2016
02.16

異国の人Le métèque

Georges Moustaki Le métèque


前回の「異国の人L'étranger」と同じ邦題の曲があります。ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiの「異国の人Le métèque」です。彼の曲はすでに何曲も取り上げていますが、この曲は、彼の一番の代表曲で、1968年に当初ピア・コロンボPia Colomboのために作り、69年にムスタキ本人も歌いました。メテックmétèqueとは、古代ギリシャ語のメトイコスμετοίκος (metoikos)から派生した、市民権のない在留外人という意味の言葉で、無国籍者の存在表明のような題名ですが、歌詞内容は、彼自身のありようを表現しつつ、個人的な恋を告白しているようです。この曲は、ヒッピー全盛の当時の社会に歓迎され、たいへんにヒットしました。

「彼自身のありようを…」と書きましたので、プロフィールをちょっとご紹介しておきましょう。彼は、ギリシャ系ユダヤ人の両親がエジプトに亡命中、1934年に生まれました。17歳のときにパリに移り住み、曲を書いたりカフェ等で歌ったり、その他のアルバイトをしたりして生活していましたが、1957年にエディット・ピアフEdith Piafに出会い、1年間ほど彼女の愛人となって、「ミロールMilord」など多くの曲を彼女に提供し、その後、イヴ・モンタンYves Montand、ダリダDalida、アンリ・サルバドールHenri Salvadorらも曲を依頼するようになります。自らを、無国籍の「地中海人Méditerranéen」と呼びなし、ブラジルの音楽などを取り入れた多国籍な曲調で、幅広いテーマの曲を作っています。

動画はライブで、コーラスが入っています。



Le métèque      異国の人
Georges Moustaki  ジョルジュ・ムスタキ


Avec ma gueule de métèque
De Juif errant, de pâtre grec
Et mes cheveux aux quatre vents 注1
Avec mes yeux tout délavés
Qui me donnent l'air de rêver
Moi qui ne rêve plus souvent
Avec mes mains de maraudeur
De musicien et de rôdeur
Qui ont pillé tant de jardins
Avec ma bouche qui a bu
Qui a embrassé et mordu
Sans jamais assouvir sa faim

  僕のよそ者のツラ
  彷徨えるユダヤ人の、ギリシャの牧人のツラ
  そして風になびく僕の髪
  僕の薄青色の目
  それは夢を見ているように思わせる
  僕はもうそんなにしょっちゅう夢を見ないが
  僕の畑泥棒の、放浪者の手
  それはたくさんの庭を荒らした
  僕の口 それは酒を飲んだし
  キスをしたし噛みもしたが
  飢えが満たされたことはなかった

Le métèque1


Avec ma gueule de métèque
De Juif errant, de pâtre grec
De voleur et de vagabond
Avec ma peau qui s'est frottée 注2
Au soleil de tous les étés
Et tout ce qui portait jupon
Avec mon cœur qui a su faire
Souffrir autant qu'il a souffert
Sans pour cela faire d'histoires
Avec mon âme qui n'a plus
La moindre chance de salut
Pour éviter le purgatoire

  僕のよそ者のツラ
  彷徨えるユダヤ人の、ギリシャの牧人の
  泥棒の浮浪者のツラ
  僕の肌
  それはすべての夏の太陽に刃向かい
  そしてスカートをはいた者たちに手を出した
  僕の心 それは自分が苦しんだ分だけ
  ひとを苦しめることを知ったけれど
  それでなにか物語を作り出したわけじゃない
  僕の魂 それはもう
  煉獄を避けるための
  わずかな救済のチャンスも持っていない

Avec ma gueule de métèque
De Juif errant, de pâtre grec
Et mes cheveux aux quatre vents
Je viendrai, ma douce captive
Mon âme sœur, ma source vive 注3
Je viendrai boire tes vingt ans
Et je serai prince de sang 注4
Rêveur ou bien adolescent
Comme il te plaira de choisir
Et nous ferons de chaque jour
Toute une éternité d'amour
Que nous vivrons à en mourir

  僕のよそ者のツラ
  彷徨えるユダヤ人の、ギリシャの牧人のツラ
  そして僕の風になびく髪
  行くよ、僕の優しい捕虜よ
  わが伴侶よ、わが湧き出る泉よ
  僕は君の二十歳の若さを飲みに行くよ
  そして僕は君の好みのままに
  血の気の多い王子に
  夢みる人にあるいは若い男になるだろう
  そして僕たちは毎日を
  永遠に続く愛の時間に変え
  死ぬまでその愛を生きるだろう

Le métèque2


Et nous ferons de chaque jour
Toute une éternité d'amour
Que nous vivrons à en mourir

  そして僕たちは毎日を
  永遠に続く愛の時間に変え
  死ぬまでその愛を生きるだろう

[注]
1 quatre ventsは「四方位、東西南北」をあらわすが、このaux quatre ventsは、髪が伸び放題で風になびくがままの状態だと言っている。
2 se frotter à「刃向かう、(危ないことに)手を出す」
3 âme sœur「分身、伴侶、相性のいい人」
4 prince du sangは「国王の血筋を引く王子(子供、兄弟、甥)」だがduではなくdeなので異なる意味。





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