2014
09.15

私の青春は逃げて行く(もう森へなんか行かない)Ma jeunesse fout l'camp

Michele Arnaud Ma jeunesse fout lcamp


「もう森へなんか行かない」という邦題で知られている曲は、フランスのシンガー・ソングライター、ギイ・ボンタンペッリGuy Bontempelliの作詞・作曲。彼の作った曲は、ジュリエット・グレコJuliette Gréco、ダリダDalida、ニコレッタNicoletta、ブリジット・バルドーBrigitte Bardotほか多くの歌手に歌われています。
この曲は1962年にミッシェル・アルノーMichèle Arnaudが創唱しました。フランソワーズ・アルディーFrançoise Hardyがこの曲を歌ったのは、1967年。TBS系列で放送された山田太一脚本のドラマ「沿線地図」で挿入歌として使われて、日本でも有名になりました。ジャン=クロード・パスカルJean-Claude Pascalものちに歌っています。邦題は原題のMa jeunesse fout l'campに即し「私の青春は逃げて行く」とし、一般に知られている「もう森へなんか行かない」は副題とします。

実は、「私たちはもう森へは行かないNous n'irons plus au bois」という童謡があり、これは18世紀なかばに、グレゴリオ聖歌の「天使のミサLa Messe des Anges」と呼ばれる曲の旋律にJ.A.ポワソンJeanne-Antoinette Poissonすなわちポンパドール夫人Madame de Pompadourが歌詞を付けたものだといわれます。「ダンスにお入んなさい、どんな風にダンスするかごらんなさい、跳んで、踊って、好きな相手にキスなさい。Entrez dans la danse, voyez comm' on danse, Sautez, dansez, embrassez qui vous voudrez.」という歌詞が繰り返され、「森へは行かない」という題名ながらも森で楽しく過ごすといった内容です。

ちなみにクラシック音楽のほうでは、ドビュッシーに、この童謡に基づく曲が4曲ありますが、そのうち特に「忘れられた映像」の第3曲「嫌な天気だから“もう森へは行かない”の諸相」がこの童謡を主題にしています。これは後に「版画」の第3曲「雨の庭」で、同じ主題を用いながら書き改められました。

ポンパドール夫人作の童謡



Ma jeunesse fout l'campでは、それを踏まえ、ほんとうに「森へなんか行かない」と言明するもので、そうした森での楽しみをもう持つことはなく、私の青春は過ぎ去ってしまったと歌います。

フランソワーズ・アルディー



ギイ・ボンタンペッリ自身



ミッシェル・アルノー



以上のなかで私が一番気に入ったアルノーの歌として、歌詞をご紹介しましょう。
彼女は大学で文学・政治学・哲学を学び二つの学士号を持つ知的な歌手で、レオ・フェレLéo Ferré作の「サン・ルイ島L'Île Saint-Louis」でデビュー。何人ものシンガー・ソングライターから曲を提供されて歌ってきましたが、特に、セルジュ・ゲンズブールSerge Gainsbourgを絵画の道からシャンソンへと転向させるきっかけを与え、ゲンズブールを最初に歌った歌手としても知られています。レジオンドヌール勲章シュヴァリエChevalier de la Légion d'honneurを受賞。

Ma jeunesse fout l'camp     私の青春は逃げて行く(もう森へなんか行かない)
Michèle Arnaud          ミッシェル・アルノー


Ma jeunesse fout l'camp 注1
Tout au long d'un poème 注2
Et d'une rime à l'autre
Elle va bras ballants 注3
Ma jeunesse fout l'camp
A la morte fontaine
Et les coupeurs d'osier
Moissonnent mes vingt ans 注4

  わたしの青春は逃げて行く
  一篇の詩を通って
  ひとつの韻から別の韻へと
  腕をぶらつかせながら
  わたしの青春は逃げて行く
  枯れた泉へと
  そして柳を切る木こりたちが
  わたしの二十年の歳月を刈り取る

forêt


Nous n'irons plus au bois
La chanson du poète
Le refrain de deux sous
Les vers de mirliton 注5
Qu'on chantait en rêvant
Aux garçons de la fête 注6
J'en oublie jusqu'au nom
J'en oublie jusqu'au nom

  わたしたちはもう森へなんか行かない
  詩人の唄を
  安っぽいルフランを
  俗っぽい詩句を
  祭りで会った男の子だちを
  思いながら歌った
  その名前ももう忘れた
  その名前ももう忘れた

Nous n'irons plus au bois
Où sont les violettes  注7
La pluie tombe aujourd'hui
Qui efface nos pas
Les enfants ont pourtant
Des chansons plein la tête
Mais je ne les sais pas 注8
Mais je ne les sais pas

  わたしたちはもう森へなんか行かない
  スミレが咲く森へは
  きょうは雨が降って
  わたしたちの足跡を消す
  でも子供たちは持っている
  歌を頭のなかいっぱいに
  でもわたしはそれを知らない
  でもわたしはそれを知らない

violette.jpg


Ma jeunesse fout l'camp
Sur un air de guitare
Elle sort de moi même
En silence à pas lents
Ma jeunesse fout l'camp
Elle a rompu l'amarre 注9
Elle a dans ses cheveux
Les fleurs de mes vingt ans

  わたしの青春は逃げて行く
  ギターの調べに乗って
  わたしから逃げ出す
  黙ってゆっくりとした足取りで
  わたしの青春は逃げて行く
  きずなを断ち切り
  その髪に
  わたしの二十歳の花を飾って

Nous n'irons plus au bois 注10
Voici venir l'automne
J'attendrai le printemps
En effeuillant l'ennui 注11
Il ne reviendra plus
Et si mon cœur frissonne
C'est que descend la nuit
C'est que descend la nuit

  わたしたちはもう森へなんか行かない
  秋がもうそこに来ている
  わたしは春を待とう
  憂鬱の花びらをむしりながら
  春はもう戻らないわ
  そしてわたしの心が震えるとしたら
  それは夜のとばりが下りるから
  それは夜のとばりが下りるから


effeuiller la marguerite


Nous n'irons plus au bois
Nous n'irons plus ensemble
Ma jeunesse fout l'camp
Au rythme de tes pas 注12
Si tu savais pourtant
Comme elle te ressemble
Mais tu ne le sais pas
Mais tu ne le sais pas

  わたしたちはもう森へなんか行かない
  わたしたちはもういっしょに行かない
  わたしの青春は逃げて行く
  あなたの歩調に合わせて
  だけどあなたが知ってくれたら
  どんなに青春があなたに似ているか
  でもあなたはそれを知らない
  でもあなたはそれを知らない

Ma jeunesse fout l'camp 注13
A la morte fontaine
Et les coupeurs d'osier
Moissonnent mes vingt ans

  わたしの青春は逃げて行く
  枯れた泉へと
  そして柳を切る木こりたちが
  わたしの二十年の歳月を刈り取る

[注]
1 foutre le camp兵隊が野営地を逃げ出すということから、(話し言葉で)「立ち去る、ずらかる」=ficher le camp。
2 tout au long de「…の間ずっと、を通じて」
3 bras ballants「腕を揺らして、腕をだらりとさせて」
4 vingt ans「二十歳」は「青春」の意味でも用いられる。ここでは生きてきた20年間と捉えたほうが意味がつながる。
5 mirliton「小さな管楽器」または「ルイ15世金貨」。de mirliton「俗っぽい、下手な」
6 作詞したボンタンペッリは男性なので、garçons「男の子たち」ではなくfilles「娘たち」と歌っている。chantait aux garçons「男の子たちに歌う」ではなくrêvant aux garçons「男の子たちを思いながら」と判断。
7 ここはアルノーの歌を聴きとって書いたが、この部分を、ボンタンペッリはattendre la violetteと、アルディーはchercher la violetteと歌っている。
8 lesはles enfantsではなくdes chansons。
9 rompre l'amarre=rompre les amarres「繋留索が切れて漂流する」ということから、「関係を断つ」という意味に。
10 アルノーはこの節を歌っていない。
11 effeuiller la marguerite「マーガレットで恋の花占いをする」という成句がある。elle (il) 彼女(彼)は私をm'aime愛している, un peuちょっぴり, beaucoupいっぱい, passionnément熱烈に, à la folie気が狂うほどに, pas du tout全然(愛していない)。…と花びらを1枚ずつむしりながら当てはめていく。マーガレットの代わりにl'ennuiを数えながら「春が戻って来る、戻って来ない」と言いながら春を待つわけか。そしてまた、printempsは「青春」の代名詞でもある。
12 ここで初めて登場する「あなたtu」にelle すなわちma jeunesseが似ているという。ボンタンペッリの男性の立場で考えると、去っていくあなたと去っていく青春が似ているということで理解できるが、そのままアルノーとアルディの歌詞にされているので妙に感じられる。しかし、日本語では名詞の性別がないので、訳してしまえば違和感が解消される。
13 アルノーだけがこの部分を付け足して歌っている。



コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top