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2014
10.10

夜明けのタバコTa cigarette après l'amour

Charles Dumont Ta cigarette après lamour


シャルル・デュモンCharles Dumontは1929年にフランス南西部カオールで生まれた俳優・作曲家・歌手。作曲家としての活動の最初のころは、偽名で、ダリダDalida、グロリア・ラッソGloria Lasso、ティノ・ロッシTino Rossiなどのために曲を書いていて、1956 年に、エディット・ピアフÉdith Piafの「水に流してNon, je ne regrette rien」(1960年録音)をコラ・ヴォケールCora Vaucaireの夫である作詞家ミッシェル・ヴォケールMichel Vaocaireとともに作ってからは、本名で、ピアフのための曲作りにとりかかり、「私の神様Mon Dieu」ほか彼女のために書いた作品は40曲ほどにもなります。ピアフに認められ、彼女とデュエットするまでになりましたが、ピアフは63年に亡くなってしまいます。
その後もミッシェル・ヴォケールとの共作を続けていたところ、あまりにピアフ的なスタイルを修正するよう、ソフィー・マックノーSophie Makhno(元バルバラの秘書だったディレクター)にアドヴァイスされます。その結果、67年に生まれたのがこの「夜明けのタバコTa cigarette après l'amour」。この大ヒットで、歌手としての活動が本格化します。以後マックノーとの共作が続き、1972年にファーストアルバムを出します。その翌年73年にシャルル・グランプリを受賞した後、74年、75年も他の賞を続けて受け、リサイタルも開き、77年に出したアルバムからシングルカットされた「Une chanson」が10万枚売れて、SACEM特別賞を受賞。その翌年にはオランピアに立ち、80年代には海外公演も始め、その後も毎年のようにアルバムを出し続けています。2008年7月には、日仏交流150周年を記念した巴里祭ジャパンツアーを行ないました。もちろん現在も活動中で、2010年よりÂge tendre et Têtes de bois(60年代の古い歌を昔のまま歌う歌手たちの集まり)のメンバーとなっています。

シャンソン・レアリストであったピアフの歌とは異なり、彼自身の持ち味として定着したものは、心の深いところにそっと響いてくる歌。皆が、あの曲はいいわねと言い合って聴くものとは違って、歳を重ねた人がひとりで密かに愛するような曲です。



作詞したソフィー・マックノーも歌っています。



Ta cigarette après l'amour           夜明けのタバコ
Charles Dumont                  シャルル・デュモン


Ta cigarette après l'amour
Je la regarde à contre-jour
Mon amour.
C'est chaque fois la même chose
Déjà tu penses à autre chose
Autre chose.
Ta cigarette après l'amour
Je la regarde à contre-jour
Mon amour.

  情事のあとのきみのタバコ
  僕はそれを逆光で見ている
  モナムール。
  毎回いつも同じだ
  もう君はほかのことを考えている
  ほかのことを。
  僕はそれを逆光で見ている
  モナムール。

cigarette6.jpg


Il va mourir avec l'aurore
Cet amour-là qui s'évapore
En fumée bleue qui s'insinue. 注1
La nuit retire ses marées
Je n'ai plus rien à déclarer
Dans le jour j'entre les mains nues.

  しのび込んだ青い煙となって
  この愛は消えていき
  夜明けとともに息絶えてしまう。
  夜は潮が引くように姿を消す
  僕にはもう何も言うことがなく
  僕はむき出しの手を朝陽にさらす。

Ta cigarette après l'amour
Je la regarde à contre-jour
Mon amour.
Déjà tu reprends ton visage
Tes habitudes et ton âge
Et ton âge.
Ta cigarette après l'amour
Je la regarde à contre-jour
Mon amour.

  情事のあとのきみのタバコ
  僕はそれを逆光で見る
  モナムール。
  もう君は本来の顔立ちや
  習慣、そして年齢も取り戻している
  年齢も。
  情事のあとのきみのタバコ
  僕はそれを逆光で見る
  モナムール。

cigarette3.jpg


Je ne pourrai jamais me faire 注2
A ce mouvement de la terre
Qui nous ramène toujours au port.
Aussi loin que l'on s'abandonne 注3
Ni l'un ni l'autre ne se donne
On se reprend avec l'aurore.

  僕たちをいつも港に連れ戻す
  世界の動きに
  僕は順応できない。
  いかに身を委ねようとも
  どちらも自身を与えることなく
  夜明けとともに自分に立ち帰る。

Ta cigarette après l'amour
S'est consumée à contre-amour 注4
Mon amour.

  情事のあとのきみのタバコは
  愛に背を向けて燃え尽きる
  モナムール。

[注]タイトルを直訳すると、1行目のとおりになるが、フランス語ではamourという多義な言葉が、日本語では狭義になって少し露骨なため、一般的な邦題を用いた。
1 enは、変化の結果をあらわし、en fumée「煙となって」。
2 se faire à qc「…に慣れる」
3 aussi loin que「いかに…しようと」
4 contre-は「反対・対立・防御・接近・補充」の意の語形成要素で、à contre-amourは、第1節・第3節のà contre-jour「逆光で」に合わせた造語的表現。訳語は悩んだがとりあえずこの形にした。


コメント
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dot 2015.05.29 22:04 | 編集
Dumontの本の内容は知りません。2008年の「シャルル・デュモン巴里祭ジャパンツアー」のパンフレットの大野修平さんの記事には、1960年10月5日に、デュモンができたばかりの「水に流して」をピアフに見せに来た、ということが書かれています。Wikipédiaの記事にも間違いがあることがあり、今のところ私には確認できません。
朝倉ノニーdot 2015.05.29 15:18 | 編集
いつも、早速のご回答をありがとうございます。
実は
お示し頂いたWikipediaの出典が何なのか
確認したかったのですが。。。

Dumontが出した「Non je ne regrette toujours rien」(2012)に記載されているかどうかご存じですか?

ぴょこぴょこdot 2015.05.29 08:20 | 編集
WikipédiaのCharles Dumontの記事
http://fr.wikipedia.org/wiki/Charles_Dumont_%28compositeur%29
および
Non, je ne regrette rienの記事
http://fr.wikipedia.org/wiki/Non,_je_ne_regrette_rien
にありました。
でも、創唱したのは4年後の60年で、時間が経っています。
朝倉ノニーdot 2015.05.29 07:34 | 編集
いつも、大変お世話になっております。
「水に流してNon, je ne regrette rien」が1956年に作られたというのは、どの資料に載っているのでしょうか?教えて頂けますか?
ぴょこぴょこdot 2015.05.29 03:06 | 編集
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