2016
01.16

いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのNon Monsieur, je n'ai pas vingt ans

Juliette Gréco Non Monsieur, je nai pas vingt ans


ジュリエット・グレコJuliette Grécoの「いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのNon Monsieur, je n'ai pas vingt ans」は日本語では結構歌われている曲です。でもこれも通例に違わず、日本語の歌詞内容は原曲の歌詞内容とあまり合致していません。
作詞:アンリ・グゴーHenri Gougaud、作曲:ジェラール・ジュアネストGérard Jouannest。1977年のアルバムGréco chante Jacques Brel, Henri Gougaud, Pierre Seghersに収録。
グレコは電話での問いに答えて、Non monsieur, je n'ai pas vingt ans「いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのよ」と答えたことから、アンリ・グゴーHenri Gougaud がすぐさまこの曲を作詞したという逸話があります。
グレコは、第二次世界大戦後の1946年すなわち数え年で二十歳のときにモンペリエからパリのサン=ジェルマン=デ=プレQuartier Saint-Germain-des-Présにやって来ました。そこは当時、パリの知的・文化活動の一大中心地で、哲学者のジャン=ポール・サルトル Jean-Paul Sartre、シモーヌ・ド・ボーヴォワールSimone de Beauvoir、映画監督のジャン=リュック・ゴダールJean-Luc Godard、フランソワ・トリュフォーFrançois Truffaut 、詩人のジャック・プレヴェールJacques Prévert、歌手・小説家のボリス・ヴィアンBoris Vian、彫刻家のアルベルト・ジャコメッティAlberto Giacometti など、多くの文化人が Les Deux Magots や Café de Floreなどのカフェやナイトクラブに集まり、連日連夜、前衛的な芸術論や哲学論に明け暮れました。
アラン・スーションAlain Souchonの「リヴ・ゴーシュRive Gauche」はその頃のことを描いた曲で、グレコも歌詞に登場しています。前回の「サンジェルマン・デ・プレのランデヴーRendez-vous à Saint-Germain-des-Prés」もその頃のミュージシャンのことが描かれ、これにもグレコの名前が出てきましたね。今回のグレコの曲は、その頃の二十歳の自分を振り返りつつ、「もう私は二十歳じゃないの」と言っています。グレコは、「あとには何もないIl n'y a plus d'après」で、サン=ジェルマン=デ=プレの様変わりを歌っていましたが、今回は、自分も当時の年齢じゃなくなった…けど、「私という存在」は変わらず、「私は私」であり続けていると言っているのです。



Non Monsieur, je n'ai pas vingt ans  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないの
Juliette Gréco               ジュリエット・グレコ


Non Monsieur, je n'ai pas vingt ans
Vingt ans, c'est l'âge dur
Ce n'est pas le meilleur des temps
Je sais, je l'ai vécu.
J'ai dansé sur quelques volcans,
Troué quelques souliers
Avec mes rêves et mes tourments
J'ai fait mes oreillers.
Et je dis encore aujourd'hui :
Je suis comme je suis. 注1

  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないのよ
  二十歳、それは厄介な年頃
  最良の時期なんかじゃない
  そうよ、私はその時期を生きたわ。
  私は火山の上で踊り、
  靴に穴を開けた
  夢と悩みを
  枕にした。
  そして今また言うの:
  私は私よ、と。

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(Refrain:)
Oui, je me souviens des jours,
Quand les jours s'en allaient
Comme un rêve à l'envers.
Oui, je me souviens des nuits,
Quand les oiseaux parlaient
Sous la plume à Prévert.

  ええ、思い出すわ、
  日々が夢のように破茶滅茶に
  過ぎて行った日々を。
  ええ、思い出すわ、
  プレヴェールのペンのもとで
  鳥たちが語っていた夜々を。

Non Monsieur, je n'ai pas vingt ans,
Vingt ans, c'est tout petit
Moi, je n'ai jamais eu le temps
D'avoir peur de la nuit.
Ma maison est un soleil noir
Au centre de ma tête,

  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないの
  二十歳、それはまったく子供よ
  私はね、夜を怖がる
  暇なんかなかった。
  私の住処は
  頭のまん中にある黒い太陽なの

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J'y fais l'amour avec l'espoir
Et l'âme des poètes.
Les poètes sont des enfants,
Des enfants importants.

  私はそこで希望と
  詩人たちの魂と恋をした。
  詩人たちは子供よ、
  ご立派な子供よ。

(Refrain)

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Moi, Monsieur, quand j'avais vingt ans
J'étais déjà perdue,
Perdue, la rage entre les dents, 注2
Superbement perdue !
Moi, je dansais avec des morts
Plus vifs que les vivants
Et nous inventions l'âge d'or
Au seuil des matins blancs.
J'ai toujours, chevillé au corps 注3
Le même soleil levant.

  私はね、ムッシュ、二十歳のとき
  私はもう逸脱した、
  逸脱したの、口には出さない熱情を持って、
  みごと逸脱したのよ!
  私はね、ダンスしたわ
  生きている人たちより元気な死者たちと
  そして私たちは黄金時代を築いた
  ほの白い夜明けに。
  私にはずっと、この身にしっかりと
  昇る太陽が備わっている。

Non, Monsieur, je n'ai pas vingt ans !

  いいえムッシュ、私は二十歳じゃないの

[注]
1 グレコが歌っている「わたしはわたしよJe suis comme je suis」の歌詞はジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩。
2 entre les dents「歯の間に」は不明瞭にものを言うことなどを形容する表現。
3 chevillé「ボルトで締められた」。chevillé au corps「根っからの」


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