
ダリダDalidaの曲は、「ラストダンスは私にGarde la dernière danse pour moi」と「18歳の彼Il venait d'avoir 18 ans」をすでに取り上げていますが、あらためて彼女のプロフィールを簡単にご紹介しましょう。ダリダは1933年にエジプトで生まれ、ミス・エジプトに選ばれたのち、女優をめざしてパリへ。当初、「サムソンとデリラ」からとったデリラを名乗っていましたが、ダリダに変えました。
歌手としての活躍は「バンビーノBanbino」のヒットから始まりました。レパートリーは非常に広く、伝統的なシャンソンのみならず、ラテン系その他のワールド・ミュージック、英米のヒット曲のフランス語ヴァージョン、ディスコ系の曲などさまざまこなしました。長身で長い髪でロングドレスでステージに立つ美しい姿から、「聖母のような」歌手とあだ名されました。
しかし、私生活は不幸で、恋愛の破局や離婚のみならず、恋人の自殺を2度も経験し、54歳の時、「人生は耐えられない。許して。」という遺書を残し、睡眠薬自殺しました。2001年にはフランスの切手に描かれるなど、今でもその人気は衰えることがありません。
今回ご紹介するのは「ペンシオーネ・ビアンカLa pensione Bianca」という曲。1984年の作品で、アルバムDaliに収録されています。作詞・作曲者としてBernard Estardy, Bruno Gigliotti, Anne-Marie Gaspard, Claude Barzottiという複数の名前が挙げられていますが、詳細は不明です。とても雰囲気のある曲で、いつか歌いたいなぁとひそかに思っている私です。
La pensione Bianca ペンシオーネ・ビアンカ
Dalida ダリダ
À la morte saison on a fermé boutique
On a fait provisions de vins et de musique
On a repeint de blanc la salle et le comptoir
Expliqué aux enfants le prix et le pourboire
Maintenant tout est prêt on peut lever le rideau
La famille au complet connaît le scénario 注1
Le papa, la Mama s'occupent des clients
La tante Agostina dit qu'elle s'ennuie tout le temps
季節の終わりに私たちは店を閉めた
私たちはワインと音楽の蓄えをした
私たちはホールとカウンターを白く塗り直した
子どもたちに価格とチップを説明した
準備万端となった今、私たちは幕を開けることができる
家族全員が計画を理解していた
パパとママは客に応対する
アゴスティナ叔母さんはずっと退屈だと言う

À la pensione Bianca
Y'a du soleil des mandolines 注2
Le soir il y a un feu de bois
On y fait griller des sardines
À la pensione Bianca
On vend du rêve à la semaine 注3
Et vos problèmes on vous les noient
Dans le vin rouge et la verveine 注4
À la pensione Bianca
La, la, la...
ペンシオーネ・ビアンカでは
マンドリンが陽光のような音楽を奏で
夕べには薪の火が燃え
私たちはそれでイワシを焼く
ペンシオーネ・ビアンカでは
私たちは週単位で夢を売る
そしてあなたがたの問題を私たちは紛らせる
赤ワインと煎じ薬で
ペンシオーネ・ビアンカでは
ラ、ラ、ラ…

Ce sont toujours les mêmes
Des vieux habitués
Un qui fait des poèmes l'autre des mots croisés
Carlos et Thérésa ont un troisième enfant
Et la pauvre Angéla attend le prince charmant
Tout le monde joue le jeu prenant tout au sérieux
On dirait qu'ils se croient tous à Cinecittà 注5
Et l'italien là-bas plus vrai que sa légende
Séduit la p'tite sœur pour approcher la tante
そうしたことはいつも同じ
昔からのならわしだ
ある人は詩を作り、またある人はクロスワードパズルをする
カルロとテレザには3番目の子どもができた
そしてかわいそうなアンジェラは素敵な王子さまを待つ
誰しもがまったく本気になって遊びに興じる
彼らはみんなまるでチネチッタ撮影所にいるつもりのようだ
そしてあのイタリア人はうわさ以上に本当のことながら
叔母に近づくために小さな従妹を誘惑する
À la pensione Bianca
Y'a du soleil des mandolines
Le soir il y a un feu de bois
On y fait griller des sardines
À la pensione Bianca
On vend du rêve à la semaine
Et vos problèmes on vous les noient
Dans le vin rouge et la verveine
À la pensione Bianca
La, la, la...
ペンシオーネ・ビアンカでは
マンドリンが陽光のような音楽を奏で
夕べには薪の火が燃え
私たちはそれでイワシを焼く
ペンシオーネ・ビアンカでは
私たちは週単位で夢を売る
そしてあなたがたの問題を私たちは紛らせる
赤ワインと煎じ薬で
ペンシオーネ・ビアンカでは
ラ、ラ、ラ…
Ici chacun a pu pour un mois être un autre
Ici chacun a cru aux histoires de l'autre
On ferme les volets jusqu'au prochain été
Et la jolie pension n'est plus qu'une vieille maison
ここでは各々がひと月のあいだ別の人間になれた
ここでは各々がひとの作り話を信じ込んだ
私たちは今度の夏までよろい戸を閉める
そして美しいペンションはもはや古い館にすぎない

À la pensione Bianca
Y'a du soleil des mandolines
Le soir il y a un feu de bois
On y fait griller des sardines
À la pensione Bianca
On vend du rêve à la semaine
Et vos problèmes on vous les noient
Dans le vin rouge et la verveine
À la pensione Bianca
ペンシオーネ・ビアンカでは
マンドリンが陽光のような音楽を奏で
夕べには薪の火が燃え
私たちはそれでイワシを焼く
ペンシオーネ・ビアンカでは
私たちは週単位で夢を売る
そしてあなたがたの問題を私たちは紛らせる
赤ワインと煎じ薬で
ペンシオーネ・ビアンカでは
ラ、ラ、ラ…
[注] Biancaは「白い」という意味のイタリア語の形容詞Biancoの女性形なので、pensioneは、フランス語も同義で同じ綴りだがイタリア語(アクセント記号を付けるとpensióne)であり、ダリダもイタリア語的に発音している。「年金」あるいは「食事付き宿泊」「寄宿舎、下宿」などの意味があるが、この歌詞では「ペンション」すなわち、小さい民宿を意味し、la pensione Biancaは固有名詞として用いられている。
1 au complet「全員そろって」
2 du soleilは部分冠詞が使われているので、「日光、日差し」や太陽の持つ何らかの特性。des mandolines「マンドリンの」という形容が続くが、推量にて意訳するほかなかった。
3 à la semaine「週単位で」
4 verveine「クマツヅラ」「クマツヅラの煎じ薬」
5 On dirait que…「…のようだ」。Cinecittà「チネチッタ」は、イタリア語で映画を意味するcinemaと都市を意味するcittàを合わせた造語で、イタリアのローマ郊外にある映画撮影所の名称。
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