2015
05.05

群衆La foule

Édith Piaf la foule


今回はエディット・ピアフÉdith Piafの「群衆La foule」です。原曲はアンヘル・カブラルÁngel Cabral作曲の「誰も私の悩みを知らないQue nadie sepa mi sufrir」、アルゼンチンをルートとする南米ペルーのワルツです。恋人だったマルセル・セルダンMarcel Cerdan亡きあと1957年に訪れた南米アルゼンチンでピアフはこの曲と巡り合いました。同年、ミッシェル・リヴゴーシュMichel Rivgaucheによってフランス語に翻案され、翌58年にピアフがオランピアで創唱します。原曲も、ピアフのフランス語版の成功の後、Amor de mis amoresという名でリメイクされ、多くの歌手に歌われています。

ペルーの原曲Que nadie sepa mi sufrirは恋人を失った男の嘆きを歌っています。



後に作られたAmor de mis amores



ピアフの「群衆」。とり憑かれたようなしぐさ、それはこの曲に限ったことなのでしょうか?



オランダのウェンデ・スナイデルスWende Snijdersは、非常に研ぎ澄まされた感性のある歌手で、以前から注目しています。ただの振り付けや表現とはまるで別物で、身体感覚の良さが歌につながっていて、全身が歌っている感じがします。



La foule            群衆
Édith Piaf           エディット・ピアフ


Je revois la ville en fête et en délire 注1
Suffoquant sous le soleil et sous la joie
Et j'entends dans la musique les cris, les rires
Qui éclatent et rebondissent autour de moi
Et perdue parmi ces gens qui me bousculent
Étourdie, désemparée, je reste là
Quand soudain, je me retourne, il se recule,
Et la foule vient me jeter entre ses bras...

  思いだすわ 街はお祭で浮かれている
  太陽の熱と喜びで息が詰まりそうになりながら
  音楽に混じって わたしのまわりではじけて跳ねる
  叫び声、笑い声が聞こえる
  わたしを突き飛ばす人たちにまぎれ
  ぼおっとなり、途方にくれ、つっ立っている
  突然、わたしは振り向き、その人は後ずさりし、
  群衆がわたしを彼の腕の中に飛び込ませる…

La foules2


Emportés par la foule qui nous traîne
Nous entraîne
Écrasés l'un contre l'autre
Nous ne formons qu'un seul corps
Et le flot sans effort 注2
Nous pousse, enchaînés l'un et l'autre
Et nous laisse tous deux
Épanouis, enivrés et heureux.

  わたしたちを引きずり押し流す
  群衆に運ばれ
  たがいに相手に押し付けられ
  わたしたちは一体になる
  そして人波はやすやすと
  わたしたちを押していく、たがいにつながったまま
  そしてわたしたち二人を
  晴れやかな、うっとりした、幸せな気分にさせる

Entraînés par la foule qui s'élance
Et qui danse
Une folle farandole
Nos deux mains restent soudées
Et parfois soulevés
Nos deux corps enlacés s'envolent
Et retombent tous deux
Épanouis, enivrés et heureux...

  駆け出して
  ファランドールを踊る
  群衆に押し流され
  わたしたちのふたつの手は固く結ばれたまま
  ときには押し上げられて
  つながったわたしたちのふたつの体は宙を舞い
  そしていっしょにまた落ちて来る
  晴れやかな、うっとりした、幸せな気分のまま…

La foule


Et la joie éclaboussée par son sourire 注3
Me transperce et rejaillit au fond de moi
Mais soudain je pousse un cri parmi les rires
Quand la foule vient l'arracher d'entre mes bras...

  彼の微笑みに引き出されたうれしさが
  わたしを貫き芯まで浸み込む
  でも突然に 周囲の笑い声にまぎれてわたしは叫ぶ
  群衆がわたしの腕から彼をもぎとろうとするとき

Emportés par la foule qui nous traîne
Nous entraîne
Nous éloigne l'un de l'autre
Je lutte et je me débats
Mais le son de ma voix
S'étouffe dans les rires des autres 注4
Et je crie de douleur, de fureur et de rage
Et je pleure...

  わたしたちを引きずり押し流す
  群衆に運ばれ
  わたしたちはたがいに遠ざかる
  わたしはあらがい、もがく
  でもわたしの声は
  ほかの人たちの笑い声にかき消され
  わたしは悲しみと、怒りと、狂おしさで叫ぶ
  そしてわたしは泣く…

Entraînée par la foule qui s'élance
Et qui danse
Une folle farandole
Je suis emportée au loin 注5
Et je crispe mes poings, maudissant la foule qui me vole
L'homme qu'elle m'avait donné
Et que je n'ai jamais retrouvé...

  駆け出して
  ファランドールを踊る
  群衆に押し流され
  わたしは遠くへ運ばれる
  わたしはこぶしを握り締める、一旦与えてくれた男を
  わたしから奪い去った群衆を呪いながら
  そしてその男にはもう二度と会えなかった…

La foules3


[注] 過去のことを思い出している内容だが、現在形で臨場感を出し、最後のみ過去形が用いられている。訳文もそれに合わせた。
1 revoir「再び見る」という意味もあるが、ここでは「思い出す」の意味。
2 sans effort「やすやすと、楽々と」
3 éclabousser本来は「泥・水をはねる、巻き添えにする」の意味。
4 étouffer は「窒息させる」だが、s'étoufferには「(音が)消える」の意味がある。
5 受動態



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