
バルバラBarbaraの「ペルランパンパンPerlimpinpin」という曲をご紹介しましょう。perlimpinpinは本来「インチキ、いかさま」といった意味で、昔、香具師が売ったインチキ万能薬をpoudre de perlimpinpinといったそうです。これは粉ですが、英語では油でsnake oil。日本では「ガマの油」といったところかも。この曲では、フランスの絵本の「バーバパパ Barbapapa」の昔の名前だとWikipédiaには書かれています。「綿菓子 barbe à papa」からインスピレーションを受けて生まれたというバーバパパは不思議な力をもつキャラクター。ペルランパンパンという名前のほうがもっと不思議でバルバラは気に入ったのでしょう。ヴェトナム戦争のさなかに強者の暴力から弱者を守ろうというメッセージを込めてこの曲を作ったようです。かなり強い歌い方をしていて、強くて美しいです。1972年のアルバムAmours incestueusesに収録されています。日本で発売された版「不倫」では、この曲の邦題は原題の読みの仮名書き「ペルランパンパン」となっていますのでそれに合わせましょう。 歌詞に、バルバラの生地に近い17区のバティニョル公園Le square des Batignollesが出てきますが、それに近いクリシー=バティニョル=マルタン・ルター・キング公園Parc Clichy-Batignolles - Martin Luther Kingに、この曲に因んで、ペルランパンパン農園Le Jardin de Perlimpinpinという共同園芸の会あるいはその農園が作られたそうです。(私は「ペルランパンパン農園」が先にあってそれをバルバラが歌っているのだと思い込んでいましたが、コメントをいただいて間違いに気づき、もう一度調べ直して記事を訂正いたしました。)そしてAlée Barbaraと名付けられた小道もその公園の中を通っています(ナントNantesにも同名の道があります)。
Perlimpinpin ペルランパンパン
Barbara バルバラ
Pour qui, comment quand et pourquoi?
Contre qui? Comment? Contre quoi?
C’en est assez de vos violences. 注1
D’où venez-vous?
Où allez-vous?
Qui êtes-vous?
Qui priez-vous?
Je vous prie de faire silence.
誰のために、どのように、何時、なぜ?
誰に対して?どんな風に?何に対して?
あなた方の暴力はもうたくさんよ?
あなた方はどこから来たの?
あなた方はどこへ行くの?
あなた方は誰?
あなた方は誰に祈るの?
静かにしてと私はあなた方に願うわ。

Pour qui, comment, quand et pourquoi?
S’il faut absolument qu’on soit
Contre quelqu’un ou quelque chose,
Je suis pour le soleil couchant
En haut des collines désertes.
Je suis pour les forêts profondes,
Car un enfant qui pleure,
Qu’il soit de n’importe où,
Est un enfant qui pleure,
Car un enfant qui meurt
Au bout de vos fusils
Est un enfant qui meurt.
誰のために、どのように、何時、なぜ?
もしもどうしても
誰かにあるいは何かに反対しなきゃならないのなら
私は人気のない丘のてっぺんで
夕陽に心を寄せる。
深い森に心を寄せる、
なぜなら泣いている子どもは、
どこから来たとしても、
泣いている子どもだから、
なぜなら あなた方の銃口の前で
死んで行く子どもは
死んで行く子どもだから。
Que c’est abominable d’avoir à choisir
Entre deux innocences!
Que c’est abominable d’avoir pour ennemis
Les rires de l’enfance!
なんとおぞましいのだろう
ふたりの無垢な者の一方を選ばなきゃならないことは!
なんとおぞましいのだろう
子どもの笑い顔を敵とすることは!
Pour qui, comment, quand et combien?
Contre qui? Comment et combien?
À en perdre le goût de vivre, 注2
Le goût de l’eau, le goût du pain 注3
Et celui du Perlimpinpin
Dans le square des Batignolles!
誰のために、どのように、何時、なぜ?
誰に対して?どんな風に?何に対して?
生きる意欲をなくし、
水の味が、パンの味が分からなくなり
バティニョル公園にいる
ペルランパンパンへの興味をなくすことになるのか!

Mais pour rien, mais pour presque rien,
Pour être avec vous et c’est bien!
Et pour une rose entr’ouverte,
Et pour une respiration,
Et pour un souffle d’abandon,
Et pour ce jardin qui frissonne!
だが何のためでもなくて、ほとんど何のためでもなくて、
あなたといるため それはとてもすてきなこと!
そして咲き初めた一輪のバラのため、
そしてひと呼吸するため、
そして震えているこの庭のためよ!
Rien avoir, mais passionnément,
Ne rien se dire éperdument,
Mais tout donner avec ivresse
Et riche de dépossession,
N’avoir que sa vérité,
Posséder toutes les richesses,
Ne pas parler de poésie,
Ne pas parler de poésie
En écrasant les fleurs sauvages
Et faire jouer la transparence
Au fond d’une cour au murs gris
Où l’aube n’a jamais sa chance.
何も持たず、でも情熱的であること、
何も激しく言い合わず、
陶酔しつつすべてを与えること
手放すことで豊かになること、
自らの真実しか持たないこと
すべての豊かさを持つこと、
詩について語らないこと、
野の花々を踏みにじりながら
詩について語らないこと
夜明けが訪れる機会のまったくない
灰色の壁に囲まれた中庭で
透明な気持ちを働かせよう。
Contre qui, comment, contre quoi?
Pour qui, comment, quand et pourquoi?
Pour retrouver le goût de vivre,
Le goût de l’eau, le goût du pain
Et celui du Perlimpinpin
Dans le square des Batignolles.
誰に対して?どんな風に?何に対して?
誰のために、どのように、何時、なぜ?
生きる意欲を取り戻すために、
水の味を、パンの味を取り戻すために、
バティニョル公園にいる
ペルランパンパンへの興味を取り戻すために。
Contre personne et contre rien,
Contre personne et contre rien,
Mais pour toutes les fleurs ouvertes,
Mais pour une respiration,
Mais pour un souffle d’abandon
Et pour ce jardin qui frissonne!
誰のためでもなく、何のためでもなく
誰のためでもなく、何のためでもなく
咲いているすべての花々のため
ひと呼吸するため、
くつろいで一息つくため
そして震えているこの庭のため!

Et vivre passionnément,
Et ne se battre seulement
Qu’avec les feux de la tendresse
Et, riche de dépossession,
N’avoir que sa vérité,
Posséder toutes les richesses,
Ne plus parler de poésie,
Ne plus parler de poésie
Mais laisser vivre les fleurs sauvages
Et faire jouer la transparence
Au fond d’une cour aux murs gris
Où l’aube aurait enfin sa chance,
Vivre,
Vivre
Avec tendresse,
Vivre
Et donner
Avec ivresse!
そして情熱的に生きること
ただ思いやる熱い気持ちをもってしか
たがいに争わないこと
そして、手放すことで豊かになること、
自らの真実しか持たないこと
すべての豊かさを持つこと、
もう詩について語らないこと、
もう詩について語らないこと、
だが野の花々を生かしておこう
透明な気持ちを働かせよう
灰色の壁に囲まれた中庭で
そこに夜明けがついには訪れるだろう、
生きること、
優しさをもって
生きること、
生きること
そして
陶酔しつつ
与えること!
[注]
1 C’en est assez !「もうたくさんだ、いい加減にしろ」
2 perdre le goût de qc.,inf.「…(すること)への好みをなくす、…(すること)が嫌いになる」
3 perdre le goût du painは古くは「死ぬ」ことを意味した。

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コメント
ノニー様、
素早いご対応に感激し驚いております。
どうも有り難うございました。
私自身もこの件については調べていたので、このページを見て、一言申し上げねば、と思って書いてしまいました。
バルバラの歌って、本当に深いというか、いいですね。
素早いご対応に感激し驚いております。
どうも有り難うございました。
私自身もこの件については調べていたので、このページを見て、一言申し上げねば、と思って書いてしまいました。
バルバラの歌って、本当に深いというか、いいですね。
Blanche Neige
2016.05.05 09:59 | 編集

ありがとうございます。了解いたしました。記事を訂正いたします。
朝倉ノニー
2016.05.04 22:09 | 編集

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