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2014
10.12

溺れる人La noyée

明日13日に予定していた《ゲンズブールを歌う》が11月2日に延期となり、20日ほど時間ができてしまいました。出演者の一人としてはじっくり仕切り直ししなきゃというところですが、ブログでもその日数を活用したいと思います。エントリーされている20曲のうち3曲は、こちらのブログで取り上げていますが、残りの15曲を旧ブログから1日1曲運び、2曲を新たに取り上げることにします。そうすれば、コンサート当日までに全曲、こちらに掲載できるでしょう。…というわけで、しばらくゲンズブールにお付き合いください。

La noyée


まず、「溺れる人La noyée」を掬い上げて運びます。
この曲は、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgがイヴ・モンタンYves Montandのために書き下ろし、モンタンに拒まれた曲だといわれています。1970年のエイブラハム・ポロンスキーの英・仏・伊・ユーゴ合作映画「馬泥棒Le voleur de chevaux」の主題歌に用いられました。1974年にはアンナ・カリーナAnna Karinaが歌っています。 1994年に、ゲンスブール自身の72年の録音のインタヴュー入りのシングル盤が出ています。その後2002 年にカーラ・ブルーニCarla Bruni が歌って、前回取り上げた「部屋のなかの空Le ciel dans une chambre」と同様、アルバム「風のうわさQuelq'un m'a dit」に収録されています。



ゲンズブールは(インタヴューに答えてタバコを吸いながら)しゃべったあと歌います。



La noyée      溺れる人(ラ・ノワイエ)
Serge Gainsbourg  セルジュ・ゲンズブール


Tu t'en vas à la dérive
Sur la rivière du souvenir
Et moi, courant sur la rive,
Je te crie de revenir
Mais, lentement, tu t'éloignes
Et dans ma course éperdue, 注1
Peu à peu, je te regagne 注2
Un peu de terrain perdu.

  君は漂って行く
  記憶の川の水面を
  そして僕は、土手を走りながら、
  帰ってくるようにと君に叫ぶ、
  でも、ゆっくりと、君は遠ざかり
  無我夢中で僕は走り、
  すこしずつ、君からの
  遅れを取り戻す

noyee2.jpg


De temps en temps, tu t'enfonces
Dans le liquide mouvant
Ou bien, frôlant quelques ronces,
Tu hésites et tu m'attends
En te cachant la figure
Dans ta robe retroussée,
De peur que ne te défigurent 注3
Et la honte et les regrets.

  ときどき、君は沈む
  流動する液体のなかに
  あるいは、いばらを危うく免れつつ、
  君はためらい僕を待つ
  まくれ上がったドレスで
  顔を隠しながら、
  恥じらいと後悔が
  自分を醜くしやしないかと恐れて。

noyee1.jpg


Tu n'es plus qu'une pauvre épave,
Chienne crevée au fil de l'eau
Mais je reste ton esclave
Et plonge dans le ruisseau
Quand le souvenir s'arrête
Et l'océan de l'oubli,
Brisant nos coeurs et nos têtes,
A jamais, nous réunit. 注4

  君はもう哀れな漂流物に、
  水に流されるくたばった犬にすぎない
  だけど僕は君の奴隷のままだから
  流れのなかに飛び込む
  記憶が停止したとき
  忘却の海が、
  僕たちの心や頭脳を壊しながら、
  永遠に、僕たちを一つにする。

[注]題名のLa noyéeは女性形であり、溺れているのは女性。追いかけているのは男性。
1 カーラ・ブルーニもゲンズブールの男性の立場の歌詞のままで歌っているが、ここだけはta courseと変えて歌っている。だが、もとのma courseのほうが意味が通じやすい。
2 regagner le terrain perdu「失地を回復する」「勢力を挽回する」
3 de peur que (ne)+sub.「…しはせぬかと恐れて」défigurentは3人称複数で、次行のla honte et les regretsが主語。etは説明的に追加・強調する働き。
4 à jamais「永遠に」



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