
1978年にクロード・ヌガロClaude Nougaroが歌った「君は見るだろうTu verras」はとてもカッコいい曲。ブラジルのシコ・ブアルキChico Buarqueがブルーノ・バレットBruno Barretoの1976年の映画「未亡人ドナ・フロールの理想的再婚生活Dona Flor et ses deux maris」(原作:ホルヘ・アマドJorge Amado「フロル婦人と二人の夫」1966年)のために作成し歌ったO que seráという曲が原曲です。リンクさせてもらっているブログ「新春シャンソンショー」にお願いしてポルトガル語の原曲を訳していただきましたので参照ください。⇒「O que será どうなるの」
ヌガロよりさきに、ニコル・クロワジルNicole Croisilleが、Quand nous n'aurons que la tendresseというタイトルでフランス語で歌いました(仏語歌詞: ジャン=ピエール・ラングJean-Pierre Lang)。歌詞内容は原曲とは無関係で、メロディーもかなり異なり、同じ曲とは思えないほどです。⇒動画
ヌガロの歌は彼自身が仏語の歌詞を作りました。こちらも歌詞内容は原曲とは無関係ですが、原曲のメロディーがよく活かされています。
「君は見るだろう」という直訳の邦題にしましたが、原題のTu verrasは歌詞中でも擬音語のように繰り返され、その響きが身上なので、仮名書きの「チュヴェラ」を副題としましょう。
でも、Tu verras分かるだろうと言われてもJe ne vois guère私にはよく分かりません。相当苦労しましたが、正直言って歌詞はすっきりとは理解しにくいです。「君とめぐり合ったことで僕は変わった。これから君とともに生きる僕は自分の持てるものを思いっきり燃焼させる。いいことも悪いこともすべてやるだろう。そんな僕を見ていてくれ」…といったことなのでしょう。
Tu verras 君は見るだろう(チュヴェラ)
Claude Nougaro クロード・ヌガロ
Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
L´amour c´est fait pour ça, tu verras, tu verras
Je ferai plus le con, j´apprendrai ma leçon
Sur le bout de tes doigts, tu verras, tu verras 注1
Tu l´auras, ta maison avec des tuiles bleues
Des croisées d´hortensias, des palmiers plein les cieux
Des hivers crépitants, près du chat angora
Et je m´endormirai, tu verras, tu verras
Le devoir accompli, couché tout contre toi
Avec dans mes greniers, mes caves et mes toits
Tous les rêves du monde
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてがまた始まるだろう、君は見るだろう、見るだろう
愛はこのために作られた、君は見るだろう、見るだろう
僕はもうバカなことをしない、僕は学ぶだろう
君はとてもはっきりと、見るだろう、見るだろう
君は手に入れるだろう、君の家を、その家には青い瓦と
紫陽花のガラス窓と、空いっぱいの椰子の木があって
冬にはパチパチと火が燃える、アンゴラ猫のそばで
僕は眠るだろう、君は見るだろう、見るだろう
仕事を終え、君のすぐそばに横たわって
僕の屋根裏部屋、僕の地下室、僕の屋根の上でいっしょに
この世の夢すべてを

Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
La vie, c´est fait pour ça, tu verras, tu verras
Tu verras mon stylo emplumé de soleil 注2
Neiger sur le papier l´archange du réveil
Je me réveillerai, tu verras, tu verras
Tout rayé de soleil, ah, le joli forçat! 注3
Et j´irai réveiller le bonheur dans ses draps 注4
Je crèv´rai son sommeil, tu verras, tu verras
Je crèv´rai le sommier, tu verras, tu verras
En t´inventant l´amour dans le cœur de mes bras 注5
Jusqu´au matin du monde
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてがまた始まるよ、君は見るだろう、見るだろう
人生は、そのために作られた、君は見るだろう、見るだろう
君は見るだろう、太陽に羽を生やされたぼくのペンが
紙の上に降り立つのを、目覚めの大天使のように
ぼくは目を覚ますだろう、君は見るだろう、見るだろう
太陽に縞模様を付けられた、ああ、美しい囚人!
ぼくはシーツの中の幸福を起こしに行く
僕はその眠りを破る、君は見るだろう、見るだろう
僕はベッドのマットレスをぶち破る、君は見るだろう、見るだろう
ぼくは君のために両腕のなかで愛を創り出す
世界の夜明けまで

Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
Le diable est fait pour ça, tu verras, tu verras
Je ferai le voyou, tu verras, tu verras
Je boirai comme un trou et qui vivra mourra 注6
Tu me ramasseras dans tes yeux de rosée
Et je t´insulterai dans du verre brisé 注7
Je serai fou furieux, tu verras, tu verras
Contre toi, contre tous, et surtout contre moi
La porte de mon cœur grondera, sautera
Car la poudre et la foudre, c´est fait pour que les rats 注8
Envahissent le monde
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてがまた始まるよ、君は見るだろう、見るだろう
悪魔はそのために作られた、君は見るだろう、見るだろう
ぼくは不良のようにふるまう、君は見るだろう、見るだろう
底なしに飲むだろう 死ぬほどに
君はそのバラ色の瞳のなかに僕を捕えるだろう
そして僕は壊れたメガネのなかで君をあざけるだろう
僕は怒り狂うだろう、君は見るだろう、見るだろう
君に対して、みんなに対して、何より自分に対して
ぼくの心の扉ははちきれ、吹っ飛ぶだろう
なぜなら火薬と稲妻、それは小さなネズミたちが
世界を侵略するために作られたものだから

Ah, tu verras, tu verras
Tout recommencera, tu verras, tu verras
Mozart est fait pour ça, tu verras, entendras
Tu verras notre enfant étoilé de sueur 注9
S´endormir gentiment à l´ombre de ses sœurs
Et revenir vers nous scintillant de vigueur
Tu verras mon ami dans les os de mes bras 注10
Craquer du fin bonheur de se sentir aidé 注11
Tu me verras, chérie, allumer des clartés
Et tu verras tous ceux qu´on croyait décédés
Reprendre souffle et vie dans la chair de ma voix
Jusqu´à la fin des mondes 注12
ああ、君は見るだろう、見るだろう
すべてが再び始まるだろう、君は見るだろう、見るだろう
モーツアルトはそのために作られた 君は見るだろう、聞くだろう
君は見るだろう 汗で光る僕たちの子供が
姉妹たちの陰で穏やかに眠るのを
それから生気に輝いて僕たちの方に戻ってくるのを
君は見るだろう 僕の友だちが ぼくの腕に支えられ
助けられたと感じた特別の幸福のなかでくずおれるのを
君は見るだろう、いとしい人、僕が灯をともすのを
君は見るだろう、僕たちが死んだと思っていた人たちがみな
ぼくの肉声で息といのちを取り戻すのを
この世が終わるまで
Ah, tu verras, tu verras
ああ、君は見るだろう、見るだろう
[注]
1 connaitre(ou savoir) sur le bout de doigts「…を熟知している」から派生した表現。tu verras sur le bout de tes doigts「君ははっきりと見るだろう」。
2 mon stylo emplumé de soleil「太陽によって羽を生やされた僕のペン」を次行のl´archange du réveil「目覚めの大天使」に言い換えている。neigerは「雪が降る」が本義だが、広くは「天から降って来ること」であり、(sur le papier「紙の上」に)ペンが書き始めることを「大天使が降臨する」と表現している。
3 rayé de soleil:太陽の光がブラインド越しに入って来たのだろう、体のうえの縞模様の影をforçat「徒刑囚、囚人」の服と表現しているようだ。(jalousie「ブラインド」という語は用いられてはいないが、この語は、jalousie「嫉妬心」から女性を他人の目から遮る、ということから生まれたという。)
4 ses draps=draps du bonheurその幸福(すなわち君)がかぶっているシーツ
5 cœurは「心」ではなく「中心」。
6 boire comme un trou「底なしに呑む、大酒呑みである」。qui vivra mourraは、Qui vivra verra.「時がたてば分かることだ」をもじって、「分かる」かわりに「死ぬ」と、呑み方のひどさを表現しているようだ。
7 du(=de le)は部分冠詞で類別を示す。
8 rat「ネズミ」は「小さな者、弱者」のことだろう。
9 病気で発熱して汗をかいているのだと思われる。
10 dans les os de mes brasは4行あとの dans la chair de ma voixと合わせた表現で、dans mes bras だけでも同じ意味。
11 craquerは、(助けられて安心して力尽きて)倒れるといった状況だろう。
12 mondeは、意図的に複数形を用いて表現を強めている。
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コメント
教えていただいたJil Caplanの歌はYoutubeにないようですね。musicMeで聴けました。すてきですね。また何か情報をお知らせください。
朝倉ノニー
2015.02.09 22:41 | 編集

いつもお勉強させて頂いています。私は本曲、Jil Caplanで知りました。その後ネグロ氏に辿り着き、彼の唄う本曲もとても好きです。Jil Caplanの唄う本曲をyoutube から引っ張ってこようと思ったのですが、残念ながら日本では無理のようです。彼女の唄うTu Verras ...本当に素敵です。これからもノニーさんのブログの更新、楽しみにしています。
sabine
2015.02.09 19:15 | 編集
