2015
10.29

いいえ、私は何も悔やまない(水に流して)Non, je ne regrette rien

Édith Piaf Non, je ne regrette rien


前回に引き続きエディット・ピアフÉdith Piafです。1960年に、ミッシェル・ヴォケールMichel Vaucaireが作詞し、シャルル・デュモンCharles Dumontが作曲し、ピアフが歌うNon, je ne regrette rienを、今回取り上げます。「いいえ、私は何も悔やまない」という直訳の題名を新たに付け、「水に流して」という既成の邦題を添えます。

その前年、ピアフはニューヨーク・ツアーの最中に舞台で倒れ、消化器の潰瘍のため複数の手術を受けたのち、パリに戻りました。またこの時は、「ミロールMilord」を作詞したジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiと別れたことによる心の痛手も抱えていました。過去を一掃し再出発する決意を示すこの曲の背景には、そうしたピアフ自身の状況があったのです。

この曲をフランス語で歌うには、日本人には難しいフランス語の<r>の発音をマスターする必要があります。というより、この曲はその練習材料にぴったりです。
<r>の前にまず<l>から。<l>は舌先を上の前歯の後ろの硬口蓋に、日本語の<ラリルレロ>の場合より鋭く押し付けます。
<r>は母音の発音と同様、舌先は下の前歯の後ろに残します。そして舌の奥のほうを持ち上げるのです。
つまり、<la>と言うためには、舌先は上から下に瞬時に移動しますが、<ra>の場合は舌先は上下しません。
日本語の<ガギグゲゴ>の場合は舌の奥を軟口蓋にくっつけ、<ハヒフヘホ>はくっつけません。<r>はその中間をねらうといいようです。ちょうど「うがい」をするような感じ。



Non, je ne regrette rien  いいえ、私は何も悔やまない(水に流して)
Édith Piaf          エディット・ピアフ


Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
Ni le bien qu’on m’a fait
Ni le mal tout ça m’est bien égal!

  いいえ!まるで何も
  いいえ!私は何も悔やんではいない
  ひとが私にした良いことも
  悪いこともみな私にとっては同じこと

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Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
C’est payé, balayé, oublié 
Je me fous du passé!

  いいえ!まるで何も
  いいえ!私は何も悔やんではいない
  贖い、一掃し、忘れた
  過去なんかどうでもいい

Avec mes souvenirs
J’ai allumé le feu
Mes chagrins, mes plaisirs
Je n’ai plus besoin d’eux!

  過去の思い出をくべて
  私は火を起こす
  悲しかったこと、うれしかったこと
  そんなものはもう要らない

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Balayées les amours
Avec leurs trémolos
Balayés pour toujours
Je repars à zéro

  過去の恋を
  そして震える気持ちもいっしょに一掃した
  永遠に消し去り
  私はゼロから再出発する

Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
Ni le bien, qu’on m’a fait
Ni le mal, tout ça m’est bien égal!

  いいえ!まるで何も
  いいえ!私は何も悔やんではいない
  ひとが私にした良いことも
  悪いこともみな私にとっては同じこと

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Non! Rien de rien
Non! Je ne regrette rien
Car ma vie, car mes joies
Aujourd’hui, ça commence avec toi!

  いいえ!まるで何も
  いいえ!私は何も悔やんではいない
  だって私の人生は、だって私の喜びは
  いま、あなたとともに始まるのよ!

[注] balayerは「掃除する、追い払う」という意味で、過去の恋をbalayerするというのを、「清算する」と訳すことが多いが、どうも形のうえでケリをつけるようなニュアンスになってしまう。邦題の「水に流して」を当てはめることを考えたが、考え直して、「消し去る、一掃する」に変更した。


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