
今回は、1945年のアメリカ映画「ステート・フェアState Fair」(監督:ヘンリー・キングHenry King) の主題曲「春の如くIt Might As Well Be Spring」のフランス語版「春なのにC'est le printemps」(作詞:ジャン・サブロンJean sablon)を取り上げます。1948年の第1回ディスク大賞Charles Crosを受賞しました。(レオ・フェレLéo Ferréの歌う同名の曲は別物です。こちらは次回取り上げましょう。)
人々が青春を謳歌し恋に燃え、浮かれ楽しむ春、そうしたことと縁遠い人(花粉症の私を含めて)にとっては嫌な季節でしかありません。前回ご紹介した、ジュリエット・グレコJuliette Grécoの「日曜日はきらいJe hais les dimanches」をちょっと思い出させる歌詞です。
ジーン・クレインJeanne Crainが原曲のIt Might As Well Be Springを歌っている映画のシーン。
ジャクリーヌ・フランソワJacqueline François。古い貴重な録音です。
ステイシー・ケントStacey Kentが新しい感覚で歌っています。彼女の歌い方は個人的にとても好きです。
ジャズ歌手のブロッサム・ディアリーBlossom Dearieもフランス語版をピアノの弾き語りで歌っています。もう1曲入っているので長い動画です。
C'est le printemps 春なのに
Jacqueline François ジャクリーヌ・フランソワ
{Refrain:}
Agitée comme un roseau dans la tourmente
Tout m'énerve et tout m'irrite en ce moment
Le monde me désenchante
Par ce beau jour de printemps 注1
Fatiguée, désabusée et sans courage
Impatiente je ne sais plus ce qui m'attends
Je sens arriver l'orage
Par ce beau jour de printemps
嵐のなかの葦のように心ざわめいて
いまはすべてが私をいらいらさせじりじりさせ
世界が私を幻滅される
この春の晴れた日に
私はくたびれて、しらけ、元気をなくし
辛抱できず 私を待っているものが何なのかもう分からない
ひと雨来そうな気がする
この春の晴れた日に

Les choses que j’aimais je ne les aime plus 注2
Je veux un tas de choses que jamais vous n’avez eues
Je ne comprends pourquoi
J’ai perdu mon entrain
Je prétends être très brillante
Et je ne sais plus rien
私が愛してきたものを私はもう愛していない
あなた方がけっして持ったことのないものを私はいっぱい望んでいる
私にはなぜだか分からない
私は元気をなくし
とっても調子がいいふりをする
そうしかできないのよ
{Refrain}
Je voudrais me sentir loin d'ici
Fuir la vie de chaque jour
Et peut-être en m'évadant ainsi
Y trouverais-je l'amour
Les bourgeons des marronniers
De mon enfance,
L'aubépine la jacinthe et les lilas blancs
En vain me chantent leur romance
Douterais-tu du printemps ?
Tout est si joyeux
Pourtant je suis malheureuse
D'où me vient tout ce tourment
O mon ami c'est le printemps
ここから遠いところにいると感じたい
毎日の生活から逃れたい
そしてたぶんこんな風に逃避して
そこに私は見出すかしら、愛を
私の子どもの頃のマロニエの芽を、
サンザシ、ヒヤシンスや白いリラは
私にそれぞれの恋歌を歌うけれどそれは虚しいこと
あなたは春を疑うことなんてあるの?
すべてがとっても楽しいもの
でも私は不幸
この悩みがぜんぶ私にやって来た出どころ
おお友よ それは春なのよ

[注] 歌詞サイトにある歌詞はすべてステイシー・ケント版のようだ。ジャクリーヌ・フランソワの歌の第2節(文字色を変えた部分)は私が聞きとって加えた。間違いがあるかも知れないことをお断りしておく。また第3節7行目のla jacintheとl'aubépineは彼女の歌に合わせて順を入れ替えた。ステイシー・ケントは、その第2節は歌っていない。第3節のあと、スキャットと演奏を入れ、再び第3節をジャズ的なアレンジで歌っている。
1 par(天候・時間に用いられる場合は)「…の中を、…の時に、…のおりに」
2 この行と次行は聴き直して修正した。
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