
前回、ジャクリーヌ・フランソワJacqueline Françoisの「春なのにC'est le printemps」を取り上げました。 続いて、レオ・フェレLéo Ferréの「春が来たC'est le printemps」。原題は同じですが別の曲です。
1964年にリリースされたアルバム:Ferré 64に収録されています。
C'est le printemps 春が来た
Léo Ferré レオ・フェレ
Y a la nature qu´est tout en sueur
Dans les hectares y a du bonheur
C´est l´printemps
自然界は汗だくになっている
何ヘクタールもにわたってしあわせが広がる
春だ
Y a des lilas qu´ont même plus l´temps
De s´faire tout mauves ou bien tout blancs
C´est l´printemps
リラがモーヴ色にあるいは真っ白になるのは
もうまもなくだ
春だ

Y a du blé qui s´fait du mouron 注1
Les oiseaux eux ils disent pas non
C´est l´printemps
麦が気をもんでいる
鳥たちだって否とは言わない
春だ
Y a nos chagrins qu´ont des couleurs
Y a même du printemps chez l´malheur
僕たちの悲しみも色づく
不幸な者の家にもまた春が来た
Y a la mer qui s´prend pour Monet 注2
Ou pour Gauguin ou pour Manet
C´est l´printemps
海は、モネの絵のよう
あるいはゴーギャンの絵あるいはマネの絵のようだ
春だ
Y a des nuages qui n´ont plus d´quoi 注3
On dirait d´la barbe à papa 注4
C´est l´printemps
雲はもうたくわえを失い
綿菓子みたいだ
春だ

Y a l´vent du nord qu´a pris l´accent
Avec Mistral il passe son temps 注5
C´est l´printemps
北風は調子を強めた
ミストラルとともに時を過ごすのだ
春だ
Y a la pluie qu´est passée chez Dior 注6
Pour s´payer l´modèle Soleil d´Or 注7
雨はディオールの店に立ち寄る
ソレイユドール薔薇のモデルを自分に奮発するために
Y a la route qui s´fait nationale
Et des fourmis qui s´font la malle 注8
C´est l´printemps
国道になった道がある
そして旅支度をしているアリたちがいる
春だ
Y a d´la luzerne au fond des lits 注9
Et puis l´faucheur qui lui sourit
C´est l´printemps
臥所の奥にウマゴヤシが生えている
そしてそれに微笑みかける幽霊グモがいる
春だ
Y a des souris qui s´font les dents 注10
Sur les matous par conséquent 注11
C´est l´printemps
オス猫たちに向かって
歯を研ぐネズミたちがいる、だから
春なんだ

Y a des voix d´or dans un seul cri
C´est la Sixtine qui sort la nuit 注12
ただ一つの叫びのなかにも数々の黄金の響きがある
それは夜を追い払うシスティナ礼拝堂だ
Y a la nature qui s´tape un bol
A la santé du rossignol
C´est l´printemps
自然は丸薬を呑む
ナイチンゲールの健康のために
春だ
Y a l´beaujolais qui la ramène 注13
Et Mimi qui s´prend pour Carmen 注14
C´est l´printemps
ボジョレー・ワインがのさばる
そしてミミがカルメンを気取る
春だ
Y a l´île Saint-Louis qui rentre en Seine
Et puis Paris qui s´y promène
C´est l´printemps
サンルイ島はセーヌ河に戻る
そしてパリはそこを散歩する
春だ
Y a l´été qui s´pointe dans la rue 注15
Et des ballots qui n´ont pas vu 注16
C´était l´printemps
夏が街にやって来る
そして馬鹿たちには分かっちゃいなかった
春だったんだと
[注] レオ・フェレの歌詞は厄介で正確に訳しようがないと居直っての訳で申し訳ないが、信頼できる情報が得られれば訂正していきたい。
1 se faire du mouron「気をもむ、心配する」。mouronは、サクラソウ科の「ルリハコベ」あるいは俗に「髪の毛」のこと。
2 se prendre pour「…と理解される」「自分を…と思う、…気取りである」。Monet、Gauguin、Manetという画家の名は、彼らの絵画ということだろう。
3 avoir de quoiは通常「(十分な)金がある」の意味。
4 On dirait「…のようだ」。la barbe à papa「綿菓子」。
5 Mistral 「ミストラル」ウィキペディアには、「ミストラルは、フランス南東部に吹く地方風。アルプス山脈からローヌ河谷やデュランス川流域を吹いて加速度を増し、カマルグ周辺の地中海に吹き降ろす、寒冷で乾燥した北風である。ラングドック北東部平野からプロヴァンス、トゥーロン東部の間に影響を及ぼす風もミストラルであるが、強い西風と感じられる。通常冬から春にかけて吹くが、全ての季節に発生する。」とある。l´vent du nord 「北風」がMistralとともに時を過ごすというのは、この2種のミストラルを言うのであろう。
(6 chez DiorはChristian Dior「クリスチャン・ディオール」のブティック。
7 se payer「自分に…を奮発する」。Soleil d´Or「金色の太陽」の意味で、バラの品種として知られる。
8 se faire la malle「荷造りをする、出発準備をする」
9 litは「川床」などの意味もあるが、意外性のある「寝台、ベッド」をあえて選んだ。
10se faire les dents「(ネズミなどが)歯を研ぐ」。人の場合は「(困難に)慣れる、鍛えられる」
11 par conséquent「したがって、だから」
12 La chapelle Sixtineバチカンの「システィナ礼拝堂」。ミケランジェロの壁画「最後の審判」をはじめとして数々の装飾絵画作品がある。
13 小文字なので、地名ではない。ローヌ県北部、ボジョレー地方の山のふもとで生産されるワイン。ramener sa fraise(ou sa gueule)「偉がる、出しゃばって口を出す」を単にla ramenerともいう。
14 Mimiは、漫画の「ムトネ一家La Famille Moutonet」に登場する10歳位の女の子ではないかと思われる。普通名詞のmimiは、幼児語で「猫、にゃんこ」で、恋人や子どもへの呼びかけにも用いられる。
15 se pointer「着く、やって来る」
16 ballot「包み」のことだが、「ばか、うすのろ」をも意味する。
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