2014
09.01

言いたいことはこんなにある(天使の遺言)J'ai tellement de choses à dire

Michel Polnareff Jai tellement


今回はミッシェル・ポルナレフMichel Polnareffの「言いたいことはこんなにある(天使の遺言)J'ai tellement de choses à dire」(1978年)です。どうやら、天国への道の途中から引き返すことにした男の話のようです。

ちなみに、ポルナレフが1972年に作った「天国への道On ira tous au paradis」(1972年)では、神の僕(しもべ)たちも強盗たちもみんな天国へ行くんだ、と歌っています。彼はその翌年の73年にフランスとの訣別を宣言しアメリカへ移住。その時、財務担当者の横領により脱税容疑がかけられ、帰国すれば即時逮捕という事態になったためノイローゼ気味になり自律神経失調症を患います。

帰るに帰れない状態が続き、77年の「フランスへの手紙(哀しみのエトランゼ)Lettre à France」で、祖国フランスへの熱い想いを歌います。78年に、税金問題の裁判で、責任がポルナレフにはないとの判決が下され、ポルナレフは5年ぶりの帰国をしました。

今回の曲はその年に作られました。アメリカに行く時に、天国に行く曲を、そして、フランスに戻る時に、天国への道の途中から引き返す曲を作り歌ったわけです。歌詞の一語一語が当時の彼の状況や心境を物語っているようです。だから邦題の「遺言」というのはどうも変ですね。
6枚目のアルバム「美しきロマンの復活Coucou me revoilou」に収録されていますが、このアルバムのタイトルとなった曲名は「おい、帰って来たぞ」といった意味で、懐かしいバーに戻って来たという内容の歌詞です。



J'ai tellement de choses à dire   言いたいことはこんなにある(天使の遺言)
Michel Polnareff            ミッシェル・ポルナレフ


J´avais pour tout bagage,  注1
Des mots et des images,
J´ai eu peur, Dieu me garde,
Qu´on garde mon âme à la douane. 注2

  荷物としては、
  いくつかの言葉といくつかのイメージだけだった、
  怖かったんだ、神よ僕を守りたまえ、
  税関で僕の魂を守ってもらいたい。

Jai tellement2


J´ai tout connu je pense,
L´absence et le silence,
Ce soir on se rencontre,
Je n´ai plus votre heure à ma montre, 注3
Je ne serai jamais le magicien d´Oz,  注4
Et j´ai vu la mort en rose, 注5
Oui mais...

  僕はよく知っていたつもりさ、
  欠落と静寂、
  今夜僕たちは出会う、
  僕の時計にはもう君たちの時間は刻まれない、
  僕はもうオズの魔法使いではなくなる、
  そして僕は死を楽観視していた、
  ああだが…

J´ai tellement de choses à dire,
Que je n´ai pas voulu mourir,
Tellement de souvenirs,
On m´a dit de ne rien dire,
Je suis venu désobeir.

  言いたいことはこんなにある、
  死ぬことをいかに望まなかったか、
  思い出はこんなにある、
  何も言うなとひとは言ったが、
  僕は従わないことにする。

La première chose à dire,
C´est que je n´ai personne à maudire,
Tant d´autres miroirs m´attirent,
Je reviens de l´avenir,
Et le passé je le déchire.

  最初に言いたいことは、
  僕は誰も恨んじゃいないということだ、
  ほかの多くの鏡が僕を引きつけ、
  僕は未来から戻り、
  そして過去は破棄する。

J´avais pour tout bagage
Des mots et des images,
Pour moi chaque visage
Etait un nouveau paysage,
Je serai donc toujours étranger partout,
Ou serai-je chez moi un jour mais où?

  荷物としては、
  いくつかの言葉といくつかのイメージだけ、
  僕にとってひとりひとりの顔が、
  あらたな景色だった、
  それなら僕はあちこちで常によそ者なのか、
  あるいはいつか家に落ち着くのか、だがそれはどこ?

Jai tellement1


Mais je reviens de l´avenir,
J´ai tellement de choses à dire,
Tellement de souvenirs,
Et j´ai oublié le pire,
Mais j´ai le meilleur à vous dire.

  だが僕は未来から戻って来る、
  言いたいことはこんなにある、
  想い出もこんなに、
  そして僕は最悪のことは忘れた、
  だがあなたに言いたい最良のものを持っている

Tellement de choses à dire,
Je n´ai pas voulu mourir,
Tellement de choses à vivre,
Je n´ai pas fermé le livre,
Ma vie est une histoire à suivre..

  言いたいことはこんなに、
  死ぬことは望まなかった、
  生きて経験したいことはこんなに、
  僕は本を閉じなかった、
  僕の人生は続きのある物語だ…

Michel Polnareff


[注]
1 avoir pour tout bagage qc.「荷物としては…だけ持っている」
2 死者がくぐる天国の門のことをdouane「税関」と表現しているのは、上記の解説に書いた「脱税容疑」の件をあえて想起させているようだ。
3 会った相手は神で、自分にはもう神が与える現世の時間は残されていない、という意味であろう。
4 le magicien d´Oz「オズの魔法使い」は、1939年に公開されたアメリカ合衆国のファンタジー・ミュージカル映画「オズの魔法使The Wizard of Oz」に登場する魔法使いで、実は、カーテンの陰で怪しげな機械を操作するペテン師。IT業界では、彼のように裏で人為的に操作して、あたかもシステムが動作しているように見せる手法やツールを、「オズの魔法使い」と呼ぶようだ。ポルナレフは、人騒がせでペテン師めいたところがあると自認しているのか?
5 voir la vie en rose「人生をバラ色に見る、楽観する」のla vieをla mortに言い換えている。



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