前回のボリス・ヴィアンBoris Vianの「僕はスノッブだJ'suis snob」と同様に、歌詞に「男性版」と「女性版」がある曲をもう一つご紹介しましょう。「ジュ・トゥ・ヴーJe te veux」です。アンリ・パコーリHenry Pacoryが人気シャンソン歌手ポーレット・ダルティPaulette Dartyのために書いた歌詞に、音楽界の異端児とよばれるエリック・サティErik Alfred Leslie Satieが曲をつけました。ポーレットは「スローなワルツの女王La Reine des Valses lentes」と呼ばれ「魅惑のワルツFacination」などの歌唱で知られます。1897年に作成され、SASEMに登録されたのは1902年だとされています。
女性が男性に「あなたが欲しい、私の言いなりになって」と言う、思いのほか過激な歌。のちに「僕を支配してくれ」という男性版の歌詞も、また、内容を発展させたピアノ独奏版も作られました。
1925年にイヴォンヌ・ジョルジュYvonne Georgeが収録しました。古い音源なので聴きづらいですが、→こちらで聴けます。
たいへん音域が広い曲なので、ジェシー・ノーマンJessye Normanやマテ・アルテリーMathé Altéryなどのソプラノ歌手が歌っています。フランスのシャンソン歌手としてはジュリエットJulietteくらいですが、ここでご紹介できる音源がありません。iTuneで曲を買うことは可能です。
変わったところでは、
ベルギーのデュオ・チーム、バイア・コン・ディオスVaya Con Diosが、かなり歌いやすい形にして歌っています。
日本の非常に風変わりなデュオ・チーム、ALI PROJECT(蟻プロジェクト)がフランス語と日本語でちょっとロリータ風に歌っています(宝野アリカ:ボーカル・作詞、片倉三起也:作曲・編曲)。発音がちょっと違うところがありますが…。
Je te veux(version femme) ジュ・トゥ・ヴー(あなたが欲しい:女性版)
{Refrain :}
J'ai compris ta détresse
Cher amoureux
Et je cède à tes vœux 注1
Fais de moi ta maîtresse 注2
Loin de nous la sagesse 注3
Plus de tristesse
J'aspire à l'instant précieux
Où nous serons heureux
Je te veux
あなたの苦しい気持ちは分かったわ
愛しいひと
だからあなたの望みを受け入れる
わたしの言いなりになって
良識はそっちのけにし
悲しみも忘れて
二人がしあわせに過ごす
貴重な時間を持ちたいわ
あなたが欲しい

Je n'ai pas de regrets
Et je n'ai qu'une envie
Près de toi là tout près
Vivre toute ma vie
Que mon corps soit le tien
e ta lèvre la mienne
Que ton cœur soit le mien
Et que toute ma chair soit tienne
わたしは悔やまないわ
望みはただ一つ
あなたのそばで すぐそばで
一生 生きること
わたしの身体があなたの身体に
そしてあなたの唇が私の唇になるといい
あなたの心がわたしの心に
わたしの肉体のすべてがあなたの肉体となるといい
{Refrain}
Oui je vois dans tes yeux
La divine promesse
Que ton cœur amoureux
Vient chercher ma caresse
Enlacés pour toujours
Brûlant des mêmes flammes
Dans un rêve d'amour
Nous échangerons nos deux âmes
ええ あなたの眼のなかに読みとれるわ
あなたの恋する心が
わたしの愛撫を求めに来るという
崇高な約束が
永遠に抱きしめ合い
同じ炎に身を焦がしながら
愛の夢のなかで
ふたつの魂を交換しましょう

{Refrain}
[注]
1 vœuは「誓い」「願い、要望」の両義があり、ここでは後者。cèder à …「…に譲歩する、屈する」。
2 直訳すると「私をあなたの女主人にして」だが、être (le) maître(sse) de …およびse rendre maître(sse) de…「…を支配する、思いどおりにできる」などの意味に合わせた訳がふさわしい。
3 Que la sagesse soit loin de nous.「良識は私たちから遠いところにあればいい」の意味。
Je te veux(version homme) ジュ・トゥ・ヴー(君が欲しい:男性版)
{Refrain :}
Ange d’or, fruit d’ivresse
Charme des yeux
Donne-toi, je te veux
Tu seras ma maîtresse
Pour calmer ma détresse
Viens, ô déesse
J’aspire à l’instant précieux
Où nous serons heureux
Je te veux

黄金の天使よ、陶酔の果実よ
ひとみの魅力よ
君をくれ、君が欲しい
僕を支配してくれ
俺の苦しみを鎮めるために
おいで、おお 女神よ
二人がしあわせに過ごす
貴重な時間を持ちたい
君が欲しい
Tes cheveux merveilleux
Te font une auréole
Dont le blond gracieux
Est celui d’une idole
Que mon cœur soit le tien
Et ta lèvre la mienne
Que ton corps soit le mien
Et que toute ma chair soit tienne
君のすばらしい髪は
君を後光で飾る
その優美なブロンドは
偶像の色だ
僕の身体が君の身体に
そして君の唇が僕の唇になるといい
君の心が僕の心に
僕の肉体のすべてが君の肉体となるといい
{Refrain}
Oui, je vois, dans tes yeux
La divine promesse
Que ton cœur amoureux
Vient chercher ma caresse
Enlacés pour toujours
Brûlés des mêmes flammes
Dans des rêves d’amour
Nous échangerons nos deux âmes
そうさ、君の眼のなかに読みとれるよ
君の恋する心が
僕の愛撫を求めに来るという
崇高な約束が
永遠に抱きしめ合い
同じ炎に身を焦がしながら
愛の夢のなかで
ふたつの魂を交換しよう
{Refrain}
女性が男性に「あなたが欲しい、私の言いなりになって」と言う、思いのほか過激な歌。のちに「僕を支配してくれ」という男性版の歌詞も、また、内容を発展させたピアノ独奏版も作られました。
1925年にイヴォンヌ・ジョルジュYvonne Georgeが収録しました。古い音源なので聴きづらいですが、→こちらで聴けます。
たいへん音域が広い曲なので、ジェシー・ノーマンJessye Normanやマテ・アルテリーMathé Altéryなどのソプラノ歌手が歌っています。フランスのシャンソン歌手としてはジュリエットJulietteくらいですが、ここでご紹介できる音源がありません。iTuneで曲を買うことは可能です。
変わったところでは、
ベルギーのデュオ・チーム、バイア・コン・ディオスVaya Con Diosが、かなり歌いやすい形にして歌っています。
日本の非常に風変わりなデュオ・チーム、ALI PROJECT(蟻プロジェクト)がフランス語と日本語でちょっとロリータ風に歌っています(宝野アリカ:ボーカル・作詞、片倉三起也:作曲・編曲)。発音がちょっと違うところがありますが…。
Je te veux(version femme) ジュ・トゥ・ヴー(あなたが欲しい:女性版)
{Refrain :}
J'ai compris ta détresse
Cher amoureux
Et je cède à tes vœux 注1
Fais de moi ta maîtresse 注2
Loin de nous la sagesse 注3
Plus de tristesse
J'aspire à l'instant précieux
Où nous serons heureux
Je te veux
あなたの苦しい気持ちは分かったわ
愛しいひと
だからあなたの望みを受け入れる
わたしの言いなりになって
良識はそっちのけにし
悲しみも忘れて
二人がしあわせに過ごす
貴重な時間を持ちたいわ
あなたが欲しい

Je n'ai pas de regrets
Et je n'ai qu'une envie
Près de toi là tout près
Vivre toute ma vie
Que mon corps soit le tien
e ta lèvre la mienne
Que ton cœur soit le mien
Et que toute ma chair soit tienne
わたしは悔やまないわ
望みはただ一つ
あなたのそばで すぐそばで
一生 生きること
わたしの身体があなたの身体に
そしてあなたの唇が私の唇になるといい
あなたの心がわたしの心に
わたしの肉体のすべてがあなたの肉体となるといい
{Refrain}
Oui je vois dans tes yeux
La divine promesse
Que ton cœur amoureux
Vient chercher ma caresse
Enlacés pour toujours
Brûlant des mêmes flammes
Dans un rêve d'amour
Nous échangerons nos deux âmes
ええ あなたの眼のなかに読みとれるわ
あなたの恋する心が
わたしの愛撫を求めに来るという
崇高な約束が
永遠に抱きしめ合い
同じ炎に身を焦がしながら
愛の夢のなかで
ふたつの魂を交換しましょう

{Refrain}
[注]
1 vœuは「誓い」「願い、要望」の両義があり、ここでは後者。cèder à …「…に譲歩する、屈する」。
2 直訳すると「私をあなたの女主人にして」だが、être (le) maître(sse) de …およびse rendre maître(sse) de…「…を支配する、思いどおりにできる」などの意味に合わせた訳がふさわしい。
3 Que la sagesse soit loin de nous.「良識は私たちから遠いところにあればいい」の意味。
Je te veux(version homme) ジュ・トゥ・ヴー(君が欲しい:男性版)
{Refrain :}
Ange d’or, fruit d’ivresse
Charme des yeux
Donne-toi, je te veux
Tu seras ma maîtresse
Pour calmer ma détresse
Viens, ô déesse
J’aspire à l’instant précieux
Où nous serons heureux
Je te veux

黄金の天使よ、陶酔の果実よ
ひとみの魅力よ
君をくれ、君が欲しい
僕を支配してくれ
俺の苦しみを鎮めるために
おいで、おお 女神よ
二人がしあわせに過ごす
貴重な時間を持ちたい
君が欲しい
Tes cheveux merveilleux
Te font une auréole
Dont le blond gracieux
Est celui d’une idole
Que mon cœur soit le tien
Et ta lèvre la mienne
Que ton corps soit le mien
Et que toute ma chair soit tienne
君のすばらしい髪は
君を後光で飾る
その優美なブロンドは
偶像の色だ
僕の身体が君の身体に
そして君の唇が僕の唇になるといい
君の心が僕の心に
僕の肉体のすべてが君の肉体となるといい
{Refrain}
Oui, je vois, dans tes yeux
La divine promesse
Que ton cœur amoureux
Vient chercher ma caresse
Enlacés pour toujours
Brûlés des mêmes flammes
Dans des rêves d’amour
Nous échangerons nos deux âmes
そうさ、君の眼のなかに読みとれるよ
君の恋する心が
僕の愛撫を求めに来るという
崇高な約束が
永遠に抱きしめ合い
同じ炎に身を焦がしながら
愛の夢のなかで
ふたつの魂を交換しよう
{Refrain}
Comment:1
コメント
時々、サイトにお邪魔して、勉強させてもらっています。フランス語がご堪能で、その上、よく字引を引いて、いろんなイデイオム紹介いただくので、参考になります。ありがとうございます。でもたまには意見が異なることがあります。前から気になっていたのですが送信できませんでした
一番の fait de moi ta maitresse、maitresse には主人、先生 の他に情婦、いろおんなの意味があります。いかに男女平等意識の高いフランスとはいえ、19世紀から20世紀の変わり目の文化爛熟期、女性が男にあんたを支配したい、いいなりになってと要求することには抵抗があります。ここは貴方のおんな(情婦)にしての方が自然のように、私には、思えます。だんせい版も同じです。
一番の fait de moi ta maitresse、maitresse には主人、先生 の他に情婦、いろおんなの意味があります。いかに男女平等意識の高いフランスとはいえ、19世紀から20世紀の変わり目の文化爛熟期、女性が男にあんたを支配したい、いいなりになってと要求することには抵抗があります。ここは貴方のおんな(情婦)にしての方が自然のように、私には、思えます。だんせい版も同じです。
菅野省三
2023.03.29 17:40 | 編集
