
今回は、ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiの「若い郵便屋Le facteur」です。Françoise Walkという女性歌手といっしょに歌っています。1961年にマノス・ハジダキスΜάνος Χατζιδάκις(Mános Hadjidákis)が作詞・作曲したギリシャ語の曲Ο ταχυδρόμος πέθανε(O tachydrómos péthane)をムスタキがフランス語に訳して歌いました。1969年にシングルリリースし、アルバム:Le Métèqueに収録されています。(以上、岩元ガン子氏より質問を受けて調べ直し、修正いたしました。2021年6月17日)
郵便屋で思い出すのは、ローヌ・アルプRhone-Alpesのフェルディナン・シュヴァルFerdinand Cheval(1936-1924)という郵便配達人が、配達の行き帰りに小石を一つずつ積み重ね33年の歳月をかけて宮殿のような不思議な建造物「理想宮Palais idéal」(記事の一番下の写真)を作ったというお話。それは今も健在で観光名所となっています。
メールや電話でのやり取りばかりになってしまった昨今ですが、恋する気持ちを一字一句手紙にしたため、返事を心待ちにポストを何度も覗くというゆかしい恋がとても素敵に思えます。
サヴィナ・ヤナトゥΣαβίνα Γιαννάτουの歌うギリシャ語の原曲
Le facteur 若い郵便屋
Georges Moustaki ジョルジュ・ムスタキ
Le jeune facteur est mort
Il n´avait que dix-sept ans
若い郵便屋は死んだ
まだ17歳だった

L´amour ne peut plus voyager
Il a perdu son messager
恋はもう旅することができない
恋は自分を運んでくれる者を失った
C´est lui qui venait chaque jour
Les bras chargés de tous mes mots d´amour
C´est lui qui portait dans ses mains
La fleur d´amour cueillie dans ton jardin
僕の愛の言葉のすべてを両腕に抱えて
毎日やって来たのは彼だった
君の庭で摘まれた花を
両手に持って運んだのは彼だった

Il est parti dans le ciel bleu
Comme un oiseau enfin libre et heureux
Et quand son âme l´a quitté
Un rossignol quelque part a chanté
青空へと彼は旅立った
ついに自由でしあわせになった小鳥のように
そして魂が彼から離れたとき
ナイチンゲールがどこかで歌った
Je t´aime autant que je t´aimais
Mais je ne peux le dire désormais
以前と同じだけ君を愛している
だけどそう言うことはもうできない
Il a emporté avec lui
Les derniers mots que je t´avais écrit
彼は持って行ってしまった
僕が君に書いた最後の言葉を
Il n´ira plus sur les chemins 注
Fleuris de roses et de jasmins
Qui mènent jusqu´à ta maison
L´amour ne peut plus voyager
Il a perdu son messager
Et mon cœur est comme en prison
バラやジャスミンの咲く
君の家に至る道に
もう行くことはないだろう
恋はもう旅することができないのだ
恋は自分を運んでくれる者を失った
そして僕の心は牢獄にいるようだ

Il est parti l´adolescent
Qui t´apportait mes joies et mes tourments
L´hiver a tué le printemps
Tout est fini pour nous deux maintenant
僕の喜びと苦しみを君に伝えてくれた
若者は行ってしまった
冬は春を殺した
僕たちふたりにとってすべては終わった
[注] 歌詞中のilは、le facteurあるいはl´amourをあらわすのだが、この行のilはどちらともとれる。

Comment:3
コメント
ご丁寧にありがとうございます。やはり1969年の発表で良かったのですね。
岩元ガン子
2021.06.18 00:55 | 編集

ご指摘ありがとうございます。調べがまったく足りませんでした。調べ直して記事を訂正いたしました。
朝倉ノニー
2021.06.17 06:14 | 編集

いつも、勉強させていただいています。教えてください。
ムスタキが「若い郵便屋Le facteur」を訳したのが1962年というのは、何処の資料に載っているのでしょうか?
ムスタキが「若い郵便屋Le facteur」を訳したのが1962年というのは、何処の資料に載っているのでしょうか?
岩元ガン子
2021.06.16 23:21 | 編集
