
「シャンゼリゼ通りLes Champs-Élysées」の原曲は、1968年にイギリスで発表されたロックで、ジェイソン・クレストJason Crestというサイケデリック・バンドの「ウォータールー通りWaterloo Road」。1969年に、ピエール・ドラノエPierre Delanoëが、ウォータールー通りをシャンゼリゼ通りに移し替えてフランス語に翻案した歌詞を作り、当時ロンドンに滞在していたジョー・ダッサンJoe Dassin がシャンソンにアレンジして歌い始めました。ジョー・ダッサンは「インデアン・サマーL'été indien」を先にご紹介しています。
1971年にはダニエル・ヴィダルDaniele Vidalもレパートリーに加えました。彼女の曲は、「パリ、ジュテームParis, je t'aime d'amour」を先にご紹介しています。
この曲は、歌詞にaux Champs-Élysées(シャンゼリゼには)という語句があることから、Aux Champs-Élyséesという題名でも呼ばれます。一般的な邦題の「オー・シャンゼリゼ」はその題名を仮名書きにしたもので、「オー」は感嘆詞じゃない。そしてまた、「オ・シャンゼリゼ」と読むのが正しいということですが、確かに普通の文章ならその理屈は通るでしょう。でも、歌を聴くと、ルフランの最初で2回繰り返すところは「オー・シャンゼリゼ」と伸ばして歌っていて、これはひょっとしたら、もともと、語呂合わせjeu de motsで、感嘆詞的な要素を暗に含んでいるんじゃないかとも思います。歌ではよくあることです。ま、私としては珍しく、邦題に「みかた」した「みかた」をしたわけですが、でも最終的には、もともとの題名を直訳して「シャンゼリゼ通り」といたします。
まずはもとの「ウォータールー通り」を聴いてみましょう。
ジョー・ダッサン。
日本では、こちらのダニエル・ヴィダルの歌のほうが知られていますね。
Les Champs-Élysées シャンゼリゼ通り
Joe Dassin ジョー・ダッサン
Je m'baladais sur l'avenue le cœur ouvert à l'inconnu
J'avais envie de dire bonjour à n'importe qui 注1
N'importe qui et ce fut toi, je t'ai dit n'importe quoi
Il suffisait de te parler, pour t'apprivoiser 注2
見知らぬものに心惹かれ 通りをぶらぶら歩いてた
誰でもいいから「こんにちは」って言ってみたかった
誰でもよかったけどたまたまそれがあなたで、あなたに何か言った
声をかけるだけで十分だった、あなたをなびかせるには

Aux Champs-Élysées, aux Champs-Élysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Élysées
シャンゼリゼには、シャンゼリゼには
晴れていても、雨降りでも、真昼でも、真夜中でも
望むものが何でもある シャンゼリゼには
Tu m'as dit "J'ai rendez-vous dans un sous-sol avec des fous 注3
Qui vivent la guitare à la main, du soir au matin"
Alors je t'ai accompagné, on a chanté, on a dansé
Et l'on n'a même pas pensé a s'embrasser
あなたは言った「地下で陽気な仲間たちと待ち合わせてる
日暮れから夜明けまでギター片手に生きてる仲間たち」と
そこで あなたについてって 歌ったり、踊ったりした
キスするなんて思いもしなかった

Aux Champs-Élysées, aux Champs-Élysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Élysées
シャンゼリゼには、シャンゼリゼには
晴れていても、雨降りでも、真昼でも、真夜中でも
望むものが何でもある シャンゼリゼには
Hier soir deux inconnus et ce matin sur l'avenue
Deux amoureux tout etourdis par la longue nuit
Et de l'Étoile à la Concorde, un orchestre à mille cordes
Tous les oiseaux du point du jour chantent l'amour 注4
昨晩は他人同士 そして今朝は通りにいて
長い夜のせいで頭がぼぅっとしている恋人同士
エトワールからコンコルドまで、千の弦楽器のオーケストラになって
夜明けを告げる鳥たちが 愛の歌を歌う
Aux Champs-Élysées, aux Champs-Élysées
Au soleil, sous la pluie, à midi ou à minuit
Il y a tout ce que vous voulez aux Champs-Élysées
シャンゼリゼには、シャンゼリゼには
晴れていても、雨降りでも、真昼でも、真夜中でも
望むものが何でもある シャンゼリゼには

[注] どうも女の子の歌詞にしたほうが自然だが、ジョー・ダッサンを想定しつつ、あまり偏らない訳語にした。
1 n'importe quiは人で「誰でも」、n'importe quoiは物で「何でも」。ともに、主語にも目的語にもなる。
2 apprivoiser 原義は「(動物を)飼いならす、手なずける」。先に取り上げた「僕になついちゃった猫Un chat que j'ai apprivoisé」参照。
3 fouは「気ちがい」とは限らない。「常軌を逸した人」ばかりか「陽気な人、浮かれ騒ぐ人」くらいの意味もある。女性形はfolleだが、複数の場合、なかに男が1人でもいると、fousとなる。
4 point du jour「夜明け」
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