
コラ・ヴォケールCora Vaucaireの「フレデFrédé」という曲は、ミッシェル・デルペッシュMichel Delpechの「ロレットの店でChez Laurette」とちょっと似た内容の歌詞で、昔よく通っていたカフェとそのオーナーの思い出を綴っています。

そのカフェとは、モンマルトルの有名なシャンソン喫茶「ラパン・アジールAu Lapin agile」 で、オーナーとは、フレデリック・ジェラールFrédéric Gérard。 その店の建物は1795年に建てられ、開業したのは1860年で、最初Au rendez-vous des voleurs(泥棒たちのたまり場)という名前でしたが、1869年ごろからはCabaret des Assassins(殺し屋たちのキャバレー)と呼ばれました。オーナーの息子が盗賊に殺されたためとか。その後1875年に、画家のアンドレ・ジルAndre Gillがフライパンの上で跳ねるウサギの絵を看板として描き、「ラパン・アジールAu Lapin agile」という現在の名前になりました。これは「ジルのウサギ Le Lapin à Gill」をもじっているのです。店のオーナーは何度か代わり、1903年からフレデリック・ジェラールFrédéric GérardすなわちフレデFrédéが引き継ぎました。彼はもとは青果商で、ロビンソン・クルーソーのように何匹もの動物を引き連れてやってきました。ロバ、イヌ、、サル、カラスそして白ネズミです。そして彼は、店に来る貧乏な芸術家たちに、歌や絵や詩と引き換えに食べ物や飲み物を振舞ったそうです。また、彼自身、チェロやギターの弾き語りで歌いました。
前奏は「モンマルトルの丘La Complainte de la butte」そのものです。1946年、作詞:ミッシェル・ヴォケールMichel Vaucaire、作曲:Daniel White。「枯葉Les feuilles mortes」と同じアルバムLa dame blanche de Saint-Germain-des-Préに収録されています。
Frédé フレデ
Cora Vaucaire コラ・ヴォケール
Une rue qui monte et zigzague
Un petit café tout là-haut,
Juste à côté du terrain vague 注1
Où fut assassiné Nono...
Ça faisait louche à la nuit noire
Ce bistrot au fond du jardin!
On s´en fichait, on venait boire,
Et le patron chantait si bien...
ジグザグの登り道
てっぺんのあそこにある小さなカフェ、
空き地のちょうど隣
そこでノノ…が殺されたんだ
夜の闇のなかでいかがわしげに見えた
庭の奥のこのビストロは!
みんなは気にしなかった、みんなは飲みにやって来た、
そしてマスターはとても上手に歌った…

{Refrain:}
Frédé, joue-moi sur ta guitare
La belle chanson que tu sais
Mais oui, Frédé, la belle histoire
Où l´on n´oublie pas le passé...
Frédé, joue-moi sur ta guitare
L´histoire où l´on s´aime toujours
Ce soir, je me sens le cœur lourd :
J´ai besoin de chanson d´amour!
フレデ、私のためにあなたのギターで弾いてよ
あんたが知ってる美しい歌を
そうよ、フレデ、
過去を忘れないための美しい物語を…
フレデ、私のためにあなたのギターで弾いてよ
私たちがずっと愛し合うための物語を
今夜は、気持ちが沈んでるの:
私には愛の歌が必要なのよ!

On venait là, toujours les mêmes,
Une bande assez mélangée
Y avait des rapins, des bohèmes,
Des filles et des gars du quartier
On chantait la nuit tout entière
Et l´on buvait pas mal aussi;
La vie nous semblait moins amère;
Et Frédé nous faisait crédit... 注2
みんなはそこにやって来た、いつも同じだった、
けっこうごちゃまぜの集団
へぼ絵かきたち、ボヘミアンたち、
その界隈の娘たちや若者たち
みんなは夜通し歌っていた
そしてまたみんなは大いに飲みもした;
人生はさほど辛くないように私たちには思えた;
そしてフレデは、私たちの勘定をツケにしてくれた…
{Refrain}
C´est loin, mais je revois, si blanche,
Ta barbe à travers la fumée
Et ton visage qui se penche,
On dirait que tu vas chanter...
Une douce émotion m´oppresse,
Mais je suis en train de rêver...
Tous mes souvenirs de jeunesse
Sont mêlés à ton nom, Frédé...
それは遠い昔、でも私にはまた見える、真っ白な、
あなたの顎ヒゲが煙の向こうに
そして傾いだあなたの顔が、
まるであなたは歌い出しそう…
熱い思いが私の胸を締め付ける、
でも私は夢を見ているんだわ…
私の青春の思い出は
あなたの名前と交じり合っている、フレデ…

Frédé, où donc est ta guitare?
Et la chanson que j´aimais tant
Lorsque j´avais des idées noires,
Et ça m´arrivait bien souvent...
Frédé, l´existence est bizarre
Beaucoup de ceux que j´ai aimés
Sont loin déjà, dans le passé...
Où sont donc mes vingt ans, Frédé?
フレデ、あなたのギターはどこなの?
私が大好きだった歌は?
私が暗い気持ちを抱いたとき、
しばしばそれが浮かんできた…
フレデ、存在って不思議なものね
私が愛した多くの人たちは
もう遠くに行ってしまった、過去のなかに…
私の二十歳の青春はいったいどこに、フレデ?
[注]
1 terrain vague「空き地」
2 faire crédit「勘定を付けにする」
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