2014
09.05

ひとりっきりSolitaire

Martine Clemenceau Solitaire


引き続きマルティーヌ・クレマンソーMartine Clémenceauです。前回の曲の10年後の1981年に歌った自作の曲「ひとりっきりSolitaire」を取り上げましょう。この曲は彼女の一番のヒット作となりました。

「La solitude孤独」というタイトルの曲をいろんな歌手が歌っています。レオ・フェレLéo Ferré、バルバラBarbara、ジョニー・アリディーJohnny Hallyday、ミレイユ・マチューMireille Mathieu等々。そしてご存知ジョルジュ・ムスタキGeorges Moustakiの「私の孤独Ma solitude」は「孤独」を人格化して自分の連れ合いの女性のように表現していますね。

この曲は形容詞のSolitaireをタイトルにしています。「ひとりぼっち」というよりももっと積極的でスケールの大きい「ひとりっきり」という意味合いです。大自然のなかに自分しかいない、ひとりっきりだという経験のすばらしさを教えてくれる歌詞です。



Solitaire             ひとりっきり
Martine Clémenceau     マルティーヌ・クレマンソー


En haut de l'Himalaya, y'a pas d'visiteurs
Pas d'synthétiseurs, pas d'harmoniseurs. 注1
En haut du Fuji-Yama, y'a pas d'computer
Pas d'agitateurs, on est tout seul.
Et c'est bien fini l'habitude, y'a personne, c'est la solitude.

  ヒマラヤの頂上に、訪問者はいない
  シンセサイザーもなく、ハーモニーを奏でる人たちもいない。
  富士山の頂上に、コンピューターはなく
  アジテーターもいない、たったひとり
  そして習慣は消えうせ、誰もいない、それは孤独。

solitaire2.jpg


C'est beau comme un vol d'hirondelles.
C'est chaud comme un nouveau soleil.
Froid comme la grisaille, la brume d'hiver.
Solitaire, on se sent gagnant, solitaire, on est différent.
C'est bon d'être toute seule, solitaire.

  それはツバメの飛翔のように美しい。
  それは生まれたての太陽のように熱い。
  グリザイユ画のように、冬の霧のように寒々しい。
  ひとりっきりで、ひとは勝ちを得たように感じ、ひとりっきりで、ひとは独自性を自覚する。
  たったひとりでいるのはいいこと、ひとりっきり。

Solitaire4.jpg


Au cœur des champs de bruyère, y'a pas d'locataires
Pas de pensionnaires, pas de commentaires.
Plus haut que l'hélicoptère, y'a pas d'nucléaire, non, non, non
Pas de nucléaire, on est tout seul.
Et c'est bien fini l'habitude, y'a personne, c'est la solitude.

  ヒースの草原のまんなかには、借家人はいない
  下宿人もいない、コメントもない。
  ヘリコプターよりも上空には、原子力はない、ない、ない、ない
  原子力はない、たったひとり。
  そして習慣も消えうせ、誰もいない、それは孤独。

solitaire1.jpg


C'est beau comme les amants fidèles, bon comme le nectar des abeilles
Et froid comme la grêle sur la mer.
Solitaire, on est plus vivant, solitaire, on sort du néant.
Solitaire, plus près des Dieux qu'avant.
Là où le vertige est plus grand, là où on est plus un enfant
Et là où l'on meurt comme un géant, solitaire, solitaire, solitaire.

  それは誠実な恋人たちのように美しく、蜂蜜のように美味
  そして海に降る雹のように冷たい。
  ひとりっきりで、ひとはより生き生きとする、ひとりっきりで、ひとは虚無から抜け出す。
  ひとりっきりだと、以前にまして神に近づく。
  眩暈がさらに高まるところで、ひとがもっと子供になるところで
  そしてひとが巨人として死ぬところで、ひとりっきり、ひとりっきり、ひとりっきり。

[注] solitaireの男性形と女性形は同じ。この歌詞では、男でも女でもいいon「(不特定の)あるひと」が主役。
1 harmoniseurは辞書に無い。synthétiseurと語尾を合わせるために、harmoniste「和声をつける人、編曲家」の代わりに作ったのであろう。あとの行のcomputerとagitateurと同様、物と人を並べている。
2 là où…「…の場所に、…の場合に」



コメント
朝倉様 ごぶさたをしておりました。
洋楽和訳めったPOPSのめったです。
ジルベール・べコーの「故郷の九月」(ニール・ダイアモンドの"September Morn")以来のご連絡になります。

今回、若くして亡くなられた米国の女性歌手ローラ・ブラニガンの「哀しみのソリテアー」(Solitaire)を和訳したところ、元歌はマルティーヌ・クレマンソーの「ひとりっきりSolitaire」であることがわかり、調べるなかで朝倉様のブログに行きつきました。ローラの方は、米国の売れっ子ソングライターのダイアン・ウォーレンがトランプのゲーム「ソリティア」をモチーフに恋のやり取りの行き違いの歌詞にしていますが、元歌の歌詞は奥が深いですね!「ひとりっきり」ということの素晴らしさ、っていうのはなかなか気が付かないものです。
 いろんな洋楽ポップスを自分なりに和訳していますが、シャンソンが元歌ということで朝倉様のブログに行きついたのは感動しました(^^)。どうぞまた何かありましたらよろしくお願いいたします。
めったdot 2016.08.27 21:18 | 編集
めった様 お久しぶりです。
ご連絡ありがとうございます。

マルティーヌ・クレマンソーは、私がとても気にしている歌手のひとりです。「ひとりっきり」という邦題は私の発案ですが、この歌が英語の「哀しみのソリテアー」に翻案されたんですね。

魅力的な曲だからこそ翻案しようと思うのでしょう。私は英語の歌を翻案したシャンソンも好きでよく取り上げます。Les yeux ouverts(Dream a little dream of me), Chopin et toi(I like Chopin), C'est le printemps(It Might As Well Be Spring),L'amour c'est comme une cigarette(Morning Train)など。Etrange garçon(Nature boy)を取り上げた際に英語の歌詞を入れたら、引っかかって記事を凍結され、それを削って出し直しました。それからは英語の歌詞を出すのは控えようと…。

シャンソンと英語の歌とのつながりにはいろいろ面白いことがあります。歌詞内容が似ていたりまったく違っていたり。がらっと雰囲気が変わったり。めったさんは英語の歌に関して最も詳しい方だと思いますのでまた気が付かれたことがあったらどうぞ教えてください。
朝倉ノニーdot 2016.08.28 06:42 | 編集
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