étais qu´Ophélie,

  私は、あの頃、夜鷹のストールをまとっていた、
  夜鷹は太陽に向かって歌いずっと踊っていた、
  あなたはインカの月の神のようだった、
  あの熱気のなかで、あの場所で、あの時代に、
  そして哀れな巫女である私は、あなたの欲望の風上に置かれ、
  あなたの迷路の真ん中にいて、ただのオフェーリアにすぎなかった

Je me souviens de vous,
Du temps de ces aubades,  注4
Là-bas, à Marienbad,
Là-bas, à Marienbad,
Mais où donc êtes-vous?
Vous chantez vos aubades,
Si loin de Marienbad,
Bien loin de Marienbad,

  あなたを想い出す、
  あのオーバードを聴いた頃を思い出す、
  かの地で、マリエンバードで、
  かの地で、マリエンバードで、
  けれどあなたはいったいどこにいるの?
  あなたはオーバードを歌う
  マリエンバードからとても遠く離れて、
  マリエンバードからずっと遠く離れて

Marienbad2.jpg


C´était un grand château, au parc lourd et sombre,
Tout propice aux esprits qui habitent les ombres,
Et les sorciers, je crois, y battaient leur sabbat, 注5
Quels curieux sacrifices, en ces temps-là,
J´étais un peu sauvage, tu me voulais câline,
J´étais un peu sorcière, tu voulais Mélusine, 注6

  それは大きな城だった、重苦しく暗い庭園のある、
  日陰に宿る精神にはまったく好都合な、
  そして魔法使いたちが、きっと、そこでサバトの宴を開いたのよ、
  どんな奇妙な生贄があったんでしょう、その時代には、
  私はちょっと残酷だった、あなたは私が可愛いことをお望みだったわね、
  私はちょっとした魔女だった、あなたはメリュジーヌをお望みだったわね、

Je me souviens de toi
De tes soupirs malades,
Là-bas, à Marienbad,
A Marienbad,
Mais où donc êtes-vous?
Où sont vos yeux de jade,
Si loin de Marienbad,
Bien loin de Marienbad,

  あなたを想い出す、
  あなたのけだるいため息を
  かの地で、マリエンバードで、
  マリエンバードで、
  けれどあなたはいったいどこにいるの?
  あなたの翡翠の眼はどこにあるの
  マリエンバードからとても遠く離れて、
  マリエンバードからずっと遠く離れて

Mais si vous m´appeliez, un de ces temps prochains,
Pour parler un instant aux croix de nos chemins,
J´ai changé, sachez-le, mais je suis comme avant,
Comme me font, me laissent, et me défont les temps, 注7
J´ai gardé près de moi l´étole d´engoulevent,
Les grands gants de soie noire et l´anneau de diamant,

  けれどもしもあなたが私を呼んでくれたら、近いうちに、
  私たちの道が交わる時に話をするために、
  私は変わったわ、分かってよ、でも私は以前のとおり、
  時が私に為し、私にさせ、私にやめさせたとおりよ、
  私は手元に取ってあるわ、夜鷹のストールを、
  大きな絹の黒手袋とダイアモンドの指輪を、

Marienbad4.jpg


Je serai à votre heure,
Au grand château de jade,
Au cœur de vos dédales,
Là-bas à Marienbad,
Nous danserons encore
Dans ces folles parades,
L´œil dans tes yeux de jade,
Là-bas, à Marienbad,

  私はあなたの時間に合わせるわ
  翡翠の大きな城で、
  あなたの迷路の真ん中で、
  かの地で、マリエンバードで、
  また踊りましょう
  あの狂ったパレードのなかで、
  あなたの翡翠の眼を見つめながら
  かの地で、マリエンバードで、

Avec tes yeux de jade,
Nous danserons encore,
Là-bas, à Marienbad,
Là-bas, à Marienbad,
Mais me reviendras-tu?
Au grand château de jade,
A Marienbad...

  あなたの翡翠の眼といっしょに
  また踊りましょう、
  かの地で、マリエンバードで、
  かの地で、マリエンバードで、
  けれどあなたは私のもとに帰ってくるの?
  大きな翡翠の城に、
  マリエンバードの…

[注]
1 gargouille「ガーゴイル」ゴシック建築で怪獣などをかたどった雨水の吐水口。
2 quiの先行詞はengoulevent以外に考えられないが、それをストールにしてまとうことで、自分がengouleventになっていると推測される。
3 au vent de「…の風上に」いるということは、餌食として狙われていることを意味する。
4 aubade「表敬のため人の家の前や窓の下で夜明け、午前中におこなう音楽」。ここでは、夕べに男性が女性に恋する気持ちを伝えるために歌い奏でるセレナーデと同義のようだ。
5 sabbat「安息日」の意味もあるが、ここでは「魔女たちの集会」。ここでは不思議なことにbattreという動詞を使っているが。
6 Mélusine「メリュジーヌ」ケルト神話の美女で下半身が蛇。
7 この行の動詞は、すべて主語がles tempsで倒置されている。



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