2016
03.19

旅へのいざないL'invitation au voyage

Léo ferré Linvitation au voyage


シャルル・ボードレールCharles Baudelaireの詩Linvitation au voyage1「旅へのいざないL'invitation au voyage」は、女優マリー・ドーブランMarie Daubrunのために書かれたとされています。1857年の「悪の華Les Fleurs du mal」詩篇の第1部「憂鬱と理想Spleen et idéal」のなかで発表されましたが、書いたのはその前年。当時、ボードレールはマリーと精神的な恋愛関係にあり、二人でオランダに行くという夢をこの詩に託しました。マリーは、ボードレールの友人で詩人のテオドール・ド・バンヴィルThéodore de Banvilleとも付き合っていて、彼らはその後ニースに旅立ちました。


1870年にアンリ・デュパルクHenri Duparcがこの詩に曲を付けて歌曲を作りました。また1957年には、レオ・フェレLéo ferréがあらたにシャンソンとしての曲を作り、ボードレールの同名の詩篇のなかの詩を歌ったアルバム「ボードレールによる12の歌Les Fleurs du mal」に収録されました。



このような有名な詩は、多くの文学者や詩人の訳がありますが、あえてそれらを参照せず、シャンソン歌詞の翻訳を趣味としている私個人の訳を出します。

L'invitation au voyage  旅へのいざない
Léo ferré          レオ・フェレ


Mon enfant, ma sœur,
Songe à la douceur
D'aller là-bas vivre ensemble!
Aimer à loisir, 注1
Aimer et mourir
Au pays qui te ressemble!
Les soleils mouillés 注2
De ces ciels brouillés
Pour mon esprit ont les charmes
Si mystérieux
De tes traîtres yeux,
Brillant à travers leurs larmes.

  かわいい人よ、わが妹よ
  思い描きたまえ
  かの地に行きふたりで暮らすという甘き夢を!
  愛し合おう 心ゆくまで
  愛し合おう 死にゆくまで
  君に似たその国で!
  霧にけむる空の
  うるんだ太陽は
  わが精神にとっては
  涙を透して輝く
  君の不実な瞳のように
  いとも謎めいた魅力をもつ

Linvitation au voyage2


Là, tout n'est qu'ordre et beauté,
Luxe, calme et volupté.

  かの地では、すべてが秩序と美、
  奢侈、静寂と悦楽そのもの。

Des meubles luisants,
Polis par les ans,
Décoreraient notre chambre;
Les plus rares fleurs
Mêlant leurs odeurs
Aux vagues senteurs de l'ambre,
Les riches plafonds,
Les miroirs profonds,
La splendeur orientale,
Tout y parlerait
À l'âme en secret
Sa douce langue natale. 注3

  歳月に磨かれた
  光沢のある家具が、
  われらの寝間を飾るだろう
  珍重このうえなき花々
  その香りは
  琥珀の仄かな香気と溶け合う、
  豪奢な天井、
  深奥な鏡、
  東洋風の華麗さ、
  そこではすべてが
  ひそかに魂に語りかけるだろう
  その国の優しい言葉を。

Linvitation au voyage3


Là, tout n'est qu'ordre et beauté,
Luxe, calme et volupté.

  かの地では、すべてが秩序と美、
  奢侈、静寂と悦楽そのもの。

Vois sur ces canaux
Dormir ces vaisseaux
Dont l'humeur est vagabonde;
C'est pour assouvir
Ton moindre désir
Qu'ils viennent du bout du monde.
Les soleils couchants
Revêtent les champs, 注4
Les canaux, la ville entière,
D'hyacinthe et d'or;
Le monde s'endort
Dans une chaude lumière.

  ごらんよ 運河に
  放浪好きな
  船たちが眠っているよ
  君のほんのわずかな望みを
  満たさんがため
  世界の果てからやって来たのだ。
  沈みゆく陽の光が
  野を、
  運河を、街のすべてを、
  赤紫と黄金色に染め、
  世界は眠りにつく
  暖かい光のなかで。

Linvitation au voyage4


Là, tout n'est qu'ordre et beauté,
Luxe, calme et volupté.

  かの地では、すべてが秩序と美、
  奢侈、静寂と悦楽そのもの。

[注]
1 à loisir「ゆっくりと、心ゆくまで」
2 soleil「太陽」が複数形にされているのは、質の高さなどを示すなど特別な意図による強意の複数形。次行のcielも同様。
3 langue natale「母国語」
4 revêtir qc. de qc.「(…で…の)表面を覆う、外見を与える」。ここでは色名が用いられているので、「…色に染める」という意訳にした。



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