2016
06.10

時の流れに(アヴェック・ル・タン)Avec le temps

Léo Ferré


ジョルジュ・ブラッサンス、ジャック・ブレルとともに、60年代の3大歌手といわれるレオ・フェレは、1916年、第1次世界大戦の真っただ中にモンテカルロで生まれ、中学校時代からあらゆる楽器になじみ、特にピアノが得意で、ひとりで作曲もしていました。法律を学ぶためにパリに出て法学士の称号をとり、ナチスにパリが占領されてからはモナコに移り、本格的に作曲法を学びました。
1945年に出会ったエディット・ピアフに勧められ、翌年よりパリでシャンソンを歌い始めますが、むしろ作曲・作詞のほうが評価され、1952年に「パリ・カナイユParis canaille」がカトリーヌ・ソヴァージュの歌でヒットして以来、多くの傑作を作ってきました。また、詩をシャンソンにすることも得意で、なかでも傾倒する詩人アポリネールの「ミラボー橋Le pont Mirabeau」が知られています。
タバコとジミ・ヘンが大好きで、ドゴールと勲章とサッカーが大嫌いだったとか。1993年の革命記念日に76才で亡くなりました。

アナーキストを自認するレオ・フェレは、1968年の5月革命に有頂天になりましたが、それがドゴールによってあっという間に押しつぶされ、おまけに前夫人マドレーヌとの離婚という事態も加わって落ち込んでいました。そんな状況で1970年に作られたのがこの曲「時の流れに(アヴェック・ル・タン)Avec le temps」 です。したがって、非常に否定的な内容の歌詞ですが、やはり名曲中の名曲で、多くの歌手に歌われてきました。



Avec le temps  時の流れに(アヴェック・ル・タン)
Léo Ferré     レオ・フェレ


Avec le temps...
Avec le temps, va, tout s'en va 注1
On oublie le visage et l'on oublie la voix
Le cœur, quand ça bat plus, c'est pas la peine d'aller 注2
Chercher plus loin, faut laisser faire et c'est très bien

  時とともに…
  時が去りゆくとともに、すべては去りゆく
  面影を忘れ また声を忘れる
  心臓、それがもう打たなくなったとき、それ以上努力したってもう無駄、
  なるがままにしておくべし、それがたいへんいいことだ

Avec le temps...
Avec le temps, va, tout s'en va
L'autre qu'on adorait, qu'on cherchait sous la pluie 注3
L'autre qu'on devinait au détour d'un regard
Entre les mots, entre les lignes et sous le fard
D'un serment maquillé qui s'en va faire sa nuit 注4
Avec le temps tout s'évanouit

  時とともに…
  時が去りゆくとともに、すべては去りゆく
  大好きだった相手も
  雨のなかを捜し歩いた相手も
  言葉の間、行間、そして見せかけの誓いの裏側を
  ちらと覗いて本心の知れた相手も
  その誓いは自ら眠りへと向かい
  時とともにすべては消え去る

Avec le temps1


Avec le temps...
Avec le temps, va, tout s'en va
Même les plus chouettes souv'nirs ça t'as une de ces gueules 注5
A la gal'rie j'farfouille dans les rayons d'la mort 注6
Le samedi soir quand la tendresse s'en va toute seule 注7

  時とともに…
  時が去りゆくとともに、すべては去りゆく
  とてもすてきな思い出にさえ 君はうんと浮かない顔をしている。
  陳列室で 私は喪失の陳列棚を探してまわる
  優しさがおのずと消えゆく土曜の夜に

Avec le temps...
Avec le temps, va, tout s'en va
L'autre à qui l'on croyait pour un rhume, pour un rien
L'autre à qui l'on donnait du vent et des bijoux 注8
Pour qui l'on eût vendu son âme pour quelques sous
Devant quoi l'on s'traînait comme traînent les chiens 注9
Avec le temps, va, tout va bien

  時とともに…
  時が去りゆくとともに、すべては去りゆく
  風邪や、たいしたもんじゃないことのように思っていたあの人
  無価値なものやあるいは高価な宝石をあげた相手。
  その人のためならと わずかな金で魂を売ってしまった相手
  その金欲しさに ひとは犬を引きずるように、わが身を引きずったが
  時とともに、すべてはうまく行く

Avec le temps2


Avec le temps...
Avec le temps, va, tout s'en va
On oublie les passions et l'on oublie les voix
Qui vous disaient tout bas les mots des pauvres gens 注10
Ne rentre pas trop tard, surtout ne prends pas froid

  時とともに…
  時が去りゆくとともに、すべては去りゆく
  熱い気持ちを忘れ、また声を忘れる
  哀れっぽい言葉をあなたたちに低くつぶやいていた声を
  あまり遅く帰らないで、とくに風邪をひかないでね という

Avec le temps...
Avec le temps, va, tout s'en va
Et l'on se sent blanchi comme un cheval fourbu
Et l'on se sent glacé dans un lit de hasard
Et l'on se sent tout seul peut-être mais peinard
Et l'on se sent floué par les années perdues
Alors vraiment... avec le temps... on n'aime plus

  時とともに…
  時が去りゆくとともに、すべては去りゆく
  そして 疲れ果てた馬のように自分が老いていると感じ
  そして 行きずりのベッドの中で凍えていると感じ
  そして、ひとりぼっちだろうが気楽なんだと感じる
  そして、失った年月に騙されたと感じ
  それで本当に… 時とともに…もう愛さなくなるのだ

Avec le temps5


[注]
1 vaの主語はle tempsで、それを繰り返すのを避け、ちょうど日本の和歌の掛詞風にavec le tempsからつながる形になっている。
2 c(e n)'est pas la peine de+inf.「…するには及ばない」
3 忘れる側はon(l’on)で、あえて訳せば「ひと」だが、訳語にはほとんど入れなかった。ところどころ、je, tu,vousに変えられている。忘れられる側はl'autre。「あの人」「相手」と訳語を適宜変えた。
4 quiの先行詞は直前のun serment maquilléで、「誓い」がs'en aller+inf.「…しに行く」。faire sa nuit(ou ses nuits)という熟語には、「夜勤をする」と、「赤ん坊が(夜間に授乳しなくても)朝まで眠るようになる」という意味があり、後者のニュアンスにて、誓いが当人の手を離れて機能しなくなっていく意味に解釈した。
5 ça はその前のles plus chouettes souv'nirs。それに対して、t’a(=tu a) une de ces gueules「嫌な顔をする」。une de…は強調表現。
6 gal'rie(galerie)は自分の記憶の中のこと。
7 la tendresse は自分の心の優しさであり、toute seuleは「ひとりで」ではなく「おのずと、ひとりでに」。
8 du ventには「無価値な物」という意味があり、des bijouxと対比されている。
9 quoiの先行詞は前行のquelques sous。
10pauvreが名詞の前にあるので、「貧しい」ではなく、「哀れな」。les mots des pauvres gensを「哀れっぽい言葉」と意訳した。次行がその言葉の内容。



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