
アンナ・プルクナルAnna Prucnalという女優・歌手は1940年にポーランドで生まれました。父親がジプシー系ユダヤ人の外科医で、ナチスによって殺され、ポーランド・リトアニア共和国国王スタニスワフ・レシチニスキ Stanisław I Leszczyński(ロレーヌ公)の血を引く母親が二人の娘を育てました。アンナはピアノと歌唱を学んだのち女優となり、22歳で映画デビュー。30歳の時にパリに移り2度目の結婚をし、ブレヒトBertolt Brechtなどの演劇の舞台に立ちました。そして、38歳になってから歌手としての活動も始め、1979年にファースト・アルバムRêve d'Ouest, rêve d'Estをリリース。これには祖国ポーランド語の歌と、ポーランド語やロシア語の歌をフランス語に翻案したもの、フランス語のシャンソンなどが収録されています(iTuneで買えます)。アンナは、何度か来日し、日本でLPも出しています。激しい歌唱。全身全霊で歌う歌手です。
彼女に関してはこちらに詳しい解説があります。
アンナのファースト・アルバムに「今夜は帰れないJe ne pourrai pas venir chez toi ce soir」という曲があり、ポーランド語で歌っていますが歌詞カードはフランス語です。そのポーランド語の歌Dzis do ciebie przyjsc nie mogeは「パルチザンの子守唄」とも呼ばれ、第2次世界大戦中の1943年に、ナチスに抵抗するレジスタンス運動の闘士であったStanisław Magierskiにより作詞・作曲されたもので、死を覚悟で戦いに行く男が、女に別れを告げる悲しい歌です。オズワルド・ダンドレアOswald d’Andoréaが編曲。フランス語の作詞はアンナと夫のジャン・マイヤンJean Maillandとされています。今回、歌詞カードのフランス語の歌詞を訳しましたが、音符と合わせづらいので、歌うための歌詞ではなく、ポーランド語の仏訳ではないかとも思われます。
アンナの歌はYou Tubeに何曲かありますが、この曲はなかったので、私が作りました。ポーランド語です。
歌詞はフランス語でご紹介しましょう。
Je ne pourrai pas venir chez toi ce soir 今夜は帰れない
Anna Prucnal アンナ・プルクナル
Je ne pourrai pas venir chez toi ce soir
Je dois aller dans l’ombre des forêts
Ne reste pas à la fenêtre à me regarder partir
Ton regard ne ferait que se noyer dans le noir
Mon amour tu dois savoir
Qu’il me faut dormir dans cette forêt
Je ne peux plus rester
Mes camarades m’attendent
今夜は君の家に帰れない
僕は森陰に行かねばならない
窓辺で僕を見送らないでくれ
君の視線は闇のなかをさ迷うだけだろう
いとしい人、わかっておくれ
僕はこの森で眠らなきゃならないんだ
もう行かなければ
仲間たちが僕を待っている

La lune s’est cachée derrière les arbres
Quelque part dans la campagne
Les chiens aboient
Ne crois surtout pas que je rêve à une autre
Quand je reviendrai te voir
Peut-être en plein jour ou en pleine nuit
Ce sera comme un paradis
Je t’embrasserai tant et tant
月が木々の陰に隠れた
野原のどこかで
犬たちが吠える
僕がほかの女を想うなどとけっして思わないでくれ
僕が君に会いに戻って来たら
きっと日がな一日
まるで天国のようで
僕は君にいっぱいいっぱい
キスするだろう
Si je ne reviens pas au printemps
Mon frère sèmera mes terres
Mes os se couvriront de mousse
Ils nourriront la terre
Au petit matin tu iras dans le champ
Et tu mettras tes bras autour d’une gerbe de blé
Tu l’embrasseras comme un amant
Car je serai la vie de cette gerbe de blé
もしも春になっても僕が戻って来なかったら
弟が僕の土地に種を撒くだろう
僕の骨は苔に覆われ
土を肥やすことだろう
朝早く君は畑に行き
麦の束をその腕で
恋人のように抱くだろう
僕はその麦の生命となっているだろうから

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コメント
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いつも、コメントありがとうございます。もっぱら自分の好みと思いつきで選曲していますが、素敵な曲だけでなく、時々は変な曲(?)も取り上げることでしょう。よろしくお付き合いください。
朝倉ノニー
2016.02.09 08:23 | 編集

この歌の内容は素晴らしいですね。
どこで聞いたのか思い出せないけれど、聞いた記憶がありました。
翻って、日本の歌では、ざわわ ざわわ で始まるサトウキビ畑を思い出しました。
昨日のレジアニも良かったし、今日のも、大人のという言い方はおかしいかな? そんな歌が普通にラジオからながれて欲しいなぁと、改めて思いました。ノニーさんありがと^^
どこで聞いたのか思い出せないけれど、聞いた記憶がありました。
翻って、日本の歌では、ざわわ ざわわ で始まるサトウキビ畑を思い出しました。
昨日のレジアニも良かったし、今日のも、大人のという言い方はおかしいかな? そんな歌が普通にラジオからながれて欲しいなぁと、改めて思いました。ノニーさんありがと^^
mimiha
2016.02.08 09:57 | 編集
