2015
02.28

おやじMon vieux

Daniel Guichard


以前、シルヴィ・ヴァルタンSylvie Vartanが自分の父親に捧げた「父Mon père」を取り上げました。今回は、同様に父親のことを歌った曲をご紹介しましょう。「おやじMon vieux」です。心に響く歌詞内容で、日本の演歌にも似たのがあったような気が…。
この曲は、ミッシェル・サンリスMichelle Senlisが1962年に自分の父親に捧げて最初の歌詞を書き、ジャン・フェラJean Ferratが翌63 年に作曲し、同年、ジャック・ボワイエJacques Boyerとジャン=ルイ・スタンJean-Louis Stainが歌いました。そして、1974年にダニエル・ギシャールDaniel Guichardが、15歳の時に亡くなった父親に捧げるということで歌詞を一部改編して歌い始めました。
ギシャールは、1948年にパリで生まれ、69年から歌手としての活動を開始し、72年にオランピアの初ステージに立ち、63歳の現在も現役です。持ち歌のうちではこの曲が一番知られていますが、エディット・ピアフÉdith Piaf、モーリス・シュヴァリエ、Maurice Chevalier、シャルル・トレネCharles Trenetらの曲をそれぞれカヴァーしたアルバムも出しています。



この曲は最近、2009年から活動を開始した「レ・プレトル(聖職者たち)Les prêtre」という三人組が歌い、ふたたび注目されるようになりました。
この三人組は本当の聖職者で、マダガスカルの子どもたちに学用品を送る資金集めのために結成され、2010年にファースト・アルバム「神の御心はSpiritus Dei」を出し、80万枚を売り上げ、2011年に出したセカンド・アルバム「グロリアGloria」にこの曲が収録されています。



Mon vieux            おやじ
Daniel Guichard         ダニエル・ギシャール


Dans son vieux pardessus râpé,
Il s'en allait l'hiver, l'été,
Dans le petit matin frileux,
Mon vieux...

  古い擦り切れた外套で、
  彼は冬も、夏も通した、
  寒い朝にも、
  僕のおやじ…

Y'avait qu'un dimanche par semaine,
Les autres jours, c'était la graine
Qu'il allait gagner comme on peut,
Mon vieux...

  1週間のうち日曜日は1度だけだった、
  ほかの日は、できるだけ彼が得ようとする
  飯のタネだった
  僕のおやじ…

L'été, on allait voir la mer.
Tu vois, c'était pas la misère,
C'était pas non plus le paradis.
Eh oui, tant pis...

  夏に、僕たちは海を見に行った。
  まあね、それはみじめなことじゃなかった、
  また楽園でもなかった。
  ああそうさ、仕方ないことさ…

Mon vieux1


Dans son vieux pardessus râpé,
Il a pris, pendant des années,
Le même autobus de banlieue,
Mon vieux...

  古い擦り切れた外套を着て、
  何年ものあいだ、
  同じ郊外のバスに乗っていた、
  僕のおやじ…

Le soir, en rentrant du boulot,
Il s'asseyait sans dire un mot,
Il était du genre silencieux,
Mon veux...

  夕方、仕事から帰ってきて、
  一言も言わずに座っていた、
  無口なタチだった、
  僕のおやじ…

Les dimanches étaient monotones,
On ne recevaient jamais personne.
Ça ne le rendait pas malheureux,
Je crois, mon vieux...

  日曜日は単調だった、
  誰もうちに呼ぶことはなかった。
  そのことが彼を不幸にはしなかった、
  僕はそう思う、僕のおやじは…

Mon vieux2


Dans son vieux pardessus râpé,
Les jours de paye, quand il rentrait,
On l'entendait gueuler un peu,
Mon vieux...

  古い擦り切れた外套を着て、
  給料日に、彼が帰宅するとき、
  僕たちは彼がちょっぴりがなるのを聞いたものだ
  僕のおやじ…

Nous, on connaissait la chanson,
Tout y passait: bourgeois, patron, 注1
La gauche, la droite, même le Bon Dieu.
Avec mon vieux...

  僕たちは、ある歌を知っている、
  みなやっつけられるんだ:金持ち、お偉方、
  左翼、右翼、神さまさえ。
  おやじに…

Chez nous, y'avait pas la télé,
C'est dehors que j'allais chercher,
Pendant quelques heures, l'évasion.
Je sais, c'est con...

  うちには、テレビがなかった、
  僕は外に求めに行った、
  何時間か、気晴らしを。
  そうさ、ばかげたことさ…

Dire que j'ai passé des années 注2
À coté de lui, sans le regarder.
On a à peine ouvert les yeux, 注3
Nous deux...

  彼のそばで僕が、彼に目もくれずに
  何年も過ごしたなんて。
  僕たちはほとんど目を開いちゃいなかった
  二人とも…

Mon vieux3


J'aurais pu, c'était pas malin, 注4
Faire avec lui, un bout de chemin 注5
Ça l'aurait peut-être redu heureux
Mon veux...

  僕はできたはずだ、造作もなかったさ、
  彼と、いっしょに少し歩くことなど
  そうすることでたぶん彼を幸せにしただろう
  僕のおやじ…

Mais quand on a juste quinze ans,
On n'a pas le cœur assez grand
Pour y loger toutes ces choses-là
Tu vois...

  だが15歳ばかりのときは、
  こうしたことすべてを包容するほどには
  大きな心を持っていなかった
  そうなのさ…

Maintenant qu'il est loin d'ici,
En pensant à tout ça, je me dis:
J'aimerai bien qu'il soit près de moi,
Papa...

  彼が遠いところにいる今、
  こうしたことをぜんぶ考えながら、僕は思う:
  彼がそばにいてくれたらと、
  パパ…

[注]
1 y passer「死ぬ」。次行のavecは「…のせいで」。
2 Dire que…「…というんだから」(驚き、憤慨を示す)
3 à peine「ほとんど…ない」
4 ce n’est pas malin「間が抜けている」あるいは「そんなこと造作もない」。ここでは後者の意味で半過去形。
5 un bout de+無冠詞名詞「短い(距離、時間)」



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