
リュシエンヌ・ボワイエLucienne Boyerの「聞かせてよ愛の言葉をParlez-moi d'amour」(1930年、作詞・作曲ジャン・ルノワールJean Lenoir)は、シャンソンを歌いたい女性ならかならずトライすべきだと誰かに言われたことがあります。「べき」と言われてかえって歌う気にならなかった私ですが、この古い録音を聴いていると、この耳元でささやきかけるような甘い歌を歌ってみたい気持ちが自然に湧いてきて、気がついたらいつの間にかくちずさんでいます。
3年前に出した動画ですが、私が作ったなかでこれは視聴回数がなぜかダントツです。
リュシエンヌ・ボワイエは1903年にパリのモンパルナスに生まれ、歌手を志す前は、藤田嗣治やキース・ヴァン・ドンゲンKees Van Dongenらの絵のモデルをしていました。その後、キャバレーで歌い始め、現実派シャンソンのイヴォンヌ・ジョルジュYvonne Georgeをお手本にしていましたが、1929年に、ジャン・ルノワールJean Renoir宅で歌のレッスンを受けていた際にこの曲を耳にし、非常に気に入って、ルノワールに歌いたいと申し出ました。パリのキャバーで歌って観客から絶賛され、翌30年にレコーディングし、同年制定されたレコード大賞Grand Prix Du Disqueの受賞第1号となりました。
でも、彼女は、この曲ばかりリクエストされるのに嫌気がさして、3年後に「他のことを言ってParle-moi d’autre chose」(作詞・作曲ジャン・ドレット)というタンゴの曲を出しました。
その後、リュシエンヌは、39年にシンガー・ソングライターのジャック・ピルズJacques Pillsと結婚し、1941に生まれた娘ジャクリーヌ・ボワイエJacqueline Boyerも歌手となりました。1983年にパリで80歳で逝去。
Parlez-moi d'amour 聞かせてよ愛の言葉を
Lucienne Boyer リュシエンヌ・ボワイエ
{Refrain:}
Parlez-moi d' amour
Redites-moi des choses tendres
Votre beau discours
Mon cœur n' est pas las de l' entendre
Pourvu que toujours
Vous répétiez ces mots suprêmes
Je vous aime
愛の言葉をささやいて
もう一度言って 優しいことを
あなたの素敵なお話を
わたしの心は聞き飽きはしない
いつもいつも
このとってもすてきなこの言葉をくり返して
「きみを愛している」と

Vous savez bien
Que dans le fond je n' en crois rien
Mais cependant je veux encore
Écouter ce mot que j' adore
Votre voix aux sons caressants
Qui le murmure en frémissant
Me berce de sa belle histoire
Et malgré moi je veux y croire
あなたはよくご存じのはず
わたしが心の底ではそれを信じていないこと
だけど もう一度
大好きなこの言葉を聞きたい
愛撫するような響きのあなたの声は
その言葉を 震えながらささやいて
美しいお話でわたしの心を揺さぶり
わたしは心ならずもそれを信じたくなる

{Refrain}
Il est si doux
Mon cher trésor, d' être un peu fou
La vie est parfois trop amère
Si l' on ne croit pas aux chimères
Le chagrin est vite apaisé
Et se console d' un baiser
Du cœur on guérit la blessure
Par un serment qui le rassure
とても心地よいものよ
いとしい人、ちょっと浮かれるのもね
人生は ときには辛すぎる
もし わたしたちが妄想のたぐいを信じたりしないなら
悲しみは すぐにおさまり
ひとつの口づけで慰められる
安心をあたえる誓いの言葉で
心の傷は癒される

Comment:0
コメント