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2015
05.02

うるわしの五月Joli mai

Yves Montand Joli mai


花粉たちもいなくなり、まさに「うるわしの五月」と呼ぶにふさわしいさわやかな季節です。
イヴ・モンタンYves Montandの歌う「うるわしの五月Joli mai」は、もともとボリス・アンドレエヴィッチ・モクロウソフБорис Андреевич Мокроусовが1945年頃に作曲し、ミハイル・ワシリーヴィッチ・イサコフスキーМихаил Васильевич Исаковскийが1962年に作詞した、「淋しいアコーディオンОдинокая гармонь」というロシアの曲。日本語では、歌声喫茶などでよく歌われ、加藤登紀子の「ロシアのすたるじい」にも収録されています。
フランス語版はカトリーヌ・ヴァルランCatherine Varlinが作詞。1963年に、クリス・マルケルChris Marker監督のドキュメンタリー映画「美しき五月Le joli mai」(ミッシェル・ルグランMichel Legrandが音楽を担当)にモンタンがナレーターとして出演し、歌いました。うるわしの5月を賛美するというより、行ってしまった五月を惜しむちょっと淋しい内容の歌です。

モンタン



原曲の「淋しいアコーディオン」



Joli mai                 うるわしの五月
Yves Montand            イヴ・モンタン


Joli mai, c'était tous les jours fête
Il était né coiffé de muguet 注1
Sur son cœur il portait la rosette
La légion du bonheur joli mai 注2
Sur son cœur il portait la rosette
La légion du bonheur joli mai.

  うるわしの五月、毎日がお祭りだった
  彼はスズランを髪に飾って生まれた幸運児で
  胸には薔薇飾りを付けていた
  しあわせ勲章、うるわしの五月
  胸には薔薇飾りを付けていた
  しあわせ勲章、うるわしの五月。

Joli mai1


On l'a gardé le temps de le croire
Il est parti pendant qu'on dormait
Emportant la clé de notre histoire
Joli mai ne reviendra jamais
Emportant la clé de notre histoire
Joli mai ne reviendra jamais.

  僕たちは彼を信じるあいだ彼を引き止めた
  僕たちが眠っているあいだに彼は行ってしまった
  僕たちの物語の鍵を持って
  うるわしの五月はもう戻って来ない
  僕たちの物語の鍵を持って
  うるわしの五月はもう戻って来ない。

Joli mai, notre amour était brève 注3
L'été vient qui mûrit le regret
Le soleil met du plomb dans les rêves
Sur la lune, on affiche complet 注4
Le soleil met du plomb dans les rêves 注5
Sur la lune, on affiche complet.

  うるわしの五月、僕たちの恋は短い
  おとずれた夏は悔いをつのらせ
  太陽は夢を重苦しくさせる
  月には、「空席なし」の札がかかる
  太陽は夢を重苦しくさせる
  月には、「空席なし」の札がかかる。

Joli mai, tu as laissé tes songes
Dans Paris pour les enraciner
Ton foulard sur les yeux des mensonges,
Et ton rouge dans la gorge de l'année 注6
Ton foulard sur les yeux des mensonges,
Et ton rouge dans la gorge de l'année

  うるわしの五月、君はパリに
  君の夢を根付かせようと残して行った
  嘘をつく君の目を覆うスカーフ、
  そして年が経っても胸に残る君の口紅
  嘘をつく君の目を覆うスカーフ、
  そして年が経っても胸に残る君の口紅

Joli mai3


[注] 精一杯努力したが解釈に不安が残る。
1 ilはjoli maiのことだが、擬人化した表現なので「彼」と訳した。スズランの花言葉は「幸福の再来」。前回の「すずらんの咲く頃Le temps du muguet」に書いたように5月1日は愛する人のしあわせを願ってスズランを贈る日。être né coiffé(頭に羊膜の一部をかぶって生まれた子供は幸運児とみなされたことから)「幸運に恵まれ続けている」という成句も裏にあるようだ。
2 la légion du bonheur:la Légion d’honnheur(正式にはL'ordre national de la légion d'honneur)「レジオン・ドヌール勲章」をもじっている。前行のrosette「リボンのばら結び」も勲章の「略綬、薔薇飾り」を意味する。ちなみに、イヴ・モンタン自身は受賞を拒否した。
3 amourは男性名詞だが、複数形で女性名詞扱いされることがあり、詩では単数形でも女性名詞扱いされることがあるので、ここではbrefが女性形になっている。
4 afficher complet「(劇場・ホテルなどが)満員(満席・満室)の表示を出す」。lune de miel「蜜月」など、月はロマンチックな夢想的な意味を持ち、自分がそれから締め出されたといった意味か。
5 mettre du plomb dans la tête「より慎重にさせる」の言い換えのような形で、plomb「鉛」は「重苦しさ」をあらわすのだろう。
6 rester dans la gorge「胸につかえている、忘れられない」といった意味をde l'annéeにつなげているようだ。




コメント
朝倉ノ二―さま

お陰様で、フランスの楽譜出版社からAmi Lointain (Yves Montand)の楽譜
を送ってもらえることになりました。Planete Partitionsという会社で、社員と思われるAuroreさんからメールを受領、注文しました。航空便代金が3€で
楽譜代金5.5€に比して高いのが気になりますが、とにかくピアノ用楽譜を入手できたので大満足です。アコーディオン楽譜はないようです。因みに、同社の楽譜や本を買うと、約10点の楽譜が希望するだけ無料でつけてもらえるというのは
嬉しいですね。ついつい追加でパリの空の下、枯葉なども買ってしまいました。
大変お世話様になりました。取り急ぎ、御礼まで。尾崎俊明(川崎市)
尾崎 俊明 (おざき としあき)dot 2021.05.05 14:27 | 編集
朝倉ノ二― さま
早速のお返事有難うございました。ご指摘の4曲目をi-tuneで買えるとの由。生憎小生i-tuneにはなじみがなく、購入方法がわかりませんが、知人に訪ねてみます。お手数でした。なお、私事ながら、小生、昭和音楽大学北校舎にあるシャンソン教室にて、青木裕史先生に、昨年末にお亡くなりになるまで歌唱指導を受けておりました。今は、後任の平野淑子(りり子)先生に習っておりますが、Joli maiはとても素敵な曲なので、授業で取り上げて頂けるかどうか交渉してみます。いろいろと有難うございました。取り急ぎ、御礼まで。尾崎俊明
尾崎 俊明dot 2021.04.29 10:27 | 編集
https://www.amazon.com/joli-mai-Original-Movie-Soundtrack/dp/B07G3VRFYW
の4曲目でしょうか?弾いているのはMichel LegrandではなくBoris Makroussovです。
これはi-tuneで買えます。
朝倉ノニーdot 2021.04.29 07:37 | 編集
ノ二―さんの歌物語、素敵です。「麗しの5月」(Joli mai)に触れた文章を拝読しました。その曲をミッシェル・ルグランがピアノでアレンジして弾いているのをYouTubeで聞きました。とても素敵なので、CDがあれば購入したいです。もしも、その情報をお持ちでしたら、ぜひお教えください。なお、小生はこの曲の原曲「寂しいアコーデイオン」のCD(ロシア語)はもっていますし、日本語訳でも原ロシア語でも、所属する混声コーラスで歌ったことがありますが、モンタンの仏語歌詞も好きです。宜しく願います。
尾崎 俊明dot 2021.04.28 15:00 | 編集
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