
「愛の讃歌Hymne à l'amour」は1949年に、エディット・ピアフÉdith Piafが作詞し、ピアフおよびマルグリット・モノーMargrite Monnot が作曲し、本来は、イヴェット・ジローYvette Giraudが歌うことになっていました。当時ピアフと恋仲だったマルセル・セルダンMarcel Cerdanというミドル級の世界チャンピオンのボクサーへの想いを込めて、ピアフはこの曲を書いたそうです。同年、彼は、リベンジ試合のため(ピアフに会うためともいわれます)ニューヨークに向かう途中、飛行機事故で帰らぬ人となります。10月28日のことでした。その日のステージで、ピアフは「マルセル・セルダンのために歌います。」と言って、この歌を歌い、ステージの上で倒れてしまいます。ピアフは恋多き女性で、口の悪いフランス人はhomme mangeuse(意味はご想像ください)と呼ぶそうですが、セルダンとの恋は特別だったようで、クロード・ルルーシュClaude Lelouchの映画「恋に生きた女ピアフ Édith et Marcel」(1983年)でも、2007年に封切りされた「エディット・ピアフ~愛の讃歌~La Môme」でも、この恋は中心テーマになっています。ピアフは歌詞の内容通りに後追いすることはありませんでしたが、この歌は彼女の一番の代表作となりました。
原詞は、岩谷時子が翻案した歌詞とはまるで違って、あなたのためだったらどんな背徳的なことだってなんだってやるという、かなり毒気のあるものです。永田文夫や長谷川きよしの作った歌詞はその内容に忠実なものです。(下の動画の美輪明宏の歌の前半の語りの部分を永田文夫の歌詞だと思い込んでいましたが、コメントいただき、間違いに気づきましたので訂正いたします。)
私も今回、邦訳の代わりに、原詞の意味に即して日本語で歌える歌詞を作ってみました。そのなかで気づいたんですが、原詞には「あなたを愛しているje t’aime」という表現は一度も出てきません。「あなたがわたしを愛しているtu m’aimes」のみ繰り返します。愛されているという確信ほど強いものはなく、それさえあれば何でもできるというのです。セルダンには妻子があり、彼の愛を確信することは彼女にとって一番重要なことだったんでしょう。分かる気がします。そして最後に、あの世で「わたしたちは愛し合うon s'aime」というのです。
エディット・ピアフの渾身の歌唱。
美輪明宏は、自ら訳した日本語詞を語り、その後、フランス語で歌っています。たしかに迫力があります。相手は逃げたくなるかも。
Hymne à l'amour 愛の讃歌
Édith Piaf エディット・ピアフ
Le ciel bleu sur nous peut s'effondrer
Et la terre peut bien s'écrouler
Peu m'importe si tu m'aimes
Je me fous du monde entier
Tant qu'l'amour inond'ra mes matins
Tant que mon corps frémira sous tes mains
Peu m'importe les problèmes
Mon amour puisque tu m'aimes
青い空が崩れ
大地が張り裂けても
平気よ あなたに
愛されていれば
愛に満たされた朝
抱かれて震えるからだ
なにも怖くはないわ
あなたの愛があれば

J'irais jusqu'au bout du monde
Je me ferais teindre en blonde
Si tu me le demandais
J'irais décrocher la lune
J'irais voler la fortune
Si tu me le demandais
地の果てまでも行くわ
髪だって染めるわ
あなたが望めば
月だって 財宝だって
盗みに行くわ
あなたが望めば
Je renierais ma patrie
Je renierais mes amis
Si tu me le demandais
On peut bien rire de moi
Je ferais n'importe quoi
Si tu me le demandais
国を裏切り
友を裏切るわ
あなたが望めば
笑われたってかまわない
何だってするわ
あなたが望めば

Si un jour la vie t'arrache à moi
Si tu meurs que tu sois loin de moi
Peu m'importe si tu m'aimes
Car moi je mourrais aussi
Nous aurons pour nous l'éternité
Dans le bleu de toute l'immensité
Dans le ciel plus de problèmes
Mon amour crois-tu qu'on s'aime
いつか別れの日が来て
あなたが死んでしまっても
つらくはないわ
私もついて行く
永遠のいのちを得て
広い空のかなたの
悩みのない世界で
二人は愛し合うわ
Dieu réunit ceux qui s'aiment
神に結ばれるのよ
Comment:8
コメント
やはり、越路吹雪さんのも、乗せていただけないかなあなんて言っちゃって。
岩谷時子さんが、随分と表現を変えた詞をつけましたが、原曲の詩のままだと、日本人の印象にはきついと思われたのでしょうかね。
岩谷時子さんが、随分と表現を変えた詞をつけましたが、原曲の詩のままだと、日本人の印象にはきついと思われたのでしょうかね。
アキ
2020.06.28 07:20 | 編集

そもそも私の間違いがいけなかったので、こちらの責任です。温かいお言葉ありがとうございます。
朝倉ノニー
2017.04.25 20:04 | 編集

早速、ありがとうございます。
コメントを書いた後、文章を直そうと思ったら
もう、直せないんですね。
余計なことを書きました。
朝倉様のことはいつも尊敬しております。
コメントを書いた後、文章を直そうと思ったら
もう、直せないんですね。
余計なことを書きました。
朝倉様のことはいつも尊敬しております。
岩元ガン子
2017.04.25 07:58 | 編集

何をもとにしたのか不明ですが、三輪明宏の語りの部分が永田先生の作られたものだと思い込み、それを聴いて、語るためのもので旋律に合わせて歌うためのものではないと判断した次第です。ご指摘いただき、調べ直しましたら、三輪明宏自身が訳した内容だったんですね。永田先生の歌詞自体を知っていて、それでは歌えないなどと申し上げたのではありません。日本語歌詞に関しては不案内なことがしばしばあると思いますが、悪意はありません。記事を訂正いたします。ありがとうございました。
朝倉ノニー
2017.04.25 06:52 | 編集

「永田文夫の作った歌詞はその内容に忠実なものですが、旋律に合わせて歌えるようにはできていません。」とありますが、本当に永田先生の歌詞で歌ったことがありますか?
旋律の通りに歌える訳詩をモットーにしていらした永田先生の名誉にかけてコメントをしました。
「三輪明宏は、永田文夫の歌詞を語り、その後、フランス語で歌っています。」これは誤りです。"美輪さん”は永田先生の歌詞を語ってはいらっしゃいません。
旋律の通りに歌える訳詩をモットーにしていらした永田先生の名誉にかけてコメントをしました。
「三輪明宏は、永田文夫の歌詞を語り、その後、フランス語で歌っています。」これは誤りです。"美輪さん”は永田先生の歌詞を語ってはいらっしゃいません。
岩元ガン子
2017.04.24 23:22 | 編集

ありがとうございます!
練習します。
朝倉さんに感謝申し上げます。
練習します。
朝倉さんに感謝申し上げます。
直子
2016.08.03 19:05 | 編集

どうぞ歌ってください。言葉のはめ方はご都合のいいようになさってください。
はまりにくい所など、適当にアレンジしてくださってもいいですよ。
はまりにくい所など、適当にアレンジしてくださってもいいですよ。
朝倉ノニー
2016.07.30 06:24 | 編集

はじめまして。朝倉さんの訳詞で歌わせて頂いてもよろしいでしょうか?(^^)
直子
2016.07.30 02:22 | 編集
