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2015
02.24

小雨降る径Il pleut sur la route

tino rossi


今回は、ご存知、ティノ・ロッシTino Rossiの「小雨降る径Il pleut sur la route」です。ロッシは、ひたすら愛を語るようなシャンソン、すなわち「感傷的なシャンソンChanson de sentimental」を歌う歌手の代表ですが、彼は、前回のジャン・サブロンJean Sablonと同様にマイクを使って耳元でささやくような歌い方をしました。彼以来、そうしたシャンソンの歌い手は、甘い声で人を魅了するということで「魅惑の歌手Chanteur de charme」とよばれるようになりました。おまけにちょっとハンサムだったものですから、「女を口説くには、ロッシのレコードが一枚あればいい」などといわれたほど、1930年代の多くの女性たちは彼の歌にしびれ、彼にのぼせ上がった妻を夫が射殺するという事件まであったそうです。

ロッシはコルシカ島生まれ。二十歳前に、好きなシャンソンで身を立てようと本土に渡りました。1935年に映画「マリネラ」に出演し、テーマ曲の「マリネラMarinella」と「チチTchi-tchi」が大ヒットし、その後人気が大上昇。戦後、ナチ協力者として投獄されたこともありましたが、その後カムバックし、75歳で引退するまで、その人気は衰えませんでした。生涯に1014曲録音し、レコードの総売り上げがなんと3億枚とのこと。

タンゴ調のメロディーのこの曲は、「マリネラ」の1年前に録音され、日本語では何人かの歌手に歌われてよく知られています。本国ではすでに忘れられているようですが…。この動画は、雑音は目立ちますが音質はいいです。





Il pleut sur la route        小雨降る径
Tino Rossi              ティノ・ロッシ


Il pleut sur la route...  注1
Le cœur en déroute 注2
Dans la nuit j'écoute 注3
Le bruit de tes pas...

  径に雨は降り…
  心は乱れ
  夜の闇のなか耳を澄ませる
  君の足音に…

Il pleut sur la route1


Mais rien ne résonne
Et mon corps frissonne
L'espoir s'envole déjà
Ne viendrais-tu pas ?

  だが何も聞こえず
  身体はうち震え
  望みはすでに消え去る
  君は来てくれないのか?

Dehors... le vent, la pluie...
Pourtant, si tu m'aimes
Tu viendras quand même
Cette nuit

  外では…風が、雨が…
  だが、もし君が僕を愛してるのなら
  それでも君は来るさ
  今宵

Il pleut sur la route
Dans la nuit j'écoute
A chaque bruit mon cœur bat
Ne viendras-tu pas ?

  径に雨は降り
  夜の闇のなか耳を澄ませる
  どんな物音にも胸が高鳴る
  君は来ないのか?

L'orage est partout 注4
Dans un ciel de boue
Mais l'amour se rit de tout
Il a dit ce soir 注5
Pour la recevoir
Chez moi tout chante l'espoir... 注6

  泥のように濁った空から
  雷雨があちこちに降りそそぐ
  だがわが愛は何も意に介さず
  今宵だと言った
  あの人を迎え入れるために
  わが胸の裡に希望の歌が鳴り響く…

Il pleut sur la route2


Dehors... le vent, la pluie...
Pourtant, si tu m'aimes
Tu viendras quand même
Cette nuit

  外では…風が、雨が…
  だが、もし君が僕を愛してるのなら
  それでも君は来るさ
  今宵

Il pleut sur la route
Dans la nuit j'écoute
A chaque bruit mon cœur bat
Ne viendras-tu pas ?

  径に雨は降り
  夜の闇のなか耳を澄ませる
  どんな物音にも胸が高鳴る
  君は来ないのか?

[注]
1 この行が曲名であり、「小雨降る径」という邦題は正確な訳語という訳ではない。
2 ここは名詞文。cœurのあとにestを補って解釈してもいい。
3 écouteは通常「聞く」と訳すが、次にMais rien ne résonneがあるように、「聞こえる」わけではなく、君の足音が聞こえないかと耳を澄ませるのである。「聞こえる」のはentendre。
4 orage「雷雨」は、雷の光も音も雨も含めた総体。
5 Ilは前行のl'amour、すなわち自分が彼女に向ける愛の心。
6 chez moi は家ではなく、自分自身のあり様、胸の裡。



コメント
私は昭和24年生まれで、よく母親の日本橋にあった実家に行ったときラジオからこのようなシャンソンが流れていました。ノスタルジーを感じます。
母は家でもよく「花まつり」などを鼻歌でハミングしていました。
まだ1歳くらいの時SP盤の手廻し蓄音機で遊んでいた自分の写真が残っており、70歳の今でもシャンソン、アルゼンチンタンゴは聞いております。
関口陽一dot 2019.12.31 15:54 | 編集
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