2015
03.28

ア・ペーヌÀ peine

Barbara À peine


バルバラBarbaraの歌うÀ peineという曲がとても好きで、取り上げたいと以前から思っていました。1970年、作詞はバルバラ自身、作曲はロラン・ロマネッリRoland Romanelli。À peineとは「ほとんど…ない」とか「やっと…したばかり、…するやいなや」などと、文脈のなかで働く言葉で、歌詞のなかではさまざまな意味合いで用いられています。ですから、単独では日本語に置き換えにくい言葉。(前回の)「朝の食事」ならぬ「朝の情事」という邦題もあるようですが、どうもいただけません。私は「かろうじて」と付けてみたこともありますが、歌詞内容に合わないので、やめて原題の仮名書きで「ア・ペーヌ」といたします。

YouTubeには1974年のコンサート時の動画があり、ロッキングチェアに座って歌っている貴重な映像ですが、歌唱の質としては私の持っているCDに比して残念な気がしてならず、自分であらたに動画を作成しました。



À peine            ア・ペーヌ
Barbara            バルバラ


À peine le jour s’est levé, 注1
À peine la nuit va s’achever
Que déjà, ta main s’est glissée,
Légère, légère. 注2
À peine sorti du sommeil,
À peine, à peine tu t’éveilles
Que déjà, tu cherches ma main
Que déjà, tu frôles mes reins.

  陽が昇り始めるやいなや、
  夜が明け染めるやいなや
  もう、あなたの手が滑り込んできた、
  すばやく、すばやく。
  眠りから醒めるやいなや、
  あなたが目覚めるやいなや、すぐに
  もう、あなたはわたしの手を探す
  もう、あなたはわたしの腰に触れる。

L’aube blafarde, par la fenêtre,
L’aube blafarde, va disparaitre.
C’est beau : regarde par la fenêtre.
C’est beau : regarde le jour paraitre.

  青白い曙光、窓からの、
  青白い曙光が、消えようとしている。
  美しいわ、窓から見て。
  美しいわよ、陽が昇るのを見て。

A peine1


À chaque jour recommencé,
À se vouloir, à se gagner, 注3
À se perdre, à se déchirer,
À se battre, à se crucifier.
Passent les vents et les marées.
Mille fois perdus, déchirés,
Mille fois perdus, retrouvés,
Nous restons là, émerveillés.

  また始まる日ごとに、
  たがいに、求め、とらえ、
  疎んじ、苦しめ、
  争い、痛めつけ合う。
  風がそして潮の満ち引きが通り過ぎる。
  何度となく関係が壊れ、引き裂かれ、
  何度となく疎遠になり、和解したのち、
  わたしたちはここにとどまっている、魅せられて。

Ton indocile, ta difficile
Et puis docile, ta si fragile,
Je suis la vague où tu te noies,
Et je m'enroule au creux de toi.

  あなたの素直じゃない女、難しい女、
  そしてまた従順な、とても弱い女、
  わたしは波であなたはその波に溺れる、
  そしてわたしはあなたに抱かれて丸くなっている。

À peine le temps s’est posé,
Printemps, hiver, automne, été.
Tu t’en souviens? C’était hier,
Printemps, automne, été, hiver.
À peine tu m’avais entrevue,
Déjà, tu m’avais reconnue.
À peine tu m’avais souri
Que déjà, je t’avais choisi.

  ある季節に入るやいなやその季節は過ぎて巡っていく、
  春、冬、秋、夏と。
  あなたは覚えている?それはついこの前のことよ、
  春、秋、夏、冬。
  わたしをちらっと見るやいなや、
  もう、あなたはわたしだと分かったわね。
  あなたがわたしに微笑むやいなや
  もう、わたしはあなたを選んだ。

Mon indocile, mon difficile
Et puis docile, mon si fragile,
Tu es la vague où je me noie,
Tu es ma force, tu es ma loi.

  素直じゃない人、厄介な人、
  そしてまた素直な、とても弱い人、
  あなたは波でわたしはその波に溺れる、
  あなたは抗しがたい力、あなたはわたしの掟。

A peine5


Dans la chambre, s’est glissée l’ombre.
Je t’aperçois dans la pénombre.
Tu me regardes, tu me guettes.
Tu n’écoutais pas, je m’arrête. 注4
Au loin, une porte qui claque.
Il pleut, j’aime le bruit des flaques.
Ailleurs, le monde vit, ailleurs
Et nous, nous vivons là, mon cœur 注5
Et je m’enroule au creux de toi
Et tu t’enroules au creux de moi.

  部屋に、人影が忍び込んできた
  わたしはあなたを薄明りのなかに認める。
  あなたはわたしを見つめ、わたしの様子をうかがう。
  あなたは聞こうとしなかったから、わたしは口をつぐむ。
  遠くで、扉がバタンと音を立てる。
  外は雨、わたしは水たまりの音が好き。
  余所では、人々が生活している、余所では
  そしてわたしたちは、わたしたちはここで生きている、愛する人
  そしてわたしはあなたに抱かれて丸くなっている
  そしてあなたもわたしに抱かれて丸くなっている。

Le temps passe vite à s’aimer.
À peine l’avons-nous vu passer
Que déjà, la nuit s’est glissée,
Légère, légère.
Ta bouche à mon cou, tu me mords.
Il fait nuit noire au dehors.
Ta bouche à mon cou, je m’endors.
Dans le sommeil, je t’aime encore.

  愛し合っていると時は速く過ぎて行く
  わたしたちが時の過ぎるのを知るやいなや
  もう、夜が滑り込んでくる、
  すばやく、すばやく。
  わたしの首にあなたの唇が触れ、あなたはわたしを噛む。
  外は闇夜。
  わたしの首にあなたの唇が触れ、わたしは眠りにつく。
  眠りつつ、わたしはまたあなたを愛する。

À peine je suis endormie
Que déjà, tu t’endors aussi.
Ton corps, à mon corps, s’est fait lourd.
Bonsoir, bonne nuit, mon amour...

  わたしが寝入るやいなや、
  もう、あなたもまた眠りにつく。
  あなたの身体は、わたしの身体に、重くもたれかかった。
  おやすみなさい、愛する人…

A peine3


[注]
1 à peine…que「…するやいなや(…した)」。le jour s’est levéとla nuit va s’acheverは同じ意味のことを言い換えている。題名はà peineのみの訳語はつけづらいので読みの仮名書きにした。
2 légèreはmainを修飾する場合は、「敏捷な」「巧妙な」というニュアンスがある。ここでは、文脈から前者を選んだ。
3 代名動詞が続く。一応すべて相互的な意味と解釈して、「互いに」と「合う」ではさんでまとめた。perdus以下の形容詞の複数形もその延長で解釈される。
4 文脈から判断して意訳した。
5 mon cœur「心」「心臓」ではなく、「愛するひと」という呼びかけ。



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