
スティーブ・マクイーンSteve McQueenとフェイ・ダナウェイFaye Dunaway主演の映画「華麗なる賭けThe Thomas Crown affair」(1968年)のなかでノエル・ハリソンNoel Harrisonが歌った「風の囁きWindmills Of Your Mind」は、お聴きになれば、誰しも聴き覚えのある曲だと思われるでしょう。
この曲は、ミッシェル・ルグランMichel Legrandが、モーツァルトMozartの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調」の第2楽章からメロディーを借りて作曲したと言われます。作詞はMarilyn BergmanとAlan Bergman。その後、バーブラ・ストライザンドBarbra Streisandやペチュラ・クラークPetura Clarkなどがカヴァーしています。
そして、エディ・マルネイEddy Marnayがフランス語に翻案した「わが心の風車(風の囁き)Les moulins de mon cœur」(Tous les moulins de mon cœur)も、ミッシェル・ルグラン本人をはじめとして多くの歌手に歌われています。
今回はこの曲を歌う若手の歌手をご紹介いたします。世界最年少のテノール歌手と言われるアモリ・ヴァッシリAmaury Vassiliで、1989年にルーアンで生まれ、現25歳です。14歳でジャック・ブレルJacque BrelのAmsterdamを歌って優勝したのをはじめとしてさまざまなコンクールに出場。2009年に出したファースト・アルバムVinceroが25万枚の売り上げで、順調にプロ・デヴューし、翌10年にセカンド・アルバムCanteroを出し、そのなかにこの曲が収録されています。彼は11年にデュッセルドルフでのユーロヴィジョン・コンクールにフランス代表として出場しましたが、15位に終わっています。去年13年5月に初来日。イケメンのテノール王子は日本でも大人気となりました。今後が大いに期待される歌手です。
ミッシェル・ルグラン本人のピアノ弾き語り
バーブラ・ストライザンドのWindmills Of Your Mind
Les moulins de mon cœur わが心の風車(風の囁き)
Amaury Vassili アモリ・ヴァッシリ
Comme une pierre que l’on jette
Dans l’eau vive d’un ruisseau
Et qui laisse derrière elle 注1
Des milliers de ronds dans l’eau
Comme un manège de lune 注2
Avec ses chevaux d’étoiles
Comme un anneau de Saturne
Un ballon de carnaval
Comme le chemin de ronde 注3
Que font sans cesse les heures
Le voyage autour du monde
D´un tournesol dans sa fleur
Tu fais tourner de ton nom
Tous les moulins de mon cœur
まるで小川の流水に投げ込まれ
無数の水の輪を
あとに残す石だ
まるで星の馬たちをともなった
月の回転木馬だ
まるで土星の輪だ
カーニヴァルの風船だ
まるで時が休みなく辿る
時計の文字盤だ
ひまわりの花のなかの
世界一周だ
君は君の名で
僕の心のすべての風車を回す

Comme un écheveau de laine
Entre les mains d’un enfant
Ou les mots d’une rengaine
Pris dans les harpes du vent
Comme un tourbillon de neige 注4
Comme un vol de goélands
Sur des forêts de Norvège
Sur des moutons d’océan
Comme le chemin de ronde
Que font sans cesse les heures
Le voyage autour du monde
D´un tournesol dans sa fleur
Tu fais tourner de ton nom
Tous les moulins de mon cœur
まるで子どもが両手に掛けた
1かせの毛糸だ
あるいは風琴にとらえられた
はやり歌の文句だ
まるで吹雪だ
まるでカモメの飛翔だ
ノルウェーの森を吹き荒れ
海の白波を越える
まるで時が休みなく辿る
時計の文字盤だ
ひまわりの花のなかの
世界一周だ
君は君の名で
僕の心のすべての風車を回す

Ce jour-là près de la source
Dieu sait ce que tu m’as dit 注5
Mais l’été finit sa course
L´oiseau tomba de son nid
Et voila que sur le sable
Nos pas s’effacent déjà
Et je suis seul à la table
Qui résonne sous mes doigts
Comme un tambourin qui pleure
Sous les gouttes de la pluie
Comme les chansons qui meurent
Aussitôt qu’on les oublie
Et les feuilles de l’automne
Rencontre des ciels moins bleus
Et ton absence leur donne
La couleur de tes cheveux
あの日 泉のほとりで
君が僕に言ったことは神様がご存じだ
だが夏はその道程を終え
鳥は巣から落ちる
そしてほら 砂の上の
僕たちの足跡はもう消える
そして僕はひとりテーブルにつき
テーブルは僕の指の下で音を立てる
まるで雨粒の下で
泣くタンバリンのように
まるで忘れられるとすぐに
消えて行く歌のように
そして秋の木の葉は
青みを失った空と出会う
そして君の不在は
木の葉に君の髪の色を与える

Une pierre que l’on jette
Dans l’eau vive d’un ruisseau
Et qui laisse derrière elle
Des milliers de ronds dans l’eau
Au vent des quatre saisons
Tu fais tourner de ton nom
Tous les moulins de mon cœur
小川の流水に投げ込まれ
無数の水の輪を
あとに残す石だ
四季の風を受け
君は君の名で
僕の心のすべての風車を回す
[注]
1 elleは1行目のune pierre。
2 un manège de luneは、月の暈(かさ)を回転木馬にたとえ、星がその木馬だと表現している。
3 les heures「時間」がsans cesse「休みなく」 font「辿る」、chemin de ronde「円形の道」とは、「時計の文字盤」のこと。
4 実際は、un tourbillon de neige「吹雪」はsur des forêts de Norvège「ノルウェーの森の上」、un vol de goélands「カモメの飛翔」はsur des moutons d’océan「海の白波の上」というつながり。
mouton「羊」は複数形で「白波」、「羊雲、綿雲」、「綿ぼこり」の意味に用いられる。
5 Dieu sait…「神様がご存じだ」すなわち「…は絶対間違いない、誓ってもいい」と、「神のみぞ知る」すなわち「…は分からないことだ」の両義があり、ここでは前者。
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コメント
コメントありがとうございました。
精一杯訳していますが、間違いもあろうかと思います。
お役に立てばうれしいので、どうぞご自由に引用ください。
ノニー
精一杯訳していますが、間違いもあろうかと思います。
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ノニー
朝倉ノニー
2015.01.06 18:11 | 編集

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