
ミッシェル・サルドゥーMichel Sardouは、珍しくも保守反動、右翼を自称するシャンソン歌手で、自身の政治的メッセージを込めた歌も数多く出しています。
この歌「恋の病La maladie d'amour」に関しては、右翼であろうが左翼であろうが無関係な普遍的テーマで、恋はすべての人がかかる病(やまい)だということを歌っています。ま、日本で、「お医者さまでも草津の湯でも…」と歌われてきたのと同じ内容。
1973年の同名のアルバムに収録されています。
サルドゥーとイヴ・デスカYves Desscaが作詞し、 作曲者は、「いつものようにComme d'habitude」を作曲したジャック・ルヴォーJacques Revauxとされていますが、実は、この曲の母体は、バロックのパッヘルベルのカノンKanon und Gigue in D-Durです。シャンソンには、詩が歌詞になることが多いだけではなく、曲さえも由緒ある出自のものがかなりあるようです。
パッヘルベルのカノンはこちら。
この曲よりもっとパッヘルベルのカノンの原型を留めているのが、アラン・バリエールAlain BarrièreのTout s'en va déjàです。(歌詞を訳してはみましたが、言葉面だけの内容に思え、ご紹介する気になれませんでした。)
La maladie d'amour 恋の病
Michel Sardou ミッシェル・サルドゥー
Elle court elle court
La maladie d'amour
Dans le cœur des enfants 注1
De sept à soixante dix-sept ans 注2
Elle chante elle chante
La rivière insolente
Qui unit dans son lit 注3
Les cheveux blonds les cheveux gris 注4
Elle fait chanter les hommes et s'agrandir le monde
Elle fait parfois souffrir tout le long d'une vie
Elle fait pleurer les femmes elle fait crier dans l'ombre
Mais le plus douloureux c'est quand on en guerit
巡るよ巡る
恋の病は
7歳から77歳までの
末裔たちの心のなかを
恋の病は 歌い讃える
驕れる川を
その川床で
金髪たち 銀髪たちが結ばれる
恋の病は 男たちに歌わせ 世界を拡げる
恋の病は ときには生涯ずっと苦しませる
恋の病は 女たちに涙を流させ 陰で泣き叫ばせる
だが もっとも苦しいのは恋の病が癒える時

Elle court elle court
La maladie d'amour
Dans le cœur des enfants
De sept à soixante dix-sept ans
Elle chante elle chante
La rivière insolente
Qui unit dans son lit
Les cheveux blonds les cheveux gris
Elle surprend l'écolière sur le banc d'une classe
Par le charme innocent d'un professeur d'anglais
Elle foudroie dans la rue cet inconnu qui passe
Et qui n'oubliera plus ce parfum qui volait
巡るよ巡る
恋の病は
7歳から77歳までの
末裔たちの心のなかを
恋の病は 歌い讃える
驕れる川を
その川床で
金髪たち 銀髪たちが結ばれる
恋の病は 教室の席に座る女生徒を突然襲う
英語の先生の純な魅力で
恋の病は 通りを歩く誰かさんを一撃し
漂うあの香りを忘れられなくさせる
Elle court elle court
La maladie d'amour
Dans le cœur des enfants
De sept a soixante dix-sept ans
Elle chante elle chante
La rivière insolente
Qui unit dans son lit
Les cheveux blonds les cheveux gris
巡るよ巡る
恋の病は
7歳から77歳までの
末裔たちの心のなかを
恋の病は 歌い讃える
驕れる川を
その川床で
金髪たち 銀髪たちが結ばれる

[注]
1 enfantは、子供という意味のみならず、複数形でアダムの末裔たる人類を示す場合がある。77歳までを含めると言っているわけだから、これに該当しよう。
2 「ドゥセタスワサントディセタン」という音の響きが重要なだけで、80歳でも仲間外れにされたわけではないので、ご心配なく。
3 litは川床とベッドをかけて言っている。
4 les cheveux blonds はブロンドの若い人々、les cheveux grisはグレーの髪の高年齢者。それらすべてがということで、それぞれ同士とも相互にとも言っていない。いろいろあろう。
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