2014
09.20

シラキューズSyracuse

Henri Salvador Syracuse

アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorは、カイエンヌ(フランス領ギアナ)の生まれで最初ギタリストとして出発したのちに歌手となり、喜劇番組にも出演し、ほんとうに長い長い芸能生活を送り、2008年2月に90歳で亡くなりました。

サルヴァドールの曲は非常にバラエティーに富んでいて、ちょっとおふざけが過ぎるものもあります。例えば、「アンリ・サルヴァドールはふざけるHenri Salvador s'amuse」なんて曲(?)は、最初から最後まで笑いっぱなしで歌ってなんかいません。あまりに面白いので動画を作ってアップしちゃいました



アンリ・サルヴァドールHenri Salvadorの曲は、旧ブログで9曲くらい訳しています。彼が作り他の歌手が歌っている曲も幾つか。名前で検索してみてください。それらを見ていただくと分かりますが、歌詞内容はとても豊かです。

今回、そのうちの1曲をこちらに運んできました。「シラキューズSyracuse」(1962年。作詞:ベルナール・ディメイBernard Dimey、作曲:アンリ・サルヴァドール)です。この曲には8つの地名が出てきますが、それらは、世界遺産に認定された、あるいは暫定リストに載せられた古代からの歴史をもつところばかり。この曲が作られた60年代初めから、歴史的価値のある遺跡や建築物等を国際的な組織運営で守ろうという動きが出始めたといわれますが、世界遺産条約が締結されたのは1972年だし、それぞれの場所が指定されたのはずっと後年。実に、この歌詞はそれを先取りしているのです。老荘思想を思わせるように雄大なというか鳥瞰的な世界がこの短い曲のなかに広がっています。すなわち45歳のときの曲で、「私の若さが失われていく前に そして私の青春が去ってしまう前に…」と、歌詞にありますが、彼の残り半分の人生で、その夢は実現したのでしょうか?



イヴ・モンタンYves Montandが歌っています。



ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisとイヴァン・ジュリアンYvan Julien



Syracuse              シラキューズ
Henri Salvador           アンリ・サルヴァドール


J’aimerais tant voir Syracuse
L’île de Pâques et Kairouan
Et les grands oiseaux qui s’amusent
A glisser l’aile sous le vent

  私はぜひとも見たい シラキューズを
  イースター島とケロアンを
  そして風を受けて楽しげに滑空する
  大きな鳥たちを

Syracuse.jpg L’île de Pâques 2 Kairouan.jpg grands oiseaux1


Voir les jardins de Babylone 注1
Et le palais du grand Lama
Rêver des amants de Vérone 注2
Au sommet du Fuji-Yama 注3

  バビロンの庭園を
  そしてダライラマの宮殿を見たい
  富士山の頂上で
  ヴェローナの恋人たちを夢見たい

Babylone.jpg palais du grand Lama Fuji-Yama.jpg Romeo and Juliet



Voir le pays du matin calme 注4
Aller pêcher au cormoran 注5
Et m’enivrer de vin de palme 注6
En écoutant chanter le vent 注7

  朝鮮の国を見たい
  鵜飼に出かけたい
  風の歌を聞きながら
  椰子酒に酩酊したい

matin calme Pecheurs_aux_cormorans.jpg vin de palme


Avant que ma jeunesse s’use
Et que mes printemps soient partis
J’aimerais tant voir Syracuse
Pour m’en souvenir à Paris

  私の若さが失われていく前に
  そして私の青春が去ってしまう前に
  私はぜひともシラキューズを見たい
  パリでそれを思い出すために

Paris1.jpg


[注]
1 les jardins de Babylone世界七不思議の一つ 「バビロンの空中庭園」。紀元前600年頃に新バビロニア王国の王、ネブカドネザル2世が、砂漠の国に輿入れするのを嫌がった王妃アミュティスを慰めるために建造した庭園。紀元前538年のペルシアによる侵略の時に破壊されて今はない。
2 「ヴェローナの恋人たち」とはロメオとジュリエットのこと。
3 「富士山」は本来は、le mont Fujiと表記される。
4 le pays du matin calmeは、「朝鮮」という国名を意味的にとらえて仏訳したものらしい。
5 pêcher au cormoran「鵜飼」もっぱら日本と中国でおこなわれているが、ペルーで、日本の鵜飼いより100年ほど前の5世紀ごろに行われたと思われる鵜飼いの様子を記した土器が発見されたという。
6 vin de palme「椰子酒」はもじどおり椰子で作った酒。インド、東南アジア、アフリカ中部・西部でつくられているが、遠く離れたメキシコやマリアナ諸島にもあるという。
7 chanter le vent「風が歌う」という表現は、シャルル・トレネCharles Trenetの名曲「風歌いChante le vent」を意識したのかと思ったが、トレネの曲は1964年で、シラキューズよりあと。


<世界遺産に認定あるいは暫定リストに載せられた地名>
Syracuseシラキューズ
(仏語読み):古代ギリシャの都市シラクザであったが、現在は、イタリア共和国のシチリア島東岸に位置する都市シラクサ。古代ギリシャ時代の劇場・アポロ神殿・ゼウス神殿などがある。2005年に「シラクサとパンターリカの岩壁墓地遺跡」の名で世界文化遺産に登録。(ニューヨーク州中部にも同名の都市がある)
L’île de Pâquesイースター島:チリ領の太平洋上に位置する火山島。現地語名はラパ・ヌイRapa Nui(「広い大地」という意味)。正式名はパスクア島(西語:Isla de Pascua)で、Pascuaは復活祭を意味する。人面を模したモアイ像で知られる。1995年に世界遺産に登録。

Kairouanケロアン:チュニジアの古都。名前は「キャンプ、キャラバン」を意味するアラビア語のkairuwân,ペルシア語でのKâravânに由来。中世には、マグリブ地方のイスラームの中心地としての重要性から、イスラム世界でマッカ、マディーナに次ぐ第3の聖都となった。1979年に世界遺産に登録。

Babyloneバビロン:メソポタミア地方の古代都市。現在のイラクに位置する。アッカド語のバビリムBab-ilim(神の門)に由来するギリシャ語の名称。旧約聖書創世記では、「バベルの塔」の言い伝えで知られるBabel (語源的に「混乱」を意味する)と表記されていた。二重構造の城壁で囲まれており市域はバグダードの南方約90kmの地点にユーフラテス川をまたいで広がる。50以上の神殿がある。現在見る遺構は、紀元前7世紀に新バビロニアによって大改造されたもの。世界遺産へは、1983年に推薦され、現在も暫定リストに登録されている。

Véroneヴェローナ:イタリア北部の都市。その歴史は先史時代に遡る。中世の町並みにローマ遺跡が残り、円形劇場で知られている。2000年、ヴェローナ市街として、世界遺産(文化遺産)に登録された。

le palais du grand Lamaポタラ宮:チベットの中心地ラサのマルポリの丘の上に十数年をかけて建設された宮殿。13階建て、基部からの総高117m、建築面積にして1万3000㎡という、単体としては世界でも最大級の建築。政治的な執務にあてられた白宮と宗教的な領域である紅宮とがある。ダライ・ラマ13世は、新たにノルブリンカ宮を建て、夏はノルブリンカ、冬はポタラ宮を政府の所在地とした。チベット動乱の後、ダライ・ラマ14世はインドに亡命し、ポタラ宮は主を失った。中国政府はポタラ宮を接収し、現在は博物館として使用されている。1994年、周辺の遺跡と合わせてラサのポタラ宮の歴史的遺跡群として、ユネスコ世界遺産(文化遺産)として登録。2000年にジョカン(トゥルナン寺・大昭寺)が拡大登録。2001年にノルブリンカが拡大登録された。

le Fuji-Yama富士山:1990年代初めから世界遺産への登録運動が行われ、当初は自然遺産登録が検討されていたが、ゴミ問題等で国は推薦を見送っていた。2007年に暫定リストに登録され、2013年(平成25年)6月22日には関連する文化財群とともに「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の名で世界文化遺産に登録された。

Parisパリ:「パリのセーヌ河岸」は、フランスにあるユネスコ世界遺産のひとつ。首都パリを流れるセーヌ川の川岸のうち、中州であるシテ島とサン・ルイ島、および区域内に架かる橋も含み、シュリー橋からイエナ橋までのおよそ8kmほどにある、複数の物件が登録対象となっている。


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