2016
07.04

キャバレーの女Elle voulait jouer cabaret

Patricia Kaas Elle voulait jouer cabaret


今回はパトリシア・カースPatricia Kaasの「キャバレーの女Elle voulait jouer cabaret」です。1989年にディディエ・バルブリヴィアンDidier Barbelivienが作った曲。バルブリヴィアンはカースのほか多くの歌手に歌詞を提供してきた作詞家ですが、自身が歌った曲として「もしもあなたに会えずにいたらQue serais-je sans toi」と「彼女Elle」とをすでにご紹介しています。



エディー・ミッチェルEddy Mitchellの「ミント水の色Couleur menthe à l'eau」をちょっと思い起こさせる歌詞。タイトルにあるcabaretとは、「ダンスやコメディショーなどパフォーマンスをする舞台のあるレストランやナイトクラブ」のことです。jouer cabaretという表現は、前置詞も冠詞もなくて、「そうしたナイトクラブの舞台でパフォーマンスをする」ということなのでしょう。歌詞中では、そうした意味で「彼女はキャバレーをやりたかった」と訳しましたが、邦題としてはちょっとさえないので「キャバレーの女」という既存の邦題を不承不承用いることにしました。ただし、この題名で歌われている日本語歌詞はまるで内容が異なります。また「モノクローム・ストーリー」とも呼ばれているようですが、これはまったくいただけません。

Elle voulait jouer cabaret  キャバレーの女
Patricia Kaas         パトリシア・カース


Elle voulait jouer cabaret
Sur un paque bot de contrebande
Pas dans un bastringue marseillais
Avec des marins qui lui demandent
Une chambre d´hôtel sur la mer
Histoire de faire le tour du monde 注1
D´être la fiancée du corsaire
Tout en restant une putain de blonde 注2

  彼女はキャバレーをやりたかった
  マルセイユの安キャバレーでではなく
  密輸の大型船の上で
  彼女に海の上のホテルの一室を求める
  船乗りたちとともに
  世界一周するために
  海賊のフィアンセになるために
  しょせん金髪の売春婦のままだとしても

Elle voulait jouer cabaret 1


Qui chanterait blue bayou 注3
En dansant sur les tables
Tout en étant capable
De faire peur aux voyous
Et chanter only you
En buvant dans les verres
Un fond de picon bière 注4
Qui rend à moitié fou.

  彼女は、テーブルの上で踊りながら
  ブルー・バイユーを歌うだろうし
  なんだってできる
  ならず者たちを怖がらせることも
  けっこうハイな気分にさせてくれる
  ピコン・ビールを
  何杯も飲み干しながら
  オンリー・ユーを歌うことも

Elle voulait jouer cabaret
Pas les serveuses les filles de salle
Pourtant Dieu sait qu´elle s´en foutait 注5
D´avoir le cœur et les mains sales
Elle venait d´une grande ville du nord
Où on a fermé les usines
Là où le soleil vaut de l´or
Elle savait depuis toute gamine

  彼女はキャバレーをやりたかった
  女給やウエートレスなんかじゃなく
  でも汚れた心と手を持つことを
  彼女は気にしちゃいなかったにちがいない
  彼女は北方の大きな町から来た
  その町で工場が閉鎖された
  そこでは太陽が金にも値することを
  彼女はほんのガキだった頃から知っていた

Elle voulait jouer cabaret 2


Elle voulait jouer cabaret
Pas les madelons d´infortune 注6
Je peux vous dire qu´elle en rêvait
D´un jazz band sous un clair de lune
D´un chapeau claque avec des strass 注7
Comme les vedettes américaines
Pas d´un néon sur la terrasse
Et l´accordéon qui se traîne 注8

  彼女はキャバレーをやりたかった
  不運なマドロンなんかじゃなく
  私はあなたがたに言えるわ 彼女は夢見ていたと
  月明かりのもとでのジャズ・バンドを
  アメリカのスターたちのような
  金ぴかの飾りのついたオペラハットを
  カフェテラスのネオンサインなんかじゃなく
  そしてアコーデオンが長々と音を響かせるのよ

[注]
1 histoire de+inf.「ただ…するために」
2 tout+ジェロンディフ「…ではあるが、…ではあっても」
3 blue bayouと小文字で書かれているが、あとの行のonly youともに、曲名に違いない。
「青い入江Blue Bayou」は、米国のロイ・オービソンRoy Orbisonとジョー・メルソンJoe Melsonが作り、オービソンが歌って1961年に録音され1963年にリリースされた曲で、1977年にリンダ・ロンシュタットLinda Ronstadtが歌ってヒットした。
bayouとは、もともと米国南部のミシシッピーの下流域のルイジアナ州あたりの河・湖・湾の沼のような入江を指す言葉。ちなみにルイジアナ州のニューオーリンズはジャズ発祥の地として知られる。最後の節には、un jazz band「ジャズ・バンド」やles vedettes américaines「アメリカ人のスターたち」という言葉が出てくる。
4 fond「(容器の)底に残っているもの、少量の液体」。前行にdans les verresとあり、複数のグラスの酒をつまりは何杯もおかわりして飲み干したということになる。Piconとは、オレンジの香りとハーブのほろ苦く爽やかな飲み口が特徴のビター系リキュール、アメール・ピコンAmer Picon。ビールで割って飲まれることがある。
5 Dieu sait que…「…なのは絶対間違いない(神がご存知だ)」と「…はわからない(神のみぞ知る)」の両義がある。ここでは前者。
6 Wikipedeiaによると、La Madelon(あるいはQuand Madelon)は第1次世界大戦中にヒットしたフランスのポピュラーソング(作詞:Louis Bousquet、作曲:Camille Robert)で、ある兵士がMadelonという酒場の女給に恋したが、彼女はすべての兵士に平等に接したいと言って断るという話→。英語やスペイン語にも翻案されて各国で歌われ、第2次世界大戦中にはマルレーネ・ディートリッヒMarlene Dietrichが歌ってリバイバルヒットした。
ここでは、兵士たちにサービスする酒場の女給の代名詞として用いられている。
7 chapeau claque (claqueだけでも)「オペラハット、畳みシルクハット、二角帽」。strass「まがい物の宝石、金ぴかの贋物」。
8 et…qui (感嘆を示す)「…は…なんですよ」




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