
「ウィスキーが水に」という邦題で日本語でよく歌われる曲があります。原題はDu whisky au vichyで、作詞:クロード・ルメルClaude Lemesle、作曲:アラン・ゴラゲールAlain Goraguer。1977年にセルジュ・レジアニSerge Reggianiが歌い、アルバムVenise n’est pas en Italieに収録されています。
まずはYouTubeに動画がなかったので、あらたに作ってアップしました。また、邦題が納得できません。de…à…は、場所あるいは時間に関し「…から…へ」の意味で、ここでは時間的に、ウィスキーを飲むような時間帯からヴィシー水(ミネラルウォーターの代名詞)を飲む時間帯まで、すなわち、歌詞に出てくるde minuit à midi「真夜中から正午まで」を言い換えて表現しています。ですから、「ウィスキーからヴィシー水まで」と、邦題をあらためました。
女性名詞であるnuit「夜」をひとりの女性として、「彼女」との深い関わりをあらわしています。フランス語ならではの発想で、solitude「孤独」やliberté「自由」が伴侶とされたりします。私のお相手の男性はvin「ワイン」かな。
Du whisky au vichy ウィスキーからヴィシー水まで
Serge Reggiani セルジュ・レジアーニ
Quand le soleil, comme une bulle
Qu´un enfant crève, s´est éteint
Et qu´on redevient noctambule
On se sent bien
Quand les lumières qui s´allument
Ne brillent plus que tamisées 注1
On sent le chagrin et le rhume
S´amenuiser
太陽が、子供が壊す
シャボン玉のように、消えた時
そして俺たちがまた夜行性になる時
俺たちは元気になる
灯る明かりが
ぼんやりとしか輝かなくなる時
俺たちは悲しみと風邪とが
弱まるように感じる
Crois pas que ce soit le revers
De ce décor où l´on s´ennuie
Et qu´on ravale de travers 注2
Non, c´est la vie
Alors les faibles ont des forces
Alors les laids deviennent beaux
Le monde est bien dans son écorce
Dans sa peau
それが僕たちがうんざりしつつ
苦々しくも堪えている
この生活の裏面だと思ってくれるな
いや、それが生さ
そのとき弱い者たちが力を持つ
そのとき醜い者たちが美しくなる
世界はその樹皮の内側で
その皮膚の内側で健全だ
De minuit à midi
Du whisky au vichy
De minuit à midi
Du whisky au vichy
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで

Qu´on sorte seul ou bien en bande 注3
On n´est que l´amant de la nuit
Et comme c´est elle qui commande
On obéit
Elle nous invite à l´arroser
Mais comme elle boit pas très souvent
On a vite fait de se payer 注4
Un foie géant
俺たちはひとりであるいは仲間といっしょにお出かけさ
俺たちは夜の恋人にすぎない
そして命令するのは彼女すなわち夜だから
俺たちは従うんだ
彼女は私に酒を注いでよと俺たちを誘う
だが彼女はあまりしょっちゅうは飲まないから
俺たちは早々と
でかい肝臓を持つ羽目に陥った
Si on la trompe, elle s´en fait pas
Le nuit sait bien que toute la vie
C´est avec elle qu´on finira
Toujours la nuit
Alors quand on la fait attendre
Pour un jour de juin ordinaire 注5
Elle nous murmure d´un air tendre:
"Attend l´hiver..."
もしも俺たちが彼女を欺いても、彼女は欺かない
夜はよく知っているんだ 一生
俺たちは最後は彼女といっしょだと
つねに夜さ
ある6月の平日に
俺たちが彼女を待たせると
彼女は優しい調子でささやく:
「冬をお待ちなさい…」と
De minuit à midi
Du whisky au vichy
De minuit à midi
Du whisky au vichy
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで

La nuit, c´est la folie du sage
C´est la magie du maladroit
La porte ouverte de la cage
Où tu as froid
Ça rime avec ennui parfois
Comme amour rime avec toujours
Autant te dire que ça se voit 注6
Pas tous les jours
夜、それは分別ある者の錯乱だ
不器用な者のマジックだ
檻の扉は開かれていて
そこであんたは寒さに震えている
「夜」は時には「飽きる」と韻を踏む
「情事」が「常時」と韻を踏むように
こんな風だとあんたに言っていいだろう
毎日のことじゃないが
C´est comme une vierge qui n´a
Jamais vraiment su se garder
Et qui retrouve toujours sa
Virginité
La nuit, c´est vrai qu´on fait la vie
Jusqu´au moment où l´on s´endort
Jusqu´au moment où pour la nuit
On fait le mort... 注7
それは身を守ることを
ほんとうにまったく知らずにいて
自分の処女性をいつも取り戻す
処女のようだと
夜に、俺たちは生を営んでいるんだ
眠りにつくその時まで
夜にそなえて身を潜める
その時まで
De minuit à midi
Du whisky au vichy
De minuit à midi
Du whisky au vichy
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
真夜中から正午まで
ウィスキーからヴィシー水まで
[注]
1 tamisé本来は「篩いにかけられた、濾過された」の意味だが、「(光などが)和らげられた」という意味でも用いられる。
2 queは、oùの代用。de traversは本来は「斜めに、曲がって」という意味だが、「敵意を込めて」あるいは「間違って」という意味合いでも用いる。
3 en bande「一団となって、群れをなして」
4 se payer qc.「自分に…を奮発する」→(皮肉で)「…を被る、…を得る羽目になる」
5 juin「6月」の21日ごろは夏至で、一年のうちで日の出から日没まで時間が最も長く、フランスでは10時近くにならないと日が暮れず夜が短い。
6 autant dire que…「…といっても同じことだ、…も同然だ」と同様の表現。
7 faire le mort「死んだふりをする、じっと身を潜める」
Comment:1
コメント
セルジュ・レジアーニ いいですねぇ❤
そして、夜 それは分別ある者の錯乱だ
という言葉も、とってもいいなぁ。
今日も素敵なシャンソンを ノニーさんありがとう♪
そして、夜 それは分別ある者の錯乱だ
という言葉も、とってもいいなぁ。
今日も素敵なシャンソンを ノニーさんありがとう♪
mimiha
2016.02.07 10:21 | 編集
