2015
11.22

ビギン・ザ・ビギンDivine biguine

Laura Fygi


ちあきなおみの「黄昏のビギン」という曲名でご存じの方も多いでしょうが、ビギンbeguineという音楽があります。そもそもbeguineというのは、もともとは13,14世紀頃の北欧の女子修道会のことで、それが白人女性を意味するようになったものだとか。それがなぜか、西インド諸島、カリブ海のマルチニーク島、セントルシア島で、労働歌カレンダを母体として生まれ古くから踊られている速い2拍子のダンス音楽の名称となったのです。そのビギンはのちに欧米に入ってスローな4拍子の音楽として社交ダンス化され、1930~50年にフランスで流行しました。そして、1935年にアメリカのコール・ポーターCole Porterが「ビギン・ザ・ビギンBegin the Beguine」を作曲し、ジャズのナンバーとして多くの歌手に歌われ、ビギンは全世界で脚光を浴びることになりました。
今回は、その曲をフランス語に翻案した「ビギン・ザ・ビギンDivine biguine」を取り上げます。「時のすぎゆくままにLe temps qui passe」を以前ご紹介したローラ・フィジーLaura Fygiが歌っていて、Rendez-vousという同じアルバムに収録されています。

オルケストル・トラディショネル・ドゥ・ラ・グアドループOrchestre Traditionnel de la Guadeloupeの演奏。すなわちトラディショナルなビギンです。



フランク・シナトラのBegin the Beguine



ローラ・フィジーのDivine biguine



Divine biguine (Begin the Beguine)        ビギン・ザ・ビギン
Laura Fygi                       ローラ・フィジー


Qu'elle est divine la biguine!
De ses doux accents mon cœur se fascine
Elle va chantant perverse et câline 注1
Mêlant jusqu'au jour la danse et l'amour!

  なんて素敵なの、ビギンは!
  その甘い調べに私の心は魅せられる
  ビギンは倒錯的にそして甘美に歌い続ける
  朝までダンスと恋を混ぜ合わせながら!

Divine biguine2


Nos soirs d'autrefois sous les tropiques
Au son de sa voix s'évoquent magiques
Et je les revois plus magnifiques
Qu'elle est divine la biguine

  かつて私たちが常夏の国々で過ごした夜が
  ビギンの歌声で魔力をもってよみがえり
  そして私にはそれらは以前よりすばらしいものとなる
  なんて素敵なの、ビギンは!

Sur ses heureux bords, je l'avais connu 注2
Et l'amour alors était venu...
Ah! les beaux jours! ah! les chères caresses
La douce promesse d'aimer toujours!

  常夏の楽園の国々で、私は彼を知った
  そしてそのとき恋がやって来たのだった…
  ああ!美しい日々!ああ!いとおしい愛撫
  ずっと愛するという甘い約束!

Divine biguine3


Qu'elle était divine la folle biguine!...
Mais soudain l'azur s'obscurcit de sombres nuages
Et notre amour fût englouti dans un brusque orage!
Et tout fut fini, bien fini!

  なんて素敵だったのかしら、狂ったビギンは!…
  でも突如、青空は暗い雲に覆い隠された
  そして私たちの恋は突然の嵐に飲み込まれた!
  すべてが終わった、終わってしまった!

Ah ne jouez plus pour moi la biguine!
Car de ce qui fut, autrefois, tout n'est que ruines
Ce qui fut un beau feu si tendre n'est plus que cendres
Jouez, en sourdine, la biguine! 注3

  ああもう私にビギンを奏でないで!
  だって、かつてあったものは、すべて残骸でしかなくて
  とても優しい美しい炎だったものは灰でしかないのだから
  演奏して、控えめに、ビギンを!

Et pourtant peut-être qu'aux accents si touchants 注4
De cet air de jadis de nos regrets se grisent
Tu te sentiras tout à coup l'âme reprise
Chantant dans un frisson, l'ancienne chanson
Qu'elle est divine la biguine
Qu'elle est divine la biguine
Qu'elle est divine la biguine!

  でもたぶん古くからのこの曲のとても心を打つ調べに
  私たちの懐古の想いが陶酔するのか
  あなたは突然、魂がよみがえるのを感じるでしょう
  身を震わせて、古い歌を歌いながら
  なんて素敵なの、ビギンは
  なんて素敵なの、ビギンは
  なんて素敵なの、ビギンは!

Divine biguine1


[注]
1 aller+現在分詞は継続を示す。
2 ses heureux bords のsesは前節のles tropiquesの、と判断した。heureuxは「幸せな」ではなく「好ましい」の意味。bordは複数で、「海のかなたの国々」をあらわす。
3 en sourdine「弱音器をつけて」→「こっそりと」
4 accent「アクセント、強勢」のほか、「調子、音調」、(複数形で)「調べ、響き」の意味がある。




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