2014
09.28

仲間を先に(パリジャン気質)Les copains d'abord

Georges Brassens


今回取り上げるのはジョルジュ・ブラッサンスGeorges Brassens(1921~1981)の代表作のひとつで、ジュール・ロマンJules Romainsの小説からの映画「Les copains(仲間たち)」の主題歌として1964年にブラッサンスが作詞・作曲して歌った曲「仲間を先に(パリジャン気質)Les copains d'abord 」です。
パリという街をひとつの船に譬え、その船の名前が「Les Copains d'abord(仲間を先に)」で、その船に乗り合わせた仲間、つまりパリの街に住む人々は、その船の名が示すとおり、「自分より仲間を先に」という気質(かたぎ)を持つんだという内容です。この歌のメッセージはなにもパリに限ったことではなく、日本という国、そして地球全体にあてはめることができるものです。のちに、バルバラBararaほか何人かの歌手も歌っています。

ブラッサンスは、レオ・フェレLéo Ferré、ジャック・ブレルJacques Brelとともに、60年代の3大歌手といわれます。また、レオ・フェレと同様、アナーキストを自認するシンガー・ソングライターです。ブラッサンスのあだ名はゴリラ、その由来は同名のシャンソン「ゴリラLe Gorille」で、この歌には、単純なメロディーと風変わりな表現の陰に死刑廃止へのメッセージが込められていて、彼の歌に対する態度が端的に示されています。
彼は南仏のセートで石屋の息子として生まれましたが、文学好きの彼は家業を嫌い、1940年の大戦直前、叔母を頼ってパリに出てきました。そして叔母の家にあった古いピアノを使い、自作の詩にメロディーをつけて作曲をし始めました。まもなくパリはナチス・ドイツに占領され、ブラッサンスも強制労働に駆り出されます。そこから逃げ出して隠れ住みながら音楽を作る際、ピアノが使えず、独学でギターを弾き始めました。ギターの弾き語りを始めたのはボブ・デイランBob Dylanより10年も早かったといいます。
1952年に歌手のパタシュウPatachouに出会い、その店で歌わせてもらうようになりましたが、そこではまったく売れず、パタシュウの紹介でトロワ・ボーデという店に出るようになってから人気が急上昇しました。そして、1954年、ディスク大賞を受賞。
健康面では、いろいろ問題が生じ、腎臓結石、肝臓の3回の手術を経て、60歳の若さで大腸ガンで亡くなりました。

私は実は、ブラッサンスの曲の良さがあまり分かりませんでした。メロディーが単調に思え、おやじっぽく聴こえ…。でも、この曲を聴いて、理屈抜きに美しい曲だと感じました。



Les copains d'abord            仲間を先に(パリジャン気質)
Georges Brassens             ジョルジュ・ブラッサンス


Non, ce n'était pas le radeau 注1
De la Méduse, ce bateau
Qu'on se le dise au fond des ports 注2
Dise au fond des ports
Il naviguait en père peinard
Sur la grand-mare des canards
Et s'app'lait les Copains d'abord 注3
Les Copains d'abord

  いや、それは港々の奥で密かに思われているような
  メディス号の筏のたぐいじゃなかった、この船は
  アヒルの沼を
  のんびり父さん風に航行する船
  その名はレ・コパン・ダボールだった
  レ・コパン・ダボール

le radeau De la Méduse


Ses fluctuat nec mergitur 注4
C'était pas d'la littérature
N'en déplaise aux jeteurs de sort
Aux jeteurs de sort
Son capitaine et ses mat'lots
N'étaient pas des enfants d'salauds
Mais des amis franco de port 注5
Des copains d'abord

  「たゆたえど沈まず」の標語
  それは空文句じゃなかった
  呪う者たちには気に食わないだろうが
  呪う者たちにはね
  船長も水夫も
  げす野郎じゃなく
  信じあえる仲間だった
  「仲間を先に」気質の

fluctuat_nec_mergitur.png

C'étaient pas des amis de luxe
Des petits Castor et Pollux 注6
Des gens de Sodome et Gomorrhe 注7
Sodome et Gomorrhe
C'étaient pas des amis choisis
Par Montaigne et La Boétie 注8
Sur le ventre ils se tapaient fort
Les copains d'abord

  それはかわいいカストルとポリュクスのような
  優れた仲でもないし
  ソドムとゴモラもどきの
  ソドムとゴモラもどきの腐ったやからでもなかった
  モンテニューやラ・ボエシーの
  お眼鏡にかなう仲間でもなかった
  腹をポンと叩いたのさ
  「仲間を先に」と

Castor et Pollux


C'étaient pas des anges non plus
L'Évangile, ils l'avaient pas lu
Mais ils s'aimaient toutes voiles dehors 注9
Toutes voiles dehors
Jean, Pierre, Paul et compagnie 注10
C'était leur seule litanie 注11
Leur credo, leur confiteor
Aux copains d'abord

  もちろん天使たちでもなかったし
  福音書、そんなの読みやしないが
  順風満帆に 愛し合った
  順風満帆にね
  ジャン(ヨハネ)とピエール(ペテロ)とポール(パウロ)と仲間たちにとって
  それが彼等の唯一のお題目だった
  「仲間を先に」への
  彼らの信仰宣言、彼らの告解が

Au moindre coup de Trafalgar 注12
C'est l'amitié qui prenait l'quart 注13
C'est elle qui leur montrait le nord 注14
Leur montrait le nord
Et quand ils étaient en détresse
Qu'leurs bras lançaient des S.O.S.
On aurait dit des sémaphores 注15
Les copains d'abord

  トラファルガー的危機がちょっとでも起こりゃ
  当直に就いたのは友情だ
  舵をとったのは友情だ
  舵をとったのは
  そして彼らが遭難した時
  SOS信号を打った時には
  「仲間を先に」が
  船舶信号みたいだった

un coup de Trafalgar


Au rendez-vous des bons copains
Y avait pas souvent de lapins
Quand l'un d'entre eux manquait à bord
C'est qu'il était mort
Oui, mais jamais, au grand jamais
Son trou dans l'eau n'se refermait
Cent ans après, coquin de sort
Il manquait encore

  仲間うちが集まる時に
  すっぽかす者はいなかった
  その内のひとりが甲板に現れないときは
  そいつは死んだってことだった
  ああ、だが決して、絶対に
  ヤツが海水に空けた穴はふさがらなかった
  百年たっても、ドジ野郎
  あいつがいなくて淋しいぜ

Des bateaux j'en ai pris beaucoup
Mais le seul qui ait tenu le coup 注16
Qui n'ait jamais viré de bord 注17
Mais viré de bord
Naviguait en père peinard
Sur la grand-mare des canards
Et s'app'lait les Copains d'abord
Les Copains d'abord

  あまたの船に乗っては来たが
  最後まで残る唯一の船だ
  決して針路を変えることのない船
  針路を変えることのない
  アヒルの沼を
  のんびり父さん風に航行する船
  そしてその名はレ・コパン・ダボール
  レ・コパン・ダボール

[注] 注には、重要語句の説明を加えたが、その解釈に関し、「ジョルジュ・ブラッサンス全集」のページを参照させてもらった。
1 ceはce bateau。le radeau De la Méduse「メデューズ号の筏」1816年に難破したメデューズ号の乗船者達150名は筏で避難したが、13日後に発見された筏には15名しか生存していなかった。生き残りをかけて水と食料の奪い合い、カニバリズムまでが行われ、狂気に陥った者さえいたという。ルーブル美術館にジェリコー作の絵が掛かっている。仲間意識の高いce bateauと正反対のものとして出されている。
2 queの先行詞はle radeau De la Méduse。se dire「思う」。代名詞leと次々行のilはce bateau。au fond des portsはau fond du cœur「心の中では」を掛けた表現。
3 Les Copains d'abord「仲間を先に」これが船の名前だとここでは言っている。各節の最後に繰り返される。船の名前の場合はCopainsと大文字で表記されている(訳語は「レ・コパン・ダボール」とした)。語の意味そのものの場合はcopainsと小文字になり、冠詞がdes,les,auxと変えられている(訳語としては「仲間を先に」に適宜言葉を加えた)。
4 fluctuat nec mergitur「たゆたえど沈まず」ラテン語で、パリ市の標語。セーヌ河に浮かぶシテ島に発祥したパリは帆船を市の紋章とし、その紋章にはこの言葉が刻まれている。
5 franco(franc) de port=exempt de port「送料免除」あるいはpayé par l’expéditeur「差出人払い郵便」。すなわち、「気兼ねなく信頼し合える」という意味でdes amisを形容している。port「港」の語を入れていることがポイントで、各所で船に関連した語を多く用いている。
6 Castor et Pollux「カストルとポリュクス」ギリシャ神話で、白鳥に姿を変えたゼウスがレダを誘惑し、レダが卵を産み、そこから双子として生まれた彼らはディオスクロイすなわちゼウスの子と呼ばれる。弟ポリュクスの父親はゼウスだが兄カストルの父親はレダの夫のテュンダレオースで死ぬ運命の人間であったので、ポリュクスは自分の不死性を兄に半分分け与え、双子は、1日(一説では1年)の半分は神として天上で過ごし、残りの半分は地上で人間として今も楽しく暮らしているという。彼らに因んで名づけられた双子座Gemini(β星がポルックス、α星がカストル)は兄弟愛の象徴とされる。航海の神ともされる。ラモーJean-Philippe Rameauは彼らをテーマとしたオペラを作っている。
7 Sodome et Gomorrhe「ソドムとゴモラ」旧約聖書の創世記に出て来る2つの都市。淫楽に耽る住民が神の怒りに触れ、硫黄と火の雨で焼き滅ぼされた。プルーストValentin Louis Georges Eugène Marcel Proustの「失われた時を求めてÀ la recherche du temps perdu」の中に両者の名をそれぞれ冠した2章があり、前者は男性の後者は女性の同性愛を意味している。
8 Montaigne「モンテーニュ」 (1533-1563)フランスの作家、思想家・「随想録Les Essais」で有名。La Boétie「ラ・ボエシー 」(1530-1563)フランスの作家、詩人。モンテニューの友人。「随想録」にその詩を取り上げた章あり。
9 toutes voiles dehors「順風満帆に」すなわちbeaucoupと同義。各所で船に関連した語を多く用いている。
10 Jean, Pierre, Paulフランス人の男性の名によくあるジャン、ピエール、ポールがここでは仲間の名として用いられているが、これらの名はもともと新約聖書に登場する聖者の名「ヨハネ、ペテロ、パウロ」。
11 Les copains d'abordに対してのLeur credo「信仰宣言」とleur confiteor「告解」がleur seule litanie「お題目、繰り言」だということである。
12 Trafalgar「トラファルガー」英国のネルソン提督L'amiral Nelsonが1805年にフランス、スペインの連合艦隊をジブラルタル海峡付近で全滅させた海戦の名。フランス人にとって、un coup de Trafalgar「トラファルガーの一撃」といえば「晴天の霹靂、予期せぬ敗北」を意味する。
13 prendre le quart「(船の)当直任務につく」。中心になって働くのがl'amitiéだと言っている。
14 montrait le nord 「北を示す」すなわち「舵を取る」。
15 On dirait qu/qc「まるで…のようである」条件法を用いた緩和表現で、ここではその過去形。sémaphoreは「船舶信号機」だが、ここでは複数形で「船舶信号」そのもの。Les copains d'abordがそのまま「仲間を先に」というメッセージのようだという。
16 tenir le coup「もちこたえる、耐久性がある」
17 viré de bord「船首を回す、進路を変える」で、「(特に政治的な)意見をがらりと変える、変節する」といった意味でも用いられる。



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