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2015
04.28

ジョジョJojo

Jacques Brel Voir un ami pleurer


Jojo1.jpg1955年に、ブレルが妻子とともにパリ郊外のモントルイユに居を構えた時期に、ジョルジュ・パスキエGeorges Pasquier、通称ジョジョJojoに出会いました。ジョジョはブレルの運転手になっただけでなく、マネージャー、最も親しい友となりました。ポリネシアに移住した翌年の1974年、ブレルが「アイスコイ2号l'Askoy」で船出し大西洋横断を成し遂げた時期にジョジョは亡くなりました。その翌年、ブレルは購入した飛行機をジョジョJojoと名付け、タクシー飛行機としてポリネシアの島々に住む人々に役立てました。

ジョジョに捧げたこの曲「ジョジョJojo」は、12月に取り上げた「涙(友が泣くのを見る) Voir un ami pleurer」と同様、1977年の最後のアルバム「偉大なる魂の復活(レ・マルキーズ)Les Marquises」に収められています。非常に非常に悲しい曲です。



Jojo               ジョジョ
Jacques Brel           ジャック・ブレル


Jojo
Voici donc quelques rires
Quelques vins quelques blondes 注1
J'ai plaisir à te dire
Que la nuit sera longue
A devenir demain
Jojo
Moi je t'entends rugir
Quelques chansons marines
Où des Bretons devinent
Que Saint-Cast doit dormir 注2
Tout au fond du brouillard

  ジョジョ、
  さてここには笑いがあり
  ワインがあり煙草がある
  僕はうれしいよ
  明日になるまで
  夜は長いよと君に言えることが
  ジョジョ、
  僕はね君が吠えるようにして
  船乗りの歌を歌うのを聴く
  その歌ではブルターニュ人たちが想像している
  サン=カが
  きっと霧の奥深くで眠るだろうと

Jojo2.jpg


Six pieds sous terre Jojo tu chantes encore
Six pieds sous terre tu n'es pas mort

  地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ歌っている
  地面の下6フィートにいる君はまだ死んでいない

Jojo
Ce soir comme chaque soir
Nous refaisons nos guerres
Tu reprends Saint-Nazaire 注3
Je refais l'Olympia
Au fond du cimetière
Jojo
Nous parlons en silence
D'une jeunesse vieille 注4
Nous savons tous les deux
Que le monde sommeille
Par manque d'imprudence

  ジョジョ
  今夜はいつもの夜のように
  僕たちはまた戦いをやろう
  君はサン=ナゼールを奪還する
  僕はオランピアのステージを再演する
  墓地の奥で
  ジョジョ
  僕たちは声に出さず話す
  老けた若者たちのことを
  僕たちは二人とも分かっている
  無分別さが欠けると
  世界が活動を停止することを

Jojo3.jpg


Six pieds sous terre Jojo tu espères encore
Six pieds sous terre tu n'es pas mort

  地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ望んでいる
  地面の下6フィートにいる君はまだ死んでいない

Jojo
Tu me donnes en riant
Des nouvelles d'en bas
Je te dis:“Mort aux cons !” 注5
Bien plus cons que toi
Mais qui sont mieux portants 注6
Jojo
Tu sais le nom des fleurs
Tu vois que mes mains tremblent
Et je te sais qui pleure
Pour noyer de pudeur 注7
Mes pauvres lieux communs 注8

  ジョジョ
  君は笑いながら僕に
  地下のニュースを知らせてくれる
  僕は「くたばれバカたちめ」と君に言う
  君よりずっとバカだ
  だがずっと元気なやつらだ
  ジョジョ
  君は花々の名を知っている
  君は僕の震える手を見る
  そして慎み深さゆえに僕の月並みな言葉をぼやかそうと
  君が涙を流すことを僕は知っている

Jojo4.jpg


Six pieds sous terre Jojo tu frères encore 注9
Six pieds sous terre tu n'es pas mort

  地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ兄弟だ
  地面の下6フィートにいる君はまだ死んでいない

Jojo
Je te quitte au matin
Pour de vagues besognes
Parmi quelques ivrognes
Des amputés du cœur
Qui ont trop ouvert les mains
Jojo
Je ne rentre plus nulle part
Je m'habille de nos rêves
Orphelin jusqu'aux lèvres 注10
Mais heureux de savoir
Que je te viens déjà 注11

  ジョジョ
  僕は半端な用事のために
  朝に君のもとを離れる
  酔っぱらいたちのなかで
  胸が張り裂ける思いの人々は
  大手を広げて悲しみ過ぎた
  ジョジョ
  僕はもうどこへも戻らない
  僕は僕たちの夢を身にまとう
  僕は口がきけないほどになったなみなしごだ
  だが幸せだ
  僕は君のところに行くんだから

Six pieds sous terre Jojo tu n'es pas mort
Six pieds sous terre Jojo je t'aime encore.

  地面の下6フィートにいるジョジョ、君はまだ死んでいない
  地面の下6フィートにいるジョジョ、僕は君をまだ愛している。

[注]
1 blondeは「金髪女性」ではなく、「淡色ビール」あるいは「黄色種の紙巻たばこ」のいずれかで、どちらともとれるが後者を選んだ。
2 Saint-Castは、ブルターニュのサン・カ・ル・ギルドSaint-Cast-le-Guildoの港の埠頭にある灯台Feu du port de Saint-Castであろう。
3 Saint-Nazaireサン=ナゼール港はフランス初の大西洋側の港で、第2次大戦中はドイツ海軍の重要な根拠地であった。造船業がさかん。
4 jeunesseは集合名詞で、「若者たち」「青年層」。革命的精神を尊重するブレルは、当時の若者たちが、imprudence「軽率さ」「無分別」の欠けた、覇気のない状態であることを憂えてvieille「老けた」と形容している。
5 con「馬鹿、まぬけ」。Mort à…!=À mort…!「…を殺せ、やっつけろ」。
6 être bien portant「体の調子がよい」
7 noyer「溺死させる」が本義だが、「水で薄める」のニュアンスから「ぼかす、紛らす、途方にくれさせる」といった意味でも用いられる。
8 lieux communs「常套句、月並みな話題」
9 名詞のfrère「兄弟」からfrèrerという動詞を作り、その2人称単数形にしている。
10 orphelin jusqu'aux lèvres辛い孤独な境遇のためにしゃべれなくなった「みなしご」に自分をたとえている。
11 当時ブレルはすでに癌に冒されていて、自分も遅かれ早かれ死んでジョジョのところに行くということを言っている。



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