2015
08.08

黒い太陽Le soleil noir

Barbara Du bout des lèvres


今回はバルバラBarbaraが1968年に作り歌った「黒い太陽Le soleil noir」です。この曲およびアルバムのタイトルである「黒い太陽Le soleil noir」は、いわゆる「撞着語法oxymoron」(形容詞や連体修飾語・句・節などが、修飾される名詞と矛盾した形容矛盾の語法)で、ジェラール・ド・ネルヴァルGérard de Nerval の1854年の14行詩「廃嫡者El Desdichado」(「幻想詩集Les Chimères」に収録)の一節を踏まえているようです。

Ma seule Étoile est morte, – et mon luth constellé
 私の唯ひとつの星は死んだ、―そして星をちりばめた私のリュートは
Porte le Soleil noir de la Mélancolie.
 憂鬱の黒い太陽をかかえている。

この曲の歌詞は、ちょっと分かりにくい内容です。
暗い北の地を逃げ出して行った南の国は、まさに楽園でしたが、どこかで、大地が割れ、男たちが閉じ込められ、子供が死ぬような事件が起こって、心傷ついて、恋人の待つ北の国に帰る、といった話。大地が割れるというのは、地震のようですし、男たちが閉じ込められ、子供が死ぬというのは内乱、あるいはトンネルか炭鉱の落盤事故でしょうか…。「黒い太陽」は、ショックを受けた心情を表した表現でしょうが、「黒い」というのは、石炭ともつながり、どうやら1956年8月8日にベルギーのシャルルロアCharleroiのマルシネルMarcinelleにあった炭鉱Le bois du Cazier で起こった炭鉱事故のことのようです。12の国籍の262 人が亡くなり、そのうち136人がイタリア人で95人がベルギー人でした。炭鉱はその後、1967年(この曲が作られた前の年)からは博物館となっています。ちなみにバルバラは1950年頃シャルルロアにいたことがあります。

また、この曲が作られた1968年の3月16日に、「ソンミ村虐殺事件My Lai Massacre」が起こっています。ベトナム戦争中のことで、アメリカ軍兵士がクアンガイ省ソンミ村(現:ティンケ村)で非武装のベトナム人住民504人(男149人、妊婦を含む女183人、乳幼児を含む子ども173人)を無差別射撃などで虐殺した事件です。
バラバラは、10年以上も前の落盤事故のことのように見せながら、この事件のことを重ね合わせて言っていたのではないかと、私は思うのです。



マチュー・ロザスMathieu Rosaz



Le soleil noir            黒い太陽
Barbara               バルバラ


Pour ne plus, jamais plus, vous parler de la pluie,
Plus jamais du ciel lourd, jamais des matins gris,
Je suis sortie des brumes et je me suis enfuie,
Sous des ciels plus légers, pays de paradis,
Oh, que j´aurais voulu vous ramener ce soir,
Des mers en furie, des musiques barbares,
Des chants heureux, des rires qui résonnent bizarres,
Et vous feraient le bruit d´un heureux tintamarre,
Des coquillages blancs et des cailloux salés,
Qui roulent sous les vagues, mille fois ramenés,
Des rouges éclatants, des soleils éclatés, 注1
Dont le feu brûlerait d´éternels étés,

  もう、もう決して、あなたに雨のことを
  もう決してよどんだ空のことを、決して灰色の朝のことを話さないために、
  私は靄を抜けて逃げ出した、
  もっと軽やかな空のもとへと、パラダイスの国へと、
  おお、どんなにあなたに今夜届けたかったことか、
  荒れ狂う海、野蛮な音楽を、
  好ましい歌声、奇妙に響く笑い声を、
  そしてそれらはあなたに愉快な騒音となったことでしょう
  白い貝と塩のからんだ小石、
  それらは波の下を転がる、何度も何度も押し戻されて、
  鮮やかな赤、散らばった陽光、
  その炎は永遠の夏を燃え立たせた

Mais j´ai tout essayé,
J´ai fait semblant de croire, 注2
Et je reviens de loin,
Et mon soleil est noir,
Mais j´ai tout essayé,
Et vous pouvez me croire,
Je reviens fatiguée,
Et j´ai le désespoir,

  でも私はさんざん試みた
  信じるふりをした、
  そして私は遠方から戻る
  私の太陽は黒い、
  でも私はさんざん試みた、
  だからあなたは私を信じてもいい、
  私はくたびれて戻る、
  そして絶望を抱えている、

Le soleil noir 1


Légère, si légère, j´allais court vêtue,
Je faisais mon affaire du premier venu, 注3
Et c´était le repos, l´heure de nonchalance,
A bouche que veux-tu, et j´entrais dans la danse, 注4
J´ai appris le banjo sur des airs de guitare,
J´ai frissonné du dos, j´ai oublié Mozart,
Enfin j´allais pouvoir enfin vous revenir, 
Avec l´œil alangui, vague de souvenirs,
Et j´étais l´ouragan et la rage de vivre,
Et j´étais le torrent et la force de vivre,
J´ai aimé, j´ai brûlé, rattrapé mon retard,
Que la vie était belle et folle mon histoire,

  軽装で、しごく軽装で、私は簡素な身なりで出かけた、
  私はさしあたって必要なことをおこなった、
  またそれはたっぷりとした休暇、気楽な時間だった、
  私はダンスに加わった、
  私はギターの旋律でバンジョーを弾くことを覚えた、
  私は背筋をぞくぞくさせた、私はモーツアルトを忘れた、
  結局は可能になったのよ結局はあなたのもとに帰ることが、
  くたびれた目と、不確かな記憶を抱えて、
  そして私は生きる嵐であり突風だった、
  そして私は生きる急流であり力だった、
  私は愛し、燃え、遅れを取り戻した、
  人生はなんと美しかったか、私の話はなんと尋常じゃないものか、

Mais la terre s´est ouverte,
Là-bas, quelque part,
Mais la terre s´est ouverte,
Et le soleil est noir,
Des hommes sont murés,
Tout là-bas, quelque part,
Les hommes sont murés,
Et c´est le désespoir,

  だが大地が割れた、
  向こうで、どこかで、
  だが大地が割れた、
  そして太陽は黒い、
  男たちは閉じ込められた、
  まさしく向こうで、どこかで、
  男たちは閉じ込められた、
  そしてそれは絶望そのものだ、

J´ai conjuré le sort, j´ai recherché l´oubli,
J´ai refusé la mort, j´ai rejeté l´ennui,
Et j´ai serré les poings pour m´ordonner de croire,
Que la vie était belle, fascinant le hasard,
Qui me menait ici, ailleurs ou autre part,
Où la fleur était rouge, où le sable était blond,
Où le bruit de la mer était une chanson,
Oui, le bruit de la mer était une chanson,

  私は運命を払いのけた、私は忘却を求めた、
  私は死を拒んだ、不安を押しのけた、
  そして私はこぶしを握り締め、信じるように自分に強いた、
  人生は美しく、巡り合せは魅惑的だと、
  私をここに、よそにあるいは別の場所にせよ、連れてきた巡り合せは、
  そこでは花は赤かった、そこでは砂は金色だった、
  そこでは海の音は歌だった、
  ええ、海の音は歌だった、

Mais un enfant est mort,
Là-bas, quelque part,
Mais un enfant est mort,
Et le soleil est noir,
J´entends le glas qui sonne,
Tout là-bas, quelque part,
J´entends le glas sonner,
Et c´est le désespoir,

  だが子供がひとり死んだ、
  まさしく向こうで、どこかで、
  だが子供がひとり死んだ、
  そして太陽は黒い、
  弔鐘が鳴るのが聞こえる、
  そしてそれは絶望そのものだ、

Le soleil noir 2


Je ne ramène rien, je suis écartelée,
Je vous reviens ce soir, le cœur égratigné,
Car, de les regarder, de les entendre vivre,
Avec eux j´ai eu mal, avec aux j´étais ivre,
Je ne ramène rien, je reviens solitaire,
Du bout de ce voyage au-delà des frontières,
Est-il un coin de terre où rien ne se déchire,
Et que faut-il donc faire, pouvez-vous me le dire,
S´il faut aller plus loin pour effacer vos larmes,
Et si je pouvais, seule, faire taire les armes,
Je jure que, demain, je reprends l´aventure,
Pour que cessent à jamais toutes ces déchirures,

  私は何も持ち帰らず、心引き裂かれて、
  私は今夜あなたのもとに帰る、心乱れて、
  なぜなら、彼らが生きるのを見聞きして、
  私は彼らとともに痛みを感じ、彼らとともに酔っていた
  私は何も持ち帰らず、ひとりで帰る、
  国境の向こう側への旅の果てから
  それは一切傷つくことのない世界の片隅のことなのか、
  そしていったい何をなすべきか、あなたは私に言えるの、
  あなたの涙を拭いさるためにもっと遠くに行かねばならないのか、
  そして、ただ、兵器を黙らせることさえ私にできたなら、
  誓うわ、明日、私はまたアヴァンチュールを始めるわ、
  この心の傷をすべて永遠に封じるために

Je veux bien essayer,
Et je veux bien y croire,
Mais je suis fatiguée,
Et mon soleil est noir,
Pardon de vous le dire,
Mais je reviens ce soir,
Le cœur égratigné,
Et j´ai le désespoir,
Le cœur égratigné,
Et j´ai le désespoir...

  私は試みたい、
  そしてそれを信じたい、
  でも私は疲れた、
  そして私の太陽は黒い、
  あなたにこの話をするのを許して、
  でも今夜帰るわ、
  心乱れ、
  そして絶望を抱え、
  心乱れ、
  そして絶望を抱え…

Le soleil noir 3


[注]
1 soleil「太陽」 が複数形。éclatéはéclater「爆発する、きらきら輝く」の過去分詞だが、「砕けた」が本義。
2 faire semblant de+inf.「…するふりをする」
3 le premier venu「最初に来たもの」「どんなものでも」
4 à bouche que veux-tu「豊富に、たっぷりと」



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