
ミレイユ・マチューMireille Mathieuは、 1946年にフランスのアヴィニョンの貧しい石切工の家で14人兄弟の長女として生まれ、弟が7人妹が6人がいました。公衆の面前で歌ったのは4歳のときにミサで歌ったのが最初で、家計を助けるために工場で働きながら、歌への思いを培っていました。
19歳のとき、テレビの歌番組でエディット・ピアフÉdith Piafの「愛の讃歌La vie en rose」を歌って優勝し、その歌唱力は「ピアフの再来」とも評されシャンソン界に大きな波紋を引き起こしました。1966年、二十歳のときポール・モーリア作曲の「愛の信条Mon credo」でデビュー。以後、フランスを代表する女性歌手として絶大な人気を博しました。2005年には、オランピア劇場でデビュー40周年記念コンサートを開きました。シャンソンのディスクを世界で一番多く出し、歌った曲は9カ国語で1,200にもおよぶというインターナショナルな歌手で、40年間でのディスク売り上げ数は1億5千万枚。英国のエリザベス女王、アメリカ合衆国のレーガン大統領、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の前で歌ったことでも知られ、来日公演も幾度かおこなっています。2011年2月には、レジオン・ドヌールのオフィシエ勲章を受章。エリゼ宮でサルコジ大統領から直接授与されたそうです。
当時の「愛の讃歌La vie en rose」「愛の信条Mon credo」はYouTubeで聴けますが、やはりすごいです。声量も「r」の音の震わせかたもピアフ以上です。彼女は今年7月には70歳になりますが、髪型はずっと丸いおかっぱのままで、歌い上げる歌唱法も変わらなくて、年齢不詳の最たるものです。153cmという小柄な体は、エディット・ピアフやシャルル・アズナヴールと共通し、ある人の意見では、小柄なほうが余分な維持エネルギーを使わなくて済むからだろうとのこと。私生活に関するデータを探しましたが、どのサイトでも、歌手活動のことにしか触れていませんでした。人生のすべてを歌に捧げてきたということでしょうか、なにかご存じの方教えてください。
今回、「愛の信条Mon credo」を取り上げようかとも思ったのですが、こちらを選びました。ご存じ、アバABBAのヒット曲The winner takes it allを、内容に忠実にフランス語に翻案した歌詞で、彼女の歌唱力がよく活かされた1曲です。この原曲は1999年公開のミュージカル「マンマ・ミーア!Mamma Mia!」と、メリル・ストリープMeryl Streepが出演した同名の映画.(2008年)でも用いられています。下の歌詞に挿入した画像はその映画のシーン。
ABBAのThe winner takes it all
映画「マンマ・ミーア」のメリル・ストリープの歌。下の歌詞に挿入した画像もその映画のシーン。
Bravo tu as gagné あなたの勝ちよ
Mireille Mathieu ミレイユ・マチュー
Nous avons joué notre vie ensemble
Et puis un beau jour la chance a tourné
On ne finira pas la partie ensemble 注1
Et chacun s'en va seul de son côté
私達は自らの人生をいっしょに賭けたわ
そしてある日ツキが変わった
ともにゲームを終えることはなく
それぞれが独りで自分の側に去るのよ

Bravo tu as gagné, et moi j'ai tout perdu
On s'est tellement aimé, on ne s'aime plus
J'étais sûre de moi, je vivais tranquille
Et ta main dans ma main je croisais les doigts
Et tous les tricheurs de la grande ville
Ne me faisaient pas peur quand tu étais là
おめでとうあなたの勝ち、私は全敗よ
こんなに愛し合った、でももう愛し合えない
私には自信があって、静かに生きていた
あなたの手を握り指を絡ませていた
あなたがいれば、大都会のペテン師だって皆怖くなかった
Mais les dés sont jetés, pair impair, rouge ou noir 注2
Qui est le plus heureux de nous deux ce soir ?
Bravo tu as gagné, et moi j'ai tout perdu
On s'est tellement aimé, on ne s'aime plus
でもサイは投げられた、偶数か奇数か、赤か黒か
今宵 私達二人のどちらが幸せなの?
おめでとうあなたの勝ち、私は全敗よ
こんなに愛し合った、でももう愛し合えない

Est-ce qu'elle est ta complice cette partenaire
Que tu as choisi pour me remplacer ?
En amour la loi c'est comme à la guerre
Le plus fort des deux reste le dernier
Et notre amour si beau finit pourtant si mal
On le juge à huis clos dans un tribunal 注3
Bravo tu as gagné, et moi j'ai tout perdu
On s'est tellement aimé, on ne s'aime plus
私の替りにあなたが選んだこのパートナー
彼女があなたの共犯者なの?
恋の掟は戦いと同様
二人のうちの強い方が最後に残る
かくも美しい私達の恋、けれど
それは非公開裁判で酷い裁かれ方をする
おめでとうあなたの勝ち、私は全敗よ
こんなに愛し合った、でももう愛し合えない
Nous avons joué notre vie ensemble
Et puis un beau jour la chance a tourné
On ne finira pas la partie ensemble
Et chacun s'en va seul de son côté
Bravo tu as gagné, bravo tu as gagné
私達は自らの人生をいっしょに賭けたわ
そしてある日ツキが変わった
ともにゲームを終えることはなく
それぞれが独りで自分の側に去るのよ
おめでとうあなたの勝ち、おめでとうあなたの勝ち
{Chœur}
Il a gagné - j'ai tout perdu - on s'est aimé - on n'aime plus
Amour si bon pourtant, si mal juge à huis clos... 注4
彼の勝ち-私の全敗-愛し合った-もう愛し合えない
愛はこんなに素晴らしい、なのに密かにこんなに酷い裁き方を…
[注]
1 partieには「部分」「分野」「娯楽、パーティー」などの意味もあるが、ここでは「勝負、ゲーム」。
2 les dés sont jetés「賽は投げられた」は、ルビコン川を渡る決意をした時の・ジュリアス・シーザー(カエサル)の言葉の引用。この歌詞では、すべてがポーカー等のゲームに喩えられており、これも、「運命の歯車は既に回ってしまった」というシーザーの言葉の意味と、サイコロが投げられてゲームが始まったこととを掛け合わせている。pair impair, rouge ou noirもポーカーやルーレットに直結している。
3 juger「裁く」 à huis「門、扉」 clos「閉ざされた」→すなわち、「公開せずに裁く」。juge à huis clos dans un tribunal全体で、「非公開裁判で裁く」。前行のsi malはこの文を修飾し、主語のonは行為者を明示しない用法なので、受動態風に訳した。
4 コーラス部は総括的な内容であり、ここは、注3の内容を継承した表現。ただし、注3の部分では、amourはjugerされる対象であったが、ここでは形の上から、jugerの主語はamour(無冠詞)となる。
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