
シャルル・トレネCharles Trenetは1913 年南仏生まれ。3歳の頃すでに、幼稚園で自作のメロディーを口ずさんで、先生を驚かせました。15 歳で初めての詩集を発表。デヴュー当初はジョニー・ヘスJohnny Hessとヴォーカル・デュオを組んでいましたが、第2次世界大戦後はソロとして活動をしていくようになりました。「歌う道化師Fou Chantant」というあだ名で万人に愛された彼は、1930年代にシャンソン・フランセーズとスウィング・ジャズを融合させるという快挙をやってのけます。第2 次世界大戦中には、ナチス・ドイツとの関わりを疑われたこともあったそうですが、彼のエンターテイナーとしての人気は不動で、1975 年に引退表明をした後も度々その姿を舞台で披露していました。その晩年、トレネは、彼が83年に2度にわたり辞退をしたAcademie Francaiseの称号に代わるLegion d’Honneour, Gran Prix national des Arts et Lettres, Membre de L’Academie des Beaux-Artsなど数々の賞・称号を得、フランス 文化の中で揺るぎない地位を得ました。2001 年に脳卒中で逝去。享年 87 歳でした。
今回はトレネCharles Trenetの自作の曲「浜辺のピアノLe piano de la plage」です。1959年のEPに収録されています。
ピアノは実際に浜辺にあったのではなく、浜辺で子供時代、青春時代を過ごした人たちの心のなかで聞えていたピアノ。懐かしい音を旋律を奏でてくれる街なかのキャバレーやダンスホールにあるピアノが、かつては浜辺にあったピアノだという虚構のお話のようです…。
Le piano de la plage 浜辺のピアノ
Charles Trenet シャルル・トレネ
Le vieux piano de la plage ne joue qu'en fa, qu'en fatigué.
Le vieux piano de la plage possède un la qui n'est pas gai,
Un si cassé qui se désolent
Un mi fané qui le console,
Un do brûlé par le grand soleil du mois de juillet,
Mais quand il joue pour moi les airs anciens que je préfère,
Un frisson d'autrefois
M'emporte alors dans l'atmosphère
D'un grand bonheur dans une petite chambre.
Mon joli coeur du mois de septembre,
Je pense encore encore à toi,
Do mi si la.
浜辺の古いピアノはファの音しか、うんざりしながらしか出さない。
浜辺の古いピアノは持っている 楽しくないラの音を、
悲嘆に暮れるシの音を
それをなぐさめるくたびれたミの音を、
7月の灼熱の太陽に焼かれたドの音を、
でもそのピアノが僕の好きな古い曲を僕に弾いてくれるとき、
往時のおののきが
小さな部屋のなかで大きな喜びに浸る
気分に僕を導いてくれる。
9月の僕の楽しい気持ち、
僕はいまだにいまだに君のことを想う、
ド ミ シ ラ。

Le vieux piano de la plage ne joue qu'en sol, en solitude.
Le vieux piano de la plage a des clients dont l'habitude
Est de danser samedi, dimanche.
Les autres jours, seul sur les planches,
Devant la mer qui se souvient, il rêve sans fin...
C'est alors que je sors, tout courbatu,
De ma cachette
Et que soudain dehors, tremblant, ému,
Devant lui, je m'arrête
Et c'est inouï tout ce que je retrouve,
Comme cette musique jolie m'éprouve,
Me fait du mal, me fait du bien.
Je n'en sais trop rien.
浜辺の古いピアノは孤独なソの音しか出さない。
浜辺の古いピアノには
いつも土曜、日曜にダンスするお客がいる。
ほかの週日はひとり床の上で、
思い出のなかの海を前に、ピアノはとりとめもなく夢を見る…
その時だ 僕がよろよろと、
隠れ家から抜け出したのは
そしてとつぜん外に出て、震えつつ、感動して、
ピアノの前で僕は立ち止まった、
そして僕が見つけたものはまったくすごいものだ、
このすてきな音楽がどれほど僕を試し、
僕を打ちのめし、僕を元気づけたことか。
僕にはまるでわけが分からない。

Adieu, adieu, piano. Tu sais combien peuvent être cruelles
Ces notes que tu joues faux mais dans mon coeur ouvrant ses ailes
S'éveille alors la douce rengaine
De mon heureux sort ou de mes peines.
Lorsque tu tapes tapes toute la semaine mais le samedi,
Quand les jeunesses débarquent,
Tu sais alors, brigand de la plage,
Que ton souvenir les marque
Et qu'un beau soir, passé le bel âge,
Un autre que moi, devant la piste, s'arrêtera là et sera triste
En écoutant, le cœur battant,
L'air de ses vingt ans.
さよなら、さよならピアノ。君は分かっているかいどれほどひどいものか
君が下手に奏でる音が だが僕の心のなかに翼を広げつつ
僕の幸運のあるいは僕の苦しみの
優しい流行り歌が目覚める。
君は一週間のあいだずっとペタペタと音を出す だが土曜日には
若者たちが押しかけて来る、
君はその時分かる、浜辺の悪ガキだと、
君の記憶が彼らをマークする
そしてある夜、若い盛りを過ぎた、
僕以外の誰かが、ステージの前で、足をとめて悲しい気持ちになるだろう
彼の青春の調べを
胸をどきどきさせて、聴きながら。

Comment:2
コメント
コメントをいただき、本日6日にトレネのピアノをテーマとした曲をもう一つ追加いたしました。「ピアノのなかに探さないでNe cherchez pas dans les pianos」です。ご覧ください。今後ともよろしく。ノニー
朝倉ノニー
2016.06.06 08:23 | 編集

古くからのシャンソンファンとしてこのブログを見つけて大変嬉しく思いました。たまたまSNSに僕が以前にシャルルトレネの演奏会と終わって楽屋に行ってサインをもらったことを書いたのを、
たまたまフランス在住の日本女性が見つけてくださって、メッセージを頂きました。文面からみると、彼女のフランス人の旦那様の
お父様がトレネのピアノ伴奏をしておられたようで(30年ほど前の話で、現在も元気に活躍中とのこと)どのような方なのかを調べているうちにこのブログが目につきました。今後一読者として読ませて頂きたいと思いますのでよろしくお願いします。
最近は、LaraFabianも良くきいたりしています。
たまたまフランス在住の日本女性が見つけてくださって、メッセージを頂きました。文面からみると、彼女のフランス人の旦那様の
お父様がトレネのピアノ伴奏をしておられたようで(30年ほど前の話で、現在も元気に活躍中とのこと)どのような方なのかを調べているうちにこのブログが目につきました。今後一読者として読ませて頂きたいと思いますのでよろしくお願いします。
最近は、LaraFabianも良くきいたりしています。
johnnie kazuo sekiya
2016.06.03 12:17 | 編集
