2015
06.12

娘よMa fille

Isabelle Boulay


前回のリーヌ・ルノーLine Renaudの「針仕事に精をお出しTire l'aiguille」は結婚を明日に控えた母子のお話でしたが、今回は、いよいよ結婚して出て行く娘に語りかける内容の歌。ケベック州出身の歌手、イザベル・ブーレイIsabelle Boulayの「娘よMa fille」です。

ポルトガルやブラジルでは、縁結びの聖人アントニウス(エジプトの聖人の大アントニウスとは別人)が歿した前日の6月12日は「恋人の日」とされ、恋人同士との縁を深めるためにフォトフレームやチョコレートやお花を送りあう習慣があります。ジューン・ブライドという言葉もありますが、ヨーロッパではこの日を選んで結婚式を挙げるカップルも多く、リスボン市ではこの日に市の主催で合同結婚式が行われます。きょうは大安ですし、日本でも結婚式が多いことでしょう。東京は雨。Mariage pluvieux mariage heureux!すなわち、雨の日の結婚式は幸運をもたらすとか。

イザベル・ブーレイは1972年生まれで、セリーヌ・ディオンCéline Dionよりも少し若く、セリーヌが英語でも歌うのに対し、彼女はフランス語でのみ歌い、個性的な歌い方のセリーヌに対し、正統派的な歌い方を守っています。1990年に、友人たちが彼女の同意なしにソング・フェスティバルに彼女を登録したところ、みごとに歌い切ったことがデヴューのきっかけとなりました。翌年、彼女はジャック・ブレルJacques Brelの「アムステルダムAmsterdam」を歌い、グランビーソングフェスティヴァルで優勝。1993年には、フランスのペリゴールで開催された音楽フェスティヴァルにラジオカナダ代表として出場し、フランス語シャンソンの部門で最高の歌手賞を得ました。フランスでの成功に続いて、ロックオペラ「スターマニアStarmania」の新演出のため新人を探していたソングライターのリュック・プラモンドンの目に止まり、Marie-Jeanneの役を演じました。1996年には、デビューアルバム:Fallait pasをリリース。ケベック州とヨーロッパの両方で、大きな成功を収めています。フランスで最も売れているシングルアルバムは、2000年にリリースされた「私に話してParle-moi」。2001年に、ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジークVictoires de la Musiqueの新人アーティスト賞・新人アルバム賞(2000年のMieux qu'ici-basで)を受賞。2008年には、芸術への貢献が認められ、彼女の故郷の市長からケベックの国民議会勲章が授与されました。また同年、自分のプロデューサーであるマルク=アンドレ・チコインMarc-André Chicoineとの間に男児を出産しました。2014年にリリースされた最新アルバム:Merci Serge Reggianiはセルジュ・レジアーニに捧げたもので、カナダとフランスで瞬く間にゴールド・ディスクさらにプラチナ・ディスクとなりました。

この曲は2002年にリリースされたライブ・アルバム:Au moment d'être à vousに収録されています。それ以前に発表されたものかどうか、確認できていません。とてもクラシカルな美しい旋律で、娘に呼びかける内容の歌詞もすてきで、母と娘ともに自立し友達として末永く付き合っていくという理想的な関係を描いています。



Ma fille                 娘よ
Isabelle Boulay           イザベル・ブーレイ


Ma fille, mon enfant
Je vois venir le temps
Où tu vas me quitter
Pour changer de saison
Pour changer de maison
Pour changer d’habitudes
J’y pense chaque soir
En guettant du regard 注1
Ton enfance qui joue
A rompre les amarres
Et me laisse le goût
D’un accord de guitare

  私の娘、私の子
  その時が来たのね
  あなたが私のもとを去って
  季節を変え
  家を変え
  習慣を変える日が
  私はそのことを毎晩考える
  幼かったあなたが絆を断ち切るなんてまねをし
  私にギターの和音の風合いを残すのを
  じっと見守りながら

Ma fille2


Tu as tant voyagé
Et moi de mon côté
J’étais souvent parti
Des Indes à l’Angleterre
On a couru la Terre
Et pas toujours ensemble
Mais à chaque retour
Nos mains se rejoignaient
Sur le dos de velours
D’un chien qui nous aimait
C’était notre façon
D’être bons compagnons

  あなたはたくさん旅をした
  私のほうも
  インドやイギリスによく出かけた
  私たちは地球を駆け回ったけれど
  いつもいっしょとは限らなかった
  でも戻ってくるときはいつも
  私たちの手は結ばれ合った
  私たちを愛していた犬の
  滑らかな背中のうえで
  それはよき仲間でいるための
  私たちのやりかただった

Mon enfant, mon petit
Bonne route... Bonne route 注2
Tu prends le train pour la vie
Et ton cœur va changer de pays

  私の娘、私の子
  行ってらっしゃい…よい旅を
  あなたは人生のための列車に乗る
  そしてあなたの心は他国に向かう

Ma fille, tu as vingt ans
Et j’attends le moment
Du premier rendez-vous
Que tu me donneras
Chez toi ou bien chez moi
Ou sur une terrasse
Où nous évoquerons
Un rire au coin des yeux
Le chat ou le poisson
Qui partageaient nos jeux
Où nous épellerons 注3
Les années de ton nom

  私の娘よ、あなたは20歳
  そして私は待っているわ
  あなたが私に提供してくれる
  最初の再会を
  あなたの家か私の家での
  あるいはどこかのテラスでの
  そこでは私たちは
  目の隅に微笑を浮かべるでしょう
  猫か魚が
  私たちの戯れに加わるでしょう
  そこでは私たちは
  あなたが新しい名になってから辿った年月について
  スペルを言うみたいにひとつひとつ話すでしょう

Ma fille1


A vivre sous mon toit
Il me semble parfois
Que je t’avais perdue
Je vais te retrouver
Je vais me retrouver
Dans chacun de tes gestes
On s’est quittés parents 注4
On se retrouve amis
Ce sera mieux qu’avant
Je n’aurai pas vieilli
Je viendrai simplement
Partager tes vingt ans

  同じ屋根の下で生活しつつ
  私はときどきあなたを失ってしまっていたみたい
  私はあなたを再発見し
  自身を再発見するわ
  あなたのひとつひとつの身振りのうちに
  私たちは親子として離れ
  友達としてまた出会うのよ
  それは以前よりもいい状態でしょうね
  私は年老いたりせず
  ただ率直に
  あなたの20歳の年齢に付き合うでしょう

Mon enfant, mon petit
Bonne route... Bonne route
Sur le chemin de la vie
Nos deux cœurs vont changer de pays 注5

  私の娘、私の子
  行ってらっしゃい…よい旅を
  人生の途上で
  私たち二人の心は別の国に別れる

[注]
1この節のこの行以後は、「私の青春は逃げて行く(もう森へなんか行かない)Ma jeunesse fout l'camp」の第4節の、Ma jeunesse fout l'camp sur un air de guitare「わたしの青春は逃げて行く ギターの調べに乗って」…Ma jeunesse fout l'camp Elle a rompu l'amarre「わたしの青春は逃げて行く きずなを断ち切り」という表現を思い起こさせる。
2 Bonne route !「よい旅を、ごきげんよう」
3 Les années de ton nom「あなたの名前の年月」を、 épeler「綴りを言う、たどたどしく読む」。ということで、このように訳した。
4 Il se sont quittés bon amis.「彼らはいい友達として別れた。」という例文に示されるように、「…として別れる」という表現。parentは複数では「両親、父母」となるが、ここで私たちというのは母と娘なので、「親子として」の意味。次行の「友達として」は分かりやすい。
5 Nos deux cœurs vont changer de paysお互いが違う国に住むことを言っている。第3節末の、Et ton cœur va changer de paysは、娘が他国に向かうことを示している。



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