2015
09.06

心の叫びCri du cœur

Édith Piaf Cri du cœur


ジャック・プレヴェールJacques Prévertの詩を歌詞とした曲は、すでにいくつか取り上げてきましたが、今回、エディット・ピアフÉdith Piafが1960年に歌った「心の叫びCri du cœur」(作曲:アンリ・クロラHenri Crolla)を加えましょう。この歌詞内容はピアフそのもの。この詩は1946年の詩集「物語Histoires」に収められています。

作曲者のアンリ・クロラがギターを弾いています。



Cri du cœur          心の叫び
Édith Piaf           エディット・ピアフ


C´est pas seulement ma voix qui chante.
C´est l´autre voix, une foule de voix,
Voix d´aujourd´hui ou d´autrefois,
Des voix marrantes, ensoleillées,
Désespérées, émerveillées,
Voix déchirantes et brisées,
Voix souriantes et affolées,
Folles de douleur et de gaieté.

  歌っているのは私の声だけじゃない。
  それは他の声、一群の声、
  今日の声、昔の声、
  滑稽な、晴れやかな、
  絶望した、驚嘆した声、
  悲痛なまた憔悴した声、
  にこやかなまた取り乱した声、
  苦しみや楽しさで狂わんばかりの声。

C´est la voix d´un chagrin tout neuf,
La voix de l´amour mort ou vif, 注1
La voix d´un pauvre fugitif,
La voix d´un noyé qui fait plouf. 注2
C´est la voix d´une enfant qu´on gifle,
C´est la voix d´un oiseau craintif,
La voix d´un moineau mort de froid 注3
Sur le pavé d´ la rue d´ la joie...  注4

  それは初体験の悲しみの声、
  かつてのあるいは進行中の恋の声、
  哀れな逃亡者の声、
  ぽちゃんと落っこちて溺れた人の声。
  それはひっぱたかれた子どもの声、
  それは臆病な鳥の声、
  歓楽街の舗石の上で
  凍えて死にそうなスズメの声…

Cri du cœur2


Et toujours, toujours, quand je chante,
Cet oiseau-là chante avec moi.
Toujours, toujours, encore vivante,
Sa pauvre voix tremble pour moi.
Si je disais tout ce qu´il chante,
Tout c´que j´ai vu et tout c´que j´sais,
J´en dirais trop et pas assez
Et tout ça, je veux l´oublier.

  そしていつも、いつも、私が歌えば、
  この鳥は私とともに歌う。
  いまも、いまも、まだ生きている、
  その哀れな声は私のために震える。
  もしもこの鳥が歌っていること、
  私が見たこと、私が知っていることをぜんぶ言ったとしたら、
  いくら言ったって言いつくせないわ
  そしてそれをぜんぶ、私は忘れたい。

D´autres voix chantent un vieux refrain.
C´est leur souvenir, c´est plus le mien.
Je n´ai plus qu´un seul cri du cœur :
"J´aime pas l´malheur! J´aime pas l´malheur!"
Et le malheur me le rend bien 注5
Mais je l´ connais, il m´ fait plus peur.
Il dit qu´on est mariés ensemble.
Même si c´est vrai, je n´en crois rien.

  ほかの声たちは古いルフランを歌う。
  それは彼らの想い出で、私の想い出じゃない。
  私にはただ一つの心の叫びしかない
  「私は不幸が好きじゃない!私は不幸が好きじゃない!」
  そして不幸のやつも私に同じ感情を持っている
  でも私はそいつのことを知っているから、私はもう恐れない。
  そいつは私と結ばれてるんだと言う。
  それが本当だとしても、私はそんなこと信じない。

Édith Piaf


Sans pitié, j´écrase mes larmes.
Je leur fais pas d´publicité.
Si on tirait l´signal d´alarme
Pour des chagrins particuliers,
Jamais les trains n´pourraient rouler
Et je regarde le paysage.
Si par hasard, il est trop laid,
J´attends qu´il se refasse une beauté 注6

  容赦なく、私は涙を抑えつける。
  私は涙を人目にさらしたりしない。
  もしも誰かが個人的な悲しみのために
  警報機を鳴らしたら、
  列車は走れなくなるもの
  そして私は景色を眺める。
  もしもたまたま、ひどい景色だったなら、
  それが美しさを取り戻すのを待つわ。

Et les douaniers du désespoir
Peuvent bien éventrer mes bagages,
Me palper et me questionner,
J´ai jamais rien à déclarer.
L´amour, comme moi, part en voyage.
Un jour je le rencontrerai.
A peine j´aurai vu son visage,
Tout de suite je le reconnaîtrai...

  そして絶望の税関吏たちは
  私の旅行カバンをこじ開け、
  私の身体に触れて調べ、私に問い質すかもしれないけど、
  私には申告するものなどない。
  恋は、私同様に、旅に出る。
  ある日私はそれに出会うでしょう。
  その顔を見るやいなや
  すぐさまそれが誰だか分かるでしょう…

[注]
1 vif本来は「快活な」「激しい」といった意味で、「生きている」の意味は限られた成句でしか用いられない。ここではmortと対比させてvivantを用いたいところを、韻を踏むためvifにしたと思われる。
2 plouf「ぽちゃん、ぽとん」という擬音を表す語。
3 ピアフは「小さなスズメLa Môme Piaf」というあだ名が付けられていた。 mort de froid「凍え死にした」あるいは「寒くて死にそうな」。声を出している訳だし、次節にencore vivanteとあるので、後者である。
4 ピアフは歓楽街の祖母の元で育った。
5 bien le rendre à qn.「…にお返しする、同じ感情を持つ」
6 refaire une beauté話し言葉で「化粧し直す」の意味だが、ここでは「美しさを取り戻す」という文字通りの意味。




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