
「釣りができますIci l'on pêche」という曲は、1934年にジャン・トランシャンJean Tranchantが作り歌いました。彼は1904年にパリで生まれました。たいへん多才な人で、シンガー・ソングライターの走りで、ピアノも弾く美貌の歌手だっただけではなく、絵画や造形にも才能を発揮しました。恋の歌を作るのが得意で、30年代にはリュシエンヌ・ボワイエLucienne Boyerやジョゼフィン・ベーカー Joséphine Baker、マリアンヌ・オズワルド、Marianne Oswald、リス・ゴーティLys Gauty、マルレーネ・ディートリッヒMarlène Dietrichなどに、そしてのちにはジュリエット・グレコJuliette Grécoに曲を提供しました。スィング調のルフランの使用はシャルル・トレネCharles Trenetなどにインスピレーションを与えました。ホモセクシュアルであることを隠していましたが、男女の恋を歌うかに見える歌詞には、秘められたもう一つの意味を読み取ることができるとも言われます。後年、スイスやベルギー、南アメリカなどに移り住んだのちにフランスに戻り、さほどの栄光を勝ち取ることなく1972年に世を去りました。
ジャン・トランシャンJean Tranchantが、ステファン・グラッペリStéphane Grappelliのヴァイオリンとジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardtのギターと共に自身もピアノを弾いて歌っています。
ジェルメーヌ・サブロンGermaine Sablonがジャンゴ・ラインハルトDjango Reinhardt のギター+オーケストラの伴奏で歌っています。
ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの歌は先の二人よりずっと新しく、歌唱、録音ともに素晴らしいです。
Ici l'on pêche 釣りができます
Jean Tranchant ジャン・トランシャン
Près du grand chemin de halage
Où les bateaux vont doucement
Dans un berceau de verts feuillages
Se cache un petit restaurant
L'air embaume les pommes frites
Les gaufres et les lilas blancs
Les bleuets et les marguerites
Prennent rendez-vous sous les bancs
Oui, sous les bancs
船が静かに通っていく
大きな引き船道の近く
緑の葉むらのトンネルのなかに
小さなレストランが隠れている
空気はフライドポテト
ゴーフルや白いリラの匂いがし
ヤグルマギクやマーガレットが
ベンチの下でランデヴーしてる
そうさ、ベンチの下で

Allez-y donc, qui vous empêche ?
C'est à côté, pas loin d'ici
Ça porte un nom : "Ici l'on pêche"
Vous y pêcherez aussi
行こうよ、誰が君の邪魔をするというんだい?
すぐ近くだよ、ここから遠くないよ
こんな名前がついている「ここは釣り場」と
君もそこで釣りをしようよ
La patronne est une amoureuse
Le patron est un amoureux
Le vin est bon, l'auberge heureuse
Et les repas sont plantureux
Dans les massifs partout fredonnent
Des mots d'amour et des chansons
Et tous les baisers qu'on se donne
Ne sont pas mis sur l'addition
Sur l'addition
女店主は恋する女で
店主は恋する男
ワインは美味しくて、いい宿屋
そして食事はたっぷり
植え込みのなかでは、あちこちで
愛の言葉や歌が聞こえる
そして交わすくちづけはすべて
勘定書には記載されない
勘定書には

Allez-y donc, qui vous empêche ?
C'est à côté, pas loin d'ici
Ça porte un nom : "Ici l'on pêche"
Vous y pêcherez aussi
行こうよ、誰が君の邪魔をするというんだい?
すぐ近くだよ、ここから遠くないよ
こんな名前がついている「ここは釣り場」と
君もそこで釣りをしようよ
C'est là qu'un grand jour de ma vie
J'ai rencontré sur mon chemin
Celle qui devint ma folie
Et je l'ai prise par la main
Elle avait de belles manières
Je l'ai suivie sans sourciller
Et si elle est ma prisonnière
Je suis aussi son prisonnier
僕の人生の大切な日はこの日
僕は道すがら出会ったんだ
その彼女は僕を夢中にさせたのさ
そして僕は彼女の手を取った
彼女は優美な物腰だった
僕は案じることなく彼女について行った
そして彼女は僕のとりこになり
僕もまた彼女のとりこになった
Allez-y donc, qui vous empêche ?
Je suis bien sûre que vous irez
Ça porte un nom : "Ici l'on pêche"
m m m m m m
Comme moi, vous pêcherez
行こうよ、誰が君の邪魔をするというんだい?
きっと君は行くと思うよ
こんな名前がついている「ここは釣り場」と
ム ム ム ム ム ム
僕のように、君も釣りをするんだよ

ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの歌う女性ヴァージョンを、語句の異なる5節目のみ示します。
C'est là qu'un grand jour de ma vie
J'ai rencontré sur mon chemin
C’est lui qui devint ma folie
Et qu'il m'a prise par la main
Il avait de belles manières
Je l'ai suivi sans sourciller
Et je suis sa prisonnière
Il est aussi mon prisonnier
Ah ah ah ah
私の人生の大切な日はこの日
私は道すがら出会った
それは彼、私を夢中にさせた人
そして彼は私の手を取った
彼は優美な物腰だった
私は怖じることなく彼について行った
そして私は彼のとりこになり
彼もまた私のとりこになった
ア ア ア ア
[注] "Ici l'on pêche"は、邦題としては一般的な「釣りができます」としたが、正確に訳すと「ここで人は釣りをする」となる。そして、auberge(レストランを兼ねた宿屋)にそういう名前が付いているということなので、「釣りをするところ」としたほうがよかろう。だが、単に「魚を釣る」ということだろうか?歌詞の中に、ここが恋人たちのための場所であることを意味する内容が含まれているので、「女(男)を釣る」といった暗喩かもしれない。さらには、pêcherと類似した動詞のpécherは、「(宗教上の)罪を犯す」という意味であり(エディット・ピアフÉdith Piafの「メア・キュルパ(夜は恋人) Mea culpa」を参照されたい)、これをかけているのではないかとも思う。
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